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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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あなたと会える、八月に。

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 「そなたの側仕えからは止められたのだがな」
 リュミエールの方を見てジュリアスは、二人の驚愕に構わず、手に持っていた巻紙−−楽譜を出してみせた。
 「たぶん……ピアノの譜面だと思うのだが」
 「……はあ」あまりの唐突さに返って落ち着いたのか、リュミエールは素直に覗き込んで頷いた。「そのようですが……」
 「これを手っ取り早く一ヶ月で弾けるようになるには、どのようにすれば良い?」
 「一ヶ月……ですか?」
 「一ヶ月……だと?」
 先にぴん、と来たのはゼフェルだった。
 「そういえば今日……あんたの」
 微かにジュリアスは、片方の口角を上げてみせる。
 「……今度『八月に会える』ときまでの宿題らしい」
 ゼフェルが何か言おうとした瞬間、横でリュミエールが小さく叫んだ。
 「泳ぎだけでなく……ピアノも、ですか?」
 「そうなのだ、リュミエール。あの『子ども』には、ほとほと手を焼く」
 「……どういうことだ?」
 そう言ってゼフェルがジュリアスとリュミエールを交互に見る。
 「あの……?」
 リュミエールもまた、ジュリアスとゼフェルを見る。
 そして、二人は一斉にジュリアスを見た。
 「……そなたたちには……本当に感謝している……」
 苦笑しながら、ジュリアスが言った。