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Wizard//Magica Infinity −5−

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「私は…それから一人で生きてきた。この村を愛していたから…一人で戦ってきた。私の願いの代価は面影村の景色が変わらないのと同じ…私自身の時間が止まってしまった。今も昔も、そしてこれからも私は今のまま。私は自分の魔法を使って周りの人達の記憶を操ってこうして生きてきた。あの商店のおばさんが私が知っていたのは昔、同じ生徒だったのよ」

「コヨ…ミ…」

「私が魔法少女だと気付いたのはお母さんに初めて魔法をつかった時。それから私の魔力を察知した魔女や使い魔達が押し寄せるようになった。それからよ、こうして夜に外に出て戦い続けているの」

「何故だ…」

正気を取り戻した俺は居ても立ってもいられずコヨミの肩を掴んだ。
その時初めて気付いた…コヨミの体温って、こんなにも冷たかったんだ。
おかしい…さっきはあんなに暖かかったのに、あの温もりは…。
いや違う…俺だ。
俺の手が…冷たいんだ。

これは…一体。


「どうしてそこまでして!!この村を守り続けているんだ!!お前を阻害した村だぞ!?なのに何故」
「あなたに出会ってしまったから」
「…え…」
「ハルトに…ハルトに出会ってしまったからよ…思い出して…あの時、私達は出会っていたのよ?」

フラッシュバックのように蘇るあの嵐があった森の中の出来事。
死線を漂っていた俺の目の前に現れた希望の光…小さなその手。

「あっう…」
「ハルト…思い出して」

次第に俺の過去が鮮明になっていく…。
あの時、俺は確かに手を掴んだ。
そこからだ。
俺は…コヨミと出会ったんだ。

「違う…」

正確には…その時に世界が止まったんだ。
俺の中に流れる時間。


そっか…わかったよコヨミ。


やっと理解できた。


「お前が…コヨミが、俺に手を差し伸べてくれたのか…」
「うん」
「ボロボロの俺に手を差し伸べた小さな手、それが」
「私なの…あなたをほっとけなかった」

完全に理解する。
次第に鮮明になる俺の過去。
以前の俺の記憶上では、嵐の中の森の中で倒れたあと、気がついた時には公園の土管の中で目を覚ました…だが、本来は違った。

俺は、その時に森の中で死んでいた。

その時、コヨミに助けられた。

そして俺は今も夢を見続けている。

俺が本来送る筈だった…未来を。

「コヨミ教えてくれ…何故俺に夢を見せようと思ったんだ、俺はとっくの昔に死んで…」
「その答えを受け入れるのはまだ早いわ、ハルト」
「えっ…」


コヨミは俺に背中を見せて歩いていく。
俺は追いかけようとした…けど、
足が動かなかった。


「ハルト…決断の時よ」


俺は黙って聞いているしかなかった。
そして少しずつ…俺は自覚する。

世界は動こうとする。

夢が…終わる時を。


「今度、探検部の皆でタイムカプセルを埋める時、私はあなたに聞くわ。この世界でこれからも夢を見続けるか…それとも、この世界を出て、本当の現実を受け入れるか」



「コヨミ…」


「時間は限られている…この世界も限界が来ているわ」



この世界でこれからも夢を見続ける。

この世界を出て本当の現実を受け入れる。



俺は…どっちを選べば良い?



「………。」



俺は頭を抱えて地面に座った。
そして一体幾度の時間が過ぎただろうか。

再び頭を上げたときには、綺麗な朝日が登っていた−−−。



作品名:Wizard//Magica Infinity −5− 作家名:a-o-w