瀬戸内小話4
他愛のない会話
大抵において、語らいの場は縁側である。
さすがに房事ばかりは部屋の内だが、この城の主は庭をひどく愛していたから、常に外が見える席で待っていた。
「別に不満はないけどな」
案内される先でいつも庭に向かって座る人を見て、鬼は笑う。
「……何のことだ?」
「普通、ニ国の王が話をしようっていうのに、この場はないんじゃねぇのか?」
庭にたどり着くまでには幾重の守りがあるとはいえ、忍を生業とするものならば容易に潜入してくることだろう。
さして、聞かれて困る会話をしているわけではない。ただ、警戒という一点において、外と続くこの場はどうかと思う。
そんな元親の問いかけに、元就は異なこと、と呟く。
「お前と我が、何の密談を必要とする?」
「そりゃ、通じ合ってるってことか?」
からりと笑って返してやれば、眉間に深い皺が寄る。
「貴様のことなど、何一つ理解できんわ」