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ロマずきんちゃん

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むかしむかしある森のそばに、イタリア=ロマーノとイタリア=ヴェネチアーノという、それはそれはかわいらしい2人の兄弟がすんでいました。ロマーノが兄で、ヴェネチアーノが弟です。
 ある日、ヴェネチアーノはロマーノに言いました。
「兄ちゃん、このおかしをスペイン兄ちゃんのところにもっていってくれない?」
 スペインとは、森の中のいっけんやに住んでいる、2人のさらにお兄ちゃんのような人でした。親分ぶるスペインに、ヴェネチアーノはなついていましたが、ロマーノはうるせえこのやろうあっち行け親分づらすんじゃねーよはげ!というたいどをとっていました。
 そこでロマーノは言いました。
「ああ?何でおれがもってかなきゃいけねーんだ。おまえがもってきゃいいだろバカ弟め」
 なかなかにひどい言いようですが、ロマーノの口のわるさのはいつものことなので、ヴェネチアーノはめげません。
「ヴェー…。だって、こないだおれがあそびに行ったとき、スペイン兄ちゃん言ってたんだよ。『さいきんロマーノに会っとらんなあ、さびしいなあ』って」
 ロマーノは言葉につまりました。さいきん、ヴェネチアーノの「いっしょにスペイン兄ちゃんのところにあそびに行こうよ!」というさそいや、スペインの「2人であそびにおいで」というしょうたいをことわりつづけているのは本当なのです。
 それというのも、このところ、ロマーノはスペインのことを考えると、むねがどきどきして、おちつかない気分になるからです。だからロマーノはなるべくスペインのことを考えないようにしています。それなのにスペインときたら、何も知らずに「イタちゃんかわええ!」だの「ロマーノトマトもってきたで!」だの、ロマーノの心をざわざわさせるばかりなのです。おれの気持ちも知らないでこんちくしょうと、ロマーノははらだたしくてなりません。スペインがロマーノの心を知れるはずもないのですが、それはそれ、ロマーノはつごうよく知らんぷりをしています。スペインに会うことがきらいなわけではありません。どきどきして苦しいのがきらいなのです。
 そこでロマーノは考えました。ヴェネチアーノのおつかいだから、自分から会いに行くのでなければ、もしかしたら何でもないような顔をして会えるのではないか?
 そして、ロマーノは言いました。
「しょうがないから行ってやるぞ」
 ヴェネチアーノはぱっと笑って「じゃあこれがおかし!あとせっかくだからこれかぶっていきなよ!」と言い、ロマーノにおかしの入ったバスケットと、赤いずきんをわたしました。弟のいきおいに少しおされたロマーノは、「お、おう」とバスケットをうけとり、言われた通りに赤ずきんをかぶってわが家を出発しました。「何でずきんをかぶらなきゃいけねえんだ?」とロマーノが思ったのは森の入り口まで歩いた時でした。かといって外すのもめんどうくさかったので、ロマーノはそのまま森の中へと歩いて行きました。

「ボンジュール赤ずきんのかわいいロマーノ」
「何だよちくしょー…」
 森に入ってしばらく歩くと、ロマーノは金のかみのオオカミに会いました。オオカミの名前はフランスといいます。ロマーノがスペインの家にいる時に会ったことがあるので、お互いに顔見知りなのです。フランスはスペインの友だちです。ただフランスは、ロマーノやヴェネチアーノを見るたびに「お前らかわいいよお前らおれのものになればいいのにハアハア」と息を切らしているので、ロマーノはフランスがこわくてしかたありません。今だって、本当はにげ出したくてたまりません。だけど、ここでにげたらスペインに会うことができません。ロマーノは顔を上げて、せいいっぱいフランスをにらみつけました。バスケットをぎゅっとにぎった両手が、ふるふるとふるえています。
 そんなロマーノの心を知ってか知らずか、フランスはいつものようにきがるに話しかけてきました。
「そのバスケットは何?あ、スペインのとこへおつかい?」
「お前に言う必要はねえんだぞ」
「あーはいはい。でもな、スペイン今体調くずしてるぞ」
「え?」
 ロマーノはびっくりして、思わず声をあげました。
「多分夏かぜだと思うんだけどな。ねつはあるわ声はがらがらだわで、けっこう大変っぽかった」
「…そうなのか…」
 ロマーノはうつむきました。スペインがかぜをひいているなんて知らなかったのです。れんらくもできないぐらいにひどいものなのだろうか。そんな時に自分が会いに行っていいのだろうかと、ロマーノはぐるぐる考えました。
「だからさ、みまいに行ってやれ」
 フランスの言葉に、ロマーノはそっと顔を上げました。
「…いいのか?」
「おう。お前が行ったらあいつよろこぶと思う。ちょうどあっちに花畑があるしな、花でもつんでったらいい」
「そ、そうか」
「じゃ、お兄さんは行くから。がんばれー」
 かみの毛と同じ金色のしっぽをひるがえして、フランスは去っていきました。別れのあいさつもしなかったし、お礼も言わなかったことに、ロマーノは気が付きました。
「思ったよりもいいやつなのかも」
 そうつぶやいて、ロマーノはいつもの道を外れ、教えられた方向に歩き始めました。はたして、ロマーノの目の前には一面の花畑が広がっていて、ロマーノはいっしょうけんめい花をつみ始めました。


「よし、こんなもんだろ」
 両手いっぱいにできた花束にロマーノは満足して、立ち上がりました。バスケットに花束を入れ、小走りでスペインの家に急ぎます。しばらく走って息が上がり始めたころ、開けたしかいにスペインの家が見えました。げんかんの前に立ち、ノックをしようとしたところで、別のむねのどきどきがロマーノをおそいました。
「バカ弟のおつかい、バカ弟のおつかい…」
 顔が熱いのは走ったせいです。ぶつぶつつぶやくと、少しはどきどきがましになった気がしました。息をすって、はいて、こんこんとドアをノックします。
「スペイーン、おれだぞ、入るからなー」
 がちゃっとドアを開け、ロマーノは家の中を見回しました。部屋のまんなかにあるベッドがこんもりともり上がっています。勝手知ったるスペインの家、ロマーノはてくてくとそこに近づきました。
「バカ弟のおかしだ。おつかいに来てやったぞ」
「…」
「あ、あと…フランスから聞いたぞ。…おれ、花持ってきたから、早くよくなれよなこのやろー」
「…あり、…おおきに」
 ロマーノは首をかしげました。スペインは毛布にもぐったまましゃべっています。音がくぐもっていることをのぞいても、何だか声がへんに聞こえるのです。ロマーノはたずねました。
「何でそんなにへんな声なんだ?」
「それはね、かぜをひいているから…やねん」
 やっぱり何かがおかしいです。ロマーノは続けて聞きました。
「何でそんなにハアハアしてるんだ?」
「それはね、お前に会えてうれしいからやねん」
「…何かお前、おかしいぞ」
「あ、ちょ待っ…」
 ロマーノはかけ布団をめくり上げました。
「!!」
「ばれちゃあしょうがない」
作品名:ロマずきんちゃん 作家名:あかり