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学園小話

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関係性 ……こへ滝(事後)で、綾部と滝


 はじめて話を聞いたとき、意外だと思った。

 この男が、先輩である男に振り回され文句を言いながらも慕っているのは明らかだった。
 だが、それが色恋沙汰に結びつくとはまったく思えない。彼らは体力バカであり、色香や恋愛などとは、じつに無縁の場所にいたのだから。きっとこの考察は、学園内の大半のものが同意してくれるに違いないだろう。

「意外だよ」
 はじめて話を聞いたとき、思った通りの言葉を素直に口にした。
 淡々と、しかし珍しく言いにくそうにしていた彼は、私の感想に少しだけ驚いて、そうか、と頷いた。
 ふたりの間で交わした話は、それだけだった。


 以来、彼は時折非常識な時間に部屋に戻ってくるようになった。今も部屋に戻ってきた彼は薄汚れていて、これから人気のない風呂に向うのだろう。
 もう消灯の時間は過ぎている。もちろんそんな時間は低学年の忍たまに守らせるべきルールで、校外授業も増え、なすべきことも増えた上級生にはあってないような規則だ。
 ただ、彼は校外に出かけていたわけじゃない。委員会活動という名の下、裏山かどこかへ出かけただけだ。
 もちろん、それは彼ら体育委員会ではごく自然の、しかしとても異質な行為だけど。

「意外だよ」
 荷を持ち立ち上がろうとする背に、声をかける。
「なにがだ」
 振り向かないまま、彼は応える。
「七松先輩とのことさ。そんなに薄汚れる価値があるのかい?」
 委員会活動とはいえない行為を重ねる、そのメリットがこの男にあると思えない。
 小首を傾げて問えば、乱れた髪のまま、彼は振り返る。

 きっと私は明日の朝ごはんの献立を知りたいといった程度の興味で、彼もまたそれを答えるような調子で肩を竦めた。

「七松先輩といると、なにも考えなくてすむ――」

作品名:学園小話 作家名:架白ぐら