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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

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第39章 異変、アクア島


 アンガラ大陸随一の大都市、トレビ。
 毎年恒例の格技大会コロッセオも終わり、町はすっかりと静まり返っていた。加えて今は真夜中過ぎである。町人どころか野良犬一匹たりともいない。
 町の北部には大きな宮殿がある。トレビの町の支配者、バビの住む宮殿である。ここもまた、戦士、使用人全てが寝静まっていた。
 宮殿の奥、謁見の間を左に曲がった先にある階段を下ると、そこには支配者バビの寝室があった。太古の秘薬、飲めば数百年の時を生きながらえることができるという『レムリアの薬』が底をつき始め、少しでも効果が薄れるのを遅くすべく、バビはこの寝室で一日のほとんどを過ごしていた。
 内から鍵のかかる寝室で、バビは静かに寝息を立てていた。一度に飲める薬の量も減った事によって、すっかりとやつれたような顔つきとなっている。若干老いが進み、死相まで浮かんでいた。
 突然、寝室の隅の空間に水泡が集まり始めた。それは徐々に人の形を成していく。
 現れたのは男であった。深緑の長髪を揺らしながら、自らの周囲に水を纏っている。この空間移動も、水も、どちらもエナジーによるものだった。
 男はエナジーの放出を止めると、口元にうっすらと笑みを浮かべ、そっとベッドの中のバビへと歩み寄っていった。そして腰の剣へと手を伸ばす。
「誰じゃ!」
 バビはかっ、と目を開いた。
「おやおや、起きてしまいましたか…」
 恐ろしい笑みを浮かべ、丁寧な口調で男は言う。
「誰じゃ、ここにはヨデムと限られた使用人しか入れぬはずじゃ」
「大丈夫ですよ、彼らならゆっくり眠っていますから…」
 男は姿勢を正し、バビへと礼をする。
「お初にお目にかかります、あなたの事はよく存じておりますよ、バビ様」
 男は恭しく言った。
「ワシを知っておるか、貴様は一体何者じゃ」
「名乗るほどではありませんよ…」
 男は小さく笑った。
「何が可笑しい?」
「失礼、では私がここへ来た目的をお話ししましょう…」
 男は腰の剣に手を伸ばし、柄に手を当てた。
「バビ様、あなたには死んでいただきます」
 バビは一瞬、この男の言っている事が分からなかった。
「ワシを殺す気か?」
「おや、そう聞こえませんでしたか?」
 男はバビへと近付いた。
「ふざけるな、ワシは下らぬ冗談は…ッ!」
 バビは剣に言葉を阻まれた。男の剣がバビの腹をベッドごと貫いのだ。
「あなたの下らない戯れ事にロビン達をいつまでも付き合わせているわけにはいかないのですよ。レムリアを探す、などと言うね…」
 がは、バビは口から血を流し、絶命した。
 男は剣を抜き、刃についた血を払った。
「バビ、二百年にも及ぶ長い人生、ご苦労様でしたね」
 男は剣を納めると、エナジーを発動した。男の周りを水が渦巻くように発生した。
――邪魔者は消えました…――
 水に包まれ、小さな笑い声を残し、男は姿を消した。
     ※※※
 ウェイアード大イースト海南東部に位置する島、ガラパス島。熱帯気候の常夏の島である。
 大して文明が進んでおらず、大きな町は無く、村もない。あるのはちょっとした集落ぐらいのもので、住んでいる人もわずかだった。
 家は丸太をそのまま使っており、屋根や扉は大きな木の葉でできている。
 また、この島の東には巨大な滝、ガイアフォールがある。これは世界の果てを示すもので、落ちた先に何があるのか誰一人として分からない。大昔に命知らずな者がガイアフォールの先を見てくると船を出した。少し近付いただけで滝の力に引かれ、そして真っ逆様に落ちていった。案の定その船は帰ってくる事はなく、二度と戻らなかった。
 島の人々はその様子を見て結論を出した、ガイアフォールの先は直接死後の世界であると。
 そのような事があり、島民はあまりガイアフォールに近付こうとはしない。しかし、同時に彼らはガイアフォールを通して自らの小ささを思い知らされている。ある意味ではガイアフォールは神に等しいものだと彼らは思うのだった。
 水しぶきが上がった。
「うっひゃー!」
 ガラパス島の浜辺でジェラルドが海に飛び込んだ。砂は真っ白で海は濁りのない青である。
「おーい、お前ら、早く来いよ!」
 ジェラルドは泳ぎながら浜辺の方に手を振った。
「待ってくださいよ!」
 イワンは急いで服を脱ぎ、同じ様にしぶきを上げて飛び込んだ。
「うわぁ、気持ちいいですね!」
 イワンは華麗な泳ぎを見せる。
「おーい、ロビン!来ねえのか?」
 ロビンは木陰で膝を抱えていた。
「…泳げないの知ってるくせに」
 ロビンは口を尖らせ呟いた。楽しそうな笑い声を聞きながら、金槌の自分がかなり恨めしかった。
 日差しはきつく、気温もかなり高い、こんな時は裸になって水浴びするのが一番である。しかし、ロビンにとっては水に対する恐怖心が先行してしまう。暑くてもこうして木陰で座っているしかなかった。
 ふと、ロビンは横を見た。
 隣の木陰ではリョウカが木にもたれ刀を抱き、目を閉じていた。微かながら寝息が聞こえる、どうやら眠っているらしい。
「しょうがない、オレも一眠りしようかな…」
 ロビンはリョウカに背を向けるように横向に寝そべった。すると少し離れた所で立っているメアリィが目に入った。
 何をするわけでもなく、ただ海を眺めていた。ロビンが起き上がりメアリィへ歩み寄ってもすぐに気が付かなかったようだった。
「メアリィ」
 メアリィははっ、となった。
「あらロビン、どうしました?」
 メアリィは微笑し言った。
「どうしたんだ、何かぼんやりしてたけど」
「いえ、別に大した事じゃありませんわ。ですが…」
「でも?」
 メアリィは手をかざし、エナジーを放った。手の中に水泡が発生し、弾けると水が音を立てて砂の上に落ちた。
「エナジーが妙に溢れそうなのです」
「エナジーが?」
 これまでにこれほどエナジーが攻撃的に増幅する事はなかった。メアリィの得意とする癒やしのエナジーが絶え間なく増幅した事ならマーキュリー灯台であった。しかし、今はまた違った感じである。灯台の力が純粋にエナジーを増幅するのだとしたら、今はメアリィの内に秘められた力が何らかの要因で呼び覚まされているといった状態である。
「お前さん、今どこから水を?」
 突然見知らぬ老人が声をかけてきた。老人はこの島の住民らしく、半袖シャツを身に着け、日焼けした褐色の肌をしていた。
「すまんが、もう一度やってはもらえんか?」
 老人が何者なのか訊ねる前に頼まれてしまい、仕方なくメアリィは言うとおりにした。
 エナジーを放つと手の中で水泡が発生し、弾けると同時に水が飛ぶ。
 老人は驚きと同時に何か待ち望んでいたものにようやく出会えたといった感動を覚えているようだった。
「そうか…ワシはようやく出会えたのか!」
「あの、申し訳ありませんが、お爺さん。どなたですか?」
 頃合を見てメアリィが訊ねた。
「おう!こりゃ失礼、ついつい名乗るのを忘れておった。ワシの名はヴァッサ、皆にはヴァサ爺と呼ばれとる」
 ヴァッサは名乗り、綺麗な歯を見せて笑った。
「お爺さん、ひょっとしてエナジストなのか?」
 ロビンが訊ねた。するとヴァッサは顔をしかめた。
「エナジスト、とは一体何じゃ?」