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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

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 メアリィがリョウカ達を止めた。そしてアレクスの前に歩み寄る。
「ふふ…、メアリィ、貴女だけは信じてくれると思ってましたよ」
「まだ信じてはいません。一族の掟を破ったあなたに気を許すつもりはありません」
 ですが、メアリィは続ける。
「あなたは益にならない事はしない。今私達が争った所でアレクスに益があるようには思えない…」
 アレクスは声に出して笑った。
「ずいぶんな言われようですが、私の事はよく知っていますね。メアリィ…!」
 アレクスは腰の剣に手を伸ばし、一気に抜きはなった。
「メアリィ!」
 メアリィを切り裂くかと思われたアレクスの剣は宙を舞い、砂浜の上に突き刺さった。剣を投げ捨てたのである。
「ですが、信じてもらえないとあってはこちらもすっきりしないというもの、これでどうか私に戦う気は無いことだけは信じてもらえませんか?」
 剣が使えなくとも、アレクスにはまだエナジーが使えた。しかし、メアリィはか細い声で告げた。
「リョウカ、ジェラルド、武器を下げてください…」
 リョウカ達は信じられないと驚き、目を見開いた。
「二人とも、言うとおりにしてやってくれ…」
 ロビンにも言われ、二人は仕方なく武器をしまった。
「ご理解いただき、ありがとうございます」
「用は何だ、アレクス」
 ロビンは言い放った。
「そうですね、ではまず皆さんにとって良い話からいたしましょう…」
 アレクスはもったいぶったように言う。
「ガルシアは生きています」
 ロビンはこれ以上ないほどに目を見開き、言葉を失った。ロビンだけではない、ジェラルドも驚きを隠せなかった。
 ガルシアはあの日、ヴィーナス灯台が灯った直後、異変によって生じた地震で地へ落ちていったシバを追って、自らも身を投げた。最早生きているはずもなかった。
「信じられないといった様子ですが、事実ですよ?更に言えば、恐らく皆さんが死んだと思っている人物は皆無事です」
 それはつまり、あの時のグループの内、サテュロス、メナーディを除いた全てが生きているという事である。
「アレクス、まさかシンも生きていると言うのか?」
 リョウカは訊ねた。
「ええ、彼もガルシアと共に旅していますよ。天界などではなくこのウェイアードでね」
 リョウカも驚きのあまり言葉を失った。
 更にアレクスの口からはジャスミン、スクレータ、さらにはシバの健在も語られた。彼の言うとおり、ロビン達が死んだと思っていた人物は皆無事に生きていた。
「アレクス、お前の言った事は本当だな?」
「私は嘘は言いませんよ。それにこんな嘘を言うために皆さんに会いに来るほど私は暇ではありませんので…」
 更にアレクスからガルシア達の動向について告げられた。
 インドラ大陸の町、マドラで捕らえられていたレムリア人、ピカードを追って、ゴンドワナ大陸の奥地に位置するキボンボ村へ行く。ピカードの乗っていたレムリアの船の動力源たる黒水晶を取り戻す手助けをし、無事奪還するとその船を拝借し、ジュピター灯台のある大ウェスト海へと旅立った、と。
「レムリアって、オレ達が探してるレムリアの事なのか?」
 ジェラルドはロビンに訊ねた。
「きっとそうだろう、バビさんに見つけるよう頼まれた島…」
「ああ、もうその必要はありませんよ」
 アレクスは言った。言っている意味がすぐに理解できずにいると、アレクスはその意味を告げた。
「バビは死にました」
 ロビン達に衝撃が走った。二百年もの年月を生きながらえてきたあのバビが死んだという。俄には信じがたい。
「薬が底をついたとでも言うのか?」
 ロビンは訊ねた。
「薬?ああ、彼が生前飲んでいたというレムリアの薬の事ですか。違いますよ、長生きの薬が切れ、彼は天寿を全うしたのではありません。何者かに殺害されたそうですよ、何でも腹を剣で一突きだったとか…」
 アレクスは答えた。
 アレクスの言葉には不審な点がある。あれほど有名な人物の死である、バビの死を知っていること自体はあちこちを飛び回ったというアレクスには何ら不思議ではない。不審な点は殺害された事実まで知っていた事である。
 バビの周辺の人物はバビの死をトレビの町の人々に告げたとしてもそれが殺害によるものだとは公にしないことだろう。もしそんな事を民衆に広めたら瞬く間に混乱を招くことになりかねない。故に、殺害の事実はバビの周辺の人物しか知り得ない。ましてやどのように殺害されたかなど殺した本人にしか分かるはずもない。
「まさか貴様、バビ殿を…」
 リョウカは睨んだ。アレクスは小さく笑い声を洩らす。
「…私は事を円滑に運びたいのです、そのためには手段は選びません。邪魔だったのですよ、彼が存在しているせいで皆さんはレムリアを探す戯れ事に付き合わされ、灯台への関心を持とうとしない」
「貴様…!」
 リョウカは刀の柄に手を掛けた。
「アレクス、自分の目的の為だけに人を殺めたのですか!?あなたは…、あなたという人は命を何だと思っているの!?」
 メアリィは目に涙を溜め、叫んだ。自身の目的のために人の命を奪うなど、決して許される事などではない。しかし、アレクスは悪びれる様子はなく、むしろ笑い声さえ上げている。
「ははは…!何を言うかと思えば。メアリィ、貴女達だって灯台を灯させないという愚かしい目的の為にサテュロス達を殺したではありませんか。笑わせないでほしいですね、しょせん同じ穴の狢、いえ、そちらの方が上でしょうかね」
「てめぇ、黙らせてやる!」
 ジェラルドは憤慨し、大剣を抜きはなった。
「おやおや、何やらすっかり喧嘩腰になっているようですが、先ほども言ったでしょう?戦いに来たのではないと…」
 アレクスは歩き出し、先ほど自分が投げ捨てた剣を拾い上げた。口ではあのように言いながら戦うつもりなのか、ロビン達が身構えるとアレクスはそれを鞘に納めた。
「私のお話は以上です。皆さんがこれから何をすべきか、もう分かっているはずです…」
 アレクスは念じると空中に浮かんだ。
「待て、アレクス!」
「ロビン、貴方の持つマーズスター、まだ預けておくことにいたしましょう。ジュピター灯台でそれを貰い受けるとします」
 アレクスは空中から視線をメアリィへと向けた。
「次は、ジュピター灯台でお会いしましょう?メアリィ」
 アレクスは水を纏い、周囲に霧を撒き散らし、姿を消した。
「アレクス、あなたは、どうして…」
 メアリィはその場に崩れた。かつての同族の仲間が罪を重ねていくのがメアリィには耐え難い事だったのだ。
「ロビン…」
 ジェラルドが呼びかけた。
 ガルシア達が生きている。旧友の健在、それはロビンにとってそれは喜ばしい事であった。しかし、それ以上にロビンへと再び使命が降りかかる。
「ガルシアを追うぞ、灯台を、灯させはしない!」
 今再びロビン達に使命が下された。錬金術の復活を阻止し、世界を救うという使命が。