二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

INDEX|12ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

第41章 炎と家族の絆


 すっかり夜も更け、真夜中を過ぎた漆黒の大ウェスト海に船が一隻浮かんでいる。ドラゴンの頭を模した船首が特徴的なレムリアの船である。
 レムリアからやって来たという青年、ピカード船であり、今や全ての操舵はガルシアに任されていた。
 ガルシア達がピカードを仲間に加え、マドラを発ってから約三週間の日が経っていた。船上での生活もだいぶ長くなり、当初はなかなか慣れなかったが、今ではすっかり慣れ、仲間達は皆自由に過ごしている。さすがに三週間ともなるとなかなか変化の無い船旅は退屈に感じるようになってきたが。
 ガルシアは甲板で縁を背に座り込んでいた。手にはキボンボの神、ガンボマより授かった魔導書がある。ガルシア以外の者には全くの白紙の本にしか見えないが、ガルシアにだけはそこに書かれている文字が見える。しかし、ガルシアにとってもその本の中身はほとんど空白であり、文字が書かれいるのはほんの数ページだけである。
 地獄の業火、ブレイズ。つい最近読めるようになった魂の一閃、デスチャージ。そして最終ページにある、地獄の番人、死神を従える悪魔の化身、サモンデュ………、という途中できれた所のみしかガルシアにも読めていない。
――新しく読めそうな所は無い、か…――
 本には最初から文字が綴られており、ガルシア自身が力を向上させることによって見えるようになるのか、それとも特別な力によって新しく綴られるのか。何れにしてもこの本の全てのページが読めるようになるには時間がかかることであろう。
 ガルシアはそっと本を閉じた。
「ん、まだ起きてたのかお前?」
 ふと声をかけられ、ガルシアは顔を上げた。艶めく黒髪を月明かりに照らしたシンがそこにいた。
「ああ、シンか。いや、そろそろ寝ようかと思ってた所だ」
 ガルシアは腰を上げた。
「そいつはネクロノミコンじゃないか。どっか新しく読める所はあったのか?」
「いや、ない…」
 シンはガルシアから魔導書を取り、ページをパラパラとめくった。
「相変わらず真っ白だなぁこの本!本当にお前にだけは読めてんのか?」
 ガルシア以外、もちろんシンにも魔導書の字を読むことはできない。ガルシア以外がこの本のページをいくらめくった所で空白のページが続くのみである。
「本当だ、現にお前が見ているページ、それは魂の一閃、『デスチャー…』!?」
 ガルシアが本に手を触れ、呪文を読み上げようとした瞬間シンによって口を塞がれた。
「だからこっち見て読むなっつってんだろ!」
 シンは大慌てで叫んだ。
 前にも一度ガルシアがこの本を手に入れたとき、彼が不用意に呪文を読み上げたせいで、地獄の炎であわや大火傷を負うところであった。しかも、今ガルシアが読み上げようとした呪文の効果は魂を切り裂くことで一瞬にして相手の息の根を止めるものである。また暴発でもしたら洒落にならなかった。
「何をする!?大丈夫だといっただろう、エナジーを本に向けない限りはな!」
 ガルシアはシンの手を振り払った。
「まあ、何でもいいけど迂闊にこっち見て読まないでくれよ」
 シンは口を尖らせた。
「ああ、そうだガルシア」
 ネクロノミコンを閉じ、しまい込んでいたガルシアに声をかけた。
「そろそろ倉庫の食糧なくなるぜ?」
 マドラを発ってすぐに、一度ガルシア達はデリィ村へ立ち寄った。彼らが最初に来たとき、村は津波による被害をかなり受けており、村人全員が困窮した生活を送っていた。しかし、再び立ち寄るとすっかり村は復旧しており、そこで食糧の調達をする事ができた。
 それからかなりの日数が過ぎた。倉庫には保って後一日分の食糧しかなく、そろそろ食糧の再調達が必要だった。
「そうか、それはまずいな…」
 ガルシアは言った。
 まだ大ウェスト海に突入してから間もない。まだまだ目的地であるジュピター灯台までは遠く、先は途方もなく長かった。一旦どこかに上陸して食糧を得る必要がある。
「しかし、どこか村でもある島でもあるのか」
「一応、こっからだとゴンドワナ大陸が近いな。キボンボ村ってのがあっただろう?その西側さ」
 シンは言った。彼は意外にも地理に強く、この船の上では航海士のような役割を担っていた。
「まあ、山が険しいし、川もあるからキボンボ村までは歩いて行けねえな。けど、あんだけ広い大陸なんだ、西側にも村はあるんじゃないか?」
「そうだな、それなら明日ゴンドワナ大陸に一旦上陸しよう」
 こうして、食糧調達のため、ガルシア達は翌日ゴンドワナ大陸へ向かう事にした。
     ※※※
 西ゴンドワナ大陸もかなり温暖な、いや、むしろ熱帯の場所だった。
 暦の上ではもうすでに秋も深まる頃だというのに、このあたりは全くそんな気配がない。むしむしと湿度が高く、照りつける太陽も容赦がない。
 ガルシア達は顔中を汗だくにして川沿いの草原を歩いていた。二リ村やキボンボ村と違って大陸西側は川の多い地域だった。しかし、川が多いとはいってもそのおかげで体感温度が下がるような事もなく、かなり濁っており、その水を浴びようという気にはなれなかった。おまけに川には魔物とも魚ともつかないような得体の知れない、しかし人を喰いそうな生き物が棲んでおり、危険極まりなかった。
 ガルシア達は黙々と歩いていた。あまりの暑さに皆喋る気になれなかったのだ。
「おい…」
 上陸してから久しぶりにガルシアが口を開いた。
「本当にこの辺りに村なんかあるんだろうな?シン」
 西ゴンドワナ大陸に上陸するよう促したのはシンであり、この辺りにも人里はあるだろうと睨んだのもシンである。言うなればもしこのまま村が見つからなかったら全ての責任は彼が負うことになる。
「まあまあ、慌てんなよ。もう少し行けば絶対あるって…」
「あんたさっきからそればっかりじゃない!あんたのもう少しってのは一体どれくらいなのよ!?」
 これまでもこのような調子だったので、ついにシバが怒鳴りつけた。
「まあまあ、そんなに怒ると余計に疲れるぜ?」
 シンは情けない笑みを浮かべながら宥めた。
「誰のせいで怒ってると思ってんのよ!」
 シンは苦笑するしかなかった。
「しかし困りましたね。このまま村が見つからなかったらこれから先食べ物がありませんよ…」
 ピカードは言った。彼の言うとおり、船に積んでいた食糧は今日の朝底を突いてしまった。このまま食糧の得られそうな村が見つからず、船に戻る事になったら別の場所を探して、しかも何日か飲まず食わずで海をさまよわなければならなくなる。
「ジュピター灯台まであと数週間はかかりますよ。その間食事抜きじゃみんな船上で飢え死にしてしまいます…」
「冗談じゃない!ワシャ腹ペコで死ぬのはまっぴらじゃ!それにレムリアを見るまでは死ねんわい!」
 スクレータは血相を変えた。
「ちょっとシン、あなたが言い出した事でしょ?何とかしてよ!」
 ジャスミンも加わってシンは全員に責められた。
「ああもう、うるせえな!人間ひと月飯を食わなくても死にゃあしねえよ!」
「あんただけでしょそんな事できるの!普通の人は死ぬわよ!」
 シバが食い下がった。