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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

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 ガルシアが剣を振り下ろすと同時に空間から巨大な剣状のエナジーが発生し、地に伏すシン達のすぐ上を通って魔物の鎧をオーラごと貫き粉々に打ち砕いた。
「ナイスだぜガルシア!」
 鉄仮面のような魔物の鎧が砕け、結界を作り出す元となるような丸い物体が額に露わになった。
 シンはすぐさま立ち上がると短剣をそれに突き刺した。物体は砕け散り、魔物の結界は消失した。
「よし、フォレア、トドメはお前が刺してやりな!」
 シンは魔物から退き、フォレアの横に立った。
「私が…!?」
 シンから差し出された手を受け取りながらフォレアは驚き、言った。
「ああ、そうさ。大丈夫、お前ならきっとできる!」
 シンは笑みを見せた。
「分かりました…」
「頼んだぜ、フォレア!」
 シンはフォレアの後ろに下がった。
 フォレアは両手を広げ、精神を集中させる。眼前にいるのは祖父を瀕死に追いやった仇である魔物である。
 やっとこの時が来た。ある日突如としてこのマグマロックに出現し、近隣の村に災いをもたらしていたこの魔物を倒す時が来たのだ。
――お祖父ちゃんをひどい目に遭わせたあいつを、私が…!――
 フォレアは意を決して詠唱した、その時だった。
『バース…』
 体から、心の奥底から感じた事のない力が溢れてきた。その瞬間フォレアの両手が激しく輝く。
 目を閉じ再び集中すると、その力が何なのか、どういったものなのかが瞬時に頭の中に流れ込んできた。
 フォレアは感じたままにそれを解き放った。
『エクサ・バースト!』
 それはこれまでの『バースト』を遥かにに超える大爆発であった。岩どころか、山一つすらも跡形もなく吹き飛ばすかのような威力を持っていた。
 空間を巨大な球体が覆い、魔物に向かってどんどん広がっていく。
「な、何て威力なんだ!」
 ガルシア達にも強風が吹き付けた。そんな中、シン一人だけ動じず、ただ笑みを浮かべていた。
「さすがだぜ、フォレア!」
 爆発の中心で、断末魔の叫びを残しながらアビス・サラマンダーは跡形もなく身を砕いていった。
 爆発が止み、物凄い爆風も止む頃、フォレアは地面に膝を付いてへたり込んでいた。
「大丈夫か、フォレア?」
 先に駆けつけたのはシンだった。後にガルシア達もやって来た。
「やりました…、けど、あんなに力を使ったのは初めてで、ちょっと疲れちゃった…」
「いいさ、少し休みな。土壇場であんなエナジーを使えるようになったんだ。本当にすごいぜお前は!」
 シンはしゃがみ込むとフォレアの肩に手を回し、ぽんぽんと軽く叩いた。
「ありがとう…、シンさん…」
 フォレアは疲労しながらも弱々しく笑みを見せた。
「ガルシアもあん時はありがとな。お前のサポートがなかったら奴は倒せなかったと思うぜ」
 シンは立ち上がり、ガルシアを向いた。
「ああ…」
 突然ガルシアは腰元に振動を感じた。何かが揺れている、その揺れを起こすものの正体は彼の持つ魔導書、ネクロノミコンであった。
 ガルシアがそれを手に取ると、途端に本がスルリとガルシアの手を離れ、空間に漂い始めた。そして淡く輝きを放つ。
 ガルシアの目の前で浮かび上がった魔導書はひとりでにパラパラとページがめくれていき、ある所でそれが止まった。
 そのページが開かれたまま、本はガルシアの手元に戻ってきた。そこは元々白紙のページであったが、文字が綴られている。
 地獄の大火、『アビス・ブレイズ』新たに読めるようになったページにはこう書かれていた。
「ガルシア、ひょっとして新しい黒魔術が?」
 ピカードが訊ねた。
「ああ、どうやらそのようだ」
 相変わらずガルシア以外の者には本の文字が読めないようだった。
 今回は一体どういった要因で新たなページが綴られたのか、前回新たに表れた時も魔物を倒した時だった。
 こうしたことからこの本に新たなページが加わるのは特別な魔物を倒した時であるようだった。それはまるで、魔導書が魔物の持っていた力を取り込み、黒魔術に変えて本自体が表に出すかのようである。
「今度は一体何て書いてあるの?」
 シバが言った。
「地獄の大火、『アビス・ブレイズ』だそうだ。雰囲気的には『ブレイズ』の強化版、といったところか」
「ふ〜ん」
 使ってみない事にはどんな魔術なのか分からないが、実際に発動するほどの力が今は残っていなかった。
――あれ?――
 ジャスミンはふと気が付いた。今までアビス・サラマンダーとの激しい戦いのあまりに目に付かなかったが、この部屋の奥、周囲をマグマに包まれた所に一つ、石板が立っていた。
 石板の形には見覚えがあった。確か、オセニア大陸の中央にある岩山。風のエレメンタルロックであるエアーズロックにて見たものとそっくりであった。上部に人の手が納まりそうな穴があり、その下には何やら文字が刻まれているのだ。
 火の力を操るものよ、この石板に触れてみよ。さすれば、我は汝に業火の力、『プロミネンス』を授けん。
 石板の文字に、ジャスミンは自分の事を示しているように感じた。
――これは、私の出番なのかしら…――
 ジャスミンは石板へと歩みを進めた。そしてそっと石板の窪みに手を伸ばした。
 ジャスミンと石板が一体となり、空中へ浮かび上がった。
 空間のエネルギーを取り込むかの如く石板へ光の球が集まっていく。光の軌跡が帯のように靡いている。
 たくさんの光の球が集まると、一旦それは周囲に広がり、次の瞬間一瞬にして一つとなり眩い輝きを放った。
 ジャスミンは石板と共に地上へ降り立った。
「ジャスミン、一体何が起きたんだ!?」
 ガルシアが慌てた様子で訊ねた。
『プロミネンス』
 ジャスミンが詠唱すると彼女の周りに帯状の炎が回り始めた。
 ジャスミンが右手を上げると炎はひとかたまりとなり、手の上に集まった。手を下ろすと収束していた炎は再び放たれ、ジャスミンの体を回り始めた。
 今度は両手を開いてみる。すると炎は左右に分かれ、二つの塊が手の上にできた。ジャスミンはそれを両手で包み、胸元に当て再び両手を開くと背後に翼のような形で現れた。これは飛翔能力というよりは全身を包み込み体を守る防御に優れたものだった。
 ジャスミンは炎の翼を下ろし、再び右手に全ての炎を浮かべた。
「すごい…」
「綺麗…」
 シバとフォレアは思いがけず洩らした。他の者もすっかり魅了されていた。
「ジャスミン、その力は一体…?」
 ガルシアは再度訊ねた。
「これ、『プロミネンス』っていうエナジーで、どうやら炎を自由自在に操れるみたいなの」
 ジャスミンは答え、エナジーを解いて炎を消した。
「自由自在に、だって?」
「うん、私が思ったものならどんな形にもなるし、どんな使い方もできる」
 ジャスミンは再び『プロミネンス』を発動し、炎を纏った。
「例えば、ただこうしているだけでも敵は近づいてこれないでしょ?」
 確かにこの状態でジャスミンに手を触れようものなら一瞬にして炎が襲いかかってくることだろう。
「それと、こうして…」
 ジャスミンは炎の翼を作り出した。羽ばたくとジャスミンは宙を舞った。
「ちょっとだけなら飛ぶこともできるし…」