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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

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 ジャスミンは地面に降り、炎の翼をひとかたまりの炎へと収束させ、はぁ!という気合とともに前方の岩目掛けて放った。
 『フレア』などといった攻撃特化のエナジーに比べれば威力は劣るものの、いとも簡単に岩を砕いた。
「こんなふうに攻撃もできるわ」
 さすがに傷を治すような回復能力は含まれていなかったが、攻撃、防御、移動と炎を文字通り自由自在に操って様々に利用できる万能なエナジーであった。
「すごいじゃねえか、何でもできるんだよな!?」
 シンは興奮気味に言った。
「うん、まだあまり色んな事はできないけど、慣れればもっとできると思うよ」
 ジャスミンは笑顔で答えた。
「じゃ、じゃあ爆発起こしながら消えたりとかできるか!?」
「それはちょっと…」
「なら手に炎を貯めて息で吹き出すとかは!?」
「よく分からないわ…」
「なんだよ…、あっ、じゃあ、炎を口の中に入れてケツから出す曲芸とか…」
「できるわけないでしょ!?そんなの!」
 ジャスミンは顔を真っ赤にしてシンに平手打ちした。
「痛っ!?冗談だって、何も殴らなくても…」
 シンがヒリヒリする頬を抑える中、ジャスミンは顔を紅潮させたまま彼から背を向けた。
 そんな二人の様子を見守っていたガルシアはふと思いつき、フォレアに声をかけた。
「そういえば、フォレア」
「何でしょう?」
「あのエナジーはどうやら火のエナジストであれば得られるらしいが、君はいらないのか?」
 間を置かずフォレアは答えた。
「ええ、私には必要ありません」
 ガルシアはそれはどうしてか訊ねた。
「私はもう戦いに身を置くことはないでしょう。お祖父ちゃんの仇は取りましたから」
 土壇場でフォレアが得たエナジーはフォレアの力そのものを示していた。それは十分『プロミネンス』を得るに足りる力であった。
 しかし、あえて彼女はそれを得ることを拒んだ。最早自分は戦う事はなく、これからも旅を続ける中で何度となく戦いに身を置くであろうジャスミンにこそ相応しいとフォレアは思ったのだった。
「さあ、早く村に帰りましょう、ガルシアさん。魔物をやっつけた事を伝えてお祖父ちゃんを喜ばせたいの」
 フォレアはガルシアに眩しいほどの笑顔を向けた。その表情には一片の陰りもなく、幸福に満ちていた。祖父を瀕死に追いやった仇敵を自らの手で討ち果たすことができたのがこれ以上ないというほど嬉しかったのだ。
「そうだな…」
 ガルシアは仲間達に帰ろうと声をかけた。
 嬉しそうな笑い声をあげながらフォレアが先陣を切って駆け出すのだった。
     ※※※
 ガルシア達はフォレアと共にボルケイ村へと戻ってきた。フォレアの家に向かうと、フォイアーとスクレータが迎えてくれた。
 今回、ただでさえ危険なマグマロックに魔物退治に行くということでスクレータは連れて行かず、フォイアーと共に家に待機させていたのである。
 フォイアーは孫娘達の様子を見て全てを悟った。魔物はガルシア達が、フォレアが討ち取った事を伝えるとフォイアーは大層驚いていた。何度となく事実を確認していた。訊ねられる度にフォレアは事実であることを断言した。
 フォイアーがなかなか信じようとしないので、シンもフォレアが魔物を倒したという事実を告げた。それでも信じないので次にシバが、ジャスミンと事実を告げ、最後にガルシアが言ってやっと彼は信用した。それでもまだ俄には信じがたい様子であったが。
 ガルシア達が村へと戻った時、辺りはすっかり暮れていた。フォイアーの計らいで皆の宿を取ってくれたので、出発は翌日にする事になった。
 その夜、皆がベッドで寝息を立てる中、一つだけ空いたベッドがあった。シンが寝床を抜け、外へ出ていた。
 普段の髪留めを外し、腰元まであろうかという漆黒の長髪を夜風に靡かせていた。
 なぜ彼がこんな夜更けに外に出ているのか、それはフォレアとの約束があったからだ。
 夕方、フォイアーに宿を取ってもらい、そこへ向かおうとした時、シンはフォレアから呼び止められた。何の用かは詳しく話してくれなかったが、今夜村の中央で待っていて欲しい、との事だった。
 仲間達はこの事を知らない、そこでシンは皆と一緒に床につき、寝静まるのを待った。そして皆が寝静まったのを確認するとシンはベッドを抜け出し、宿の外へ出たのだった。
 昼間はマグマロックや地域的な関係からか茹だるほどの暑さであるが、今、夜はそれほどではない。頬を撫でる風がとても心地よく感じた。
 シンは村の中央に立てられた恐らく呪術的意味合いの柱にもたれて腕を組んで目を閉じていた。
 約束の場所はここであった。フォレアはまだ来ない。
 ふと、シンは目を開き、柱から体を離した。そして後ろを振り返る。
「…そろそろ、来ると思ってたぜ」
 シンが口を開いた。彼の目の前にいるのは紛れもなく彼女、フォレアであった。
「すみません、お待たせしてしまって」
「いや、いいさ。オレもついさっき来たばかりだし、風を浴びてたところさ」
 シンは彼らしいニヤリと歯を見せる笑みを見せた。
「で、オレに何か用があるんだろう?」
 シンは真顔になりフォレアを真っ直ぐに見た。
 フォレアは何か戸惑っている様子でなかなか言い出さない。しかし、しばらくしてからシンの目を見て、言った。
「…今日は、皆さんのおかげでマグマロックの魔物を倒すことができました。特にシンさんの力添えで私自身大きな力が得られました」
 本当にありがとうございます、フォレアは頭を下げた。
「オレは何もしちゃいない、お前の力さ。最後にヤツをぶっ飛ばした時のフォレア、最高に格好良かったぜ」
 シンの言葉に、フォレアは目を見開いた。かなり照れた様子顔を紅潮させ、シンから目を逸らした。そして赤くなった顔を必死で手で隠す。
「また、そんなお世辞を…」
 フォレアは消え入るような声で言った。
「オレは冗談じゃモノは言わないぜ」
 普段から冗談ばかり言っている男からはとても信用できない言葉だった。しかし、今のフォレアには深く心に染み入った。
 そしてフォレアは何かを決心した。
「あの、シンさん。私、あなたに伝えたいことが…」
 シンは真っ直ぐにフォレアを見返している。
「私、あなたが…」
 言いかけた所でシンがフォレアの顔の前に手を出した。
「その後は言わなくていい。分かってる…」
 シンは手を下ろした。
「けど止めときな。お前の願いは叶わない、オレは気紛れだからな。絶対損するぜ」
 シンは全て見通していたのだ。フォレアが伝えんとしていることが。
「明日にはもう村を出る。もう会うこともないだろう…」
 フォレアはショックのあまりに言葉を失っていた。その姿はそのままここから消え入りそうな、そんな印象だった。
 しかし、シンの言葉はこれで終わりではなかった。
「勘違いするなよ」
 えっ、フォレアは目を見開いた。
「一生もう会えないなんて事はないさ。きっといつかオレの、オレ達の使命が終わったら、また会いに来るさ!」
 フォレアは箍が外れたように泣き出し、シンは胸を貸した。
 シンの胸に抱き締められるとフォレアは声を押し殺しながら背中を震わせた。
 シンはそっとその背中を撫でてやる。