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こらぼでほすと 風邪2

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リジェネが落ち着いて、素体に戻ったのは、翌日のことだ。それまで、人間が死ぬということを真面目に考えなかったので、かなりショックを受けた。なんせ、イノベイドは記憶したものはヴェーダにフィードバックさせているから素体が壊れた場合、ヴェーダに戻って素体を新しくすれば、また同じように動けるからだ。以前、リボンズがヴェーダを掌握していた時は、そのフィードバックが独占されていたから、死ぬこともあったが、それでも気にならなかった。だが、人間は違う。もちろん、その遺伝子情報を蓄積させておけば、同じものはイノベイドとして作り出せるが、記憶も性格も、まったく同じものではない。まだまだ、これから時間はある、と、思っていたリジェネにとって、ママのダウンは怖かった。あのまま心臓が止まれば、ママとは二度と逢えないのだ。それも、リジェネ自身には、どうすることもできない状態で、消えられたら、それこそ、自分も機能停止してしまいそうだった。ティエリアが慰めてくれて、緊急の場合の対処も教えてくれた。それから、カルテの開示もしてくれた。それを最初からチェックしていたら、半日以上かかったのだ。それも、よく生きていたな、という、とんでもない状態のもので、ティエリアも苦笑していた。
「あの人は、自分のことには無頓着だ。いつ死んでもいい、という考え方なんだ。・・・・だから、生かすために、俺たちだけじゃなく、キラや悟空たちも精一杯、助けてくれた。そうでなかったら、細胞異常が広がって間違いなく死んでいただろう。そういう人だから、あの人の大丈夫なんて疑っていなければならないんだ。」
 それ以外は信頼に値するんだがな、と、締め括っていた。リジェネも、それはそうだ、と、思う。リジェネだけオーヴの遠征に行けなかったから、その代わりとして、あっちこっちと遊びに連れて行ってくれたからだ。それも悪かったんだろうな、と、反省した。細胞異常は完治しても、体力や免疫力は低レベルだ。疲れて、ウイルスを取り込んでしまったらしいからだ。いろいろと、そこいらのことも調べていたから時間がかかった。
 目を覚ましたら、いつもの病室で、ママのベッドに転がされていた。ママは、まだ医療ポッドらしい。丸一日ということだから、まだなんだろう。とりあえず、カルテが新しくなっているから、それのチェックをした。

・・・・あ、市販薬の飲みすぎなんだ・・・・

 あの発熱の原因は、インフルエンザも原因の一つだが、市販薬の大量摂取で内臓を弱らせたのも原因だ。通常の量では効かなくて、かなり大量に飲んでいたらしい。それで胃が爛れているし、肝臓も弱っている。市販薬の副作用も原因だ。
 市販薬で抑えていた症状と、その内臓からの発熱で、高熱になった。それで思い出してみれば、確かに、ママはクスリを何度も飲んでいた。あの場合、リジェネがドクターに報告するべきだったのだ。




 ニールが医療ポッドから出されたのは、結局、二日後だった。処置しなけばならないところが多くて、そうなった。ドクターは渋い顔をしてニールをストレッチャーで運んで来た。看護士が、リジェネが使っていたベッドのシーツは交換して、そこにニールを横にする。
「ドクター、この包帯は? 」
 ニールは首に包帯をしていた。カルテのチェックはしていたが、細かいところまで読んでいなかった。
「咳のしすぎで声帯を痛めてるんだ。しばらく声は使えないんで、喋ろうとしたら阻止してくれるか? リジェネくん。」
「声が出ないの? 」
「出ることは出るだろうが、痛みはあるはずだ。それに、酷使すると声帯自体の傷が酷くなって声が出なくなってしまう。下手をすると、再生槽だ。」
 看病をするリジェネに注意事項を説明しつつ、バイタルサインのチェックをする。ウイルスの駆除はできているのだが、弱った内臓は、すぐには回復しないし、声帯の腫れもクスリで抑えている状態だ。しばらくは、声を使わずに暮らしてもらわないと、また悪化する。少し安静にして、体調が落ち着いたら寺に帰れると説明すると、部屋から出て行った。すぐには意識は戻らないらしい。
 バイタルサインの読み方も学習した。計器を眺めると、安定数値に近いものだが、軽く発熱したままだ。

 あの夜の状態を思い出したら怖くなった。そっとママの手を握る。そこには体温が在って、生きていると解る。それを確認すると、また涙が零れた。これが冷たくなったら、ママはいなくなるのだ。それを実感してしまったら放せない。
「まだ、ダメだよ? ママ。僕と珊瑚礁に行く約束があるでしょ? それに、刹那も降りてくるよ? その後、ティエリアが説教に来るって言ってたよ? だから、冷たくなったらダメなんだ。僕、ママがいなくなったら、どうしたらいいの? ママしかいないんだよ? 僕には、ティエリアみたいに恋人はいないんだからね。僕、ひとりになるじゃない。やだよっっ。」
 口から吐いて出てくる言葉は、リジェネも思いつくままのものだから支離滅裂だ。泣きながら言葉を続けていたら、ぴくりとママの瞼が動いた。それから、リジェネの手を握り返してくれる。まだ、起きられるほどではないらしい。でも、リジェネの文句に反応してくれた。それだけで、ほっとした。いつものママだ。




 薬切れするとは思わなかった。風邪なんてものは、症状を抑え込んでしまえば、適当に完治するものだから、ニールは、そういう方法を使っていた。それなのに、薬効が短くなるので、違うクスリも試し、薬効が薄れたら、さらに追加投与して、と、繰り返していたのだが、薬切れした途端に、熱が上がって意識が朦朧とした。こりゃまずい、と、思うのだが、どうにもならないし考えるのも難しい。朝になったら、亭主がなんとかしてくれるだろうから、それまで耐えているしかないな、と、鷹揚に構えていた。アスランとドクターの声は聞こえたので、やれやれ、これで治療してもらえる、と、途中でフェードアウトしたので、そのまま眠り込んでいた当人にしてみると、割かし楽だった。
 なんだか、お経が聞こえるので意識は戻ったのだが、眠くて仕方がない。それに誰かが自分の手を握っている。リジェネが心配しているのだろう、と、その手を握り返した。それで手一杯だった。



 さらに一日、経過して、ニールの意識は、はっきりと覚醒した。待ち構えていたのは、怒り心頭のドクターと瞼が腫れているリジェネだった。どうしたんだ? と、言おうとして喉が強烈に痛かった。
「ニールくん、声は出すな。今、無理をすると声帯が潰れるぞ。」
 はあ? と、驚いたものの、確かに喉はヒリヒリと痛い。そういや咳してたっけ、と、はいはい、と、頷いた。
「インフルエンザを市販薬で治せると思っているのかい? それも大量摂取して完治すると? 」
 ドクターが市販薬の箱を手にしている。うわぁーものすごく怒ってるよーやべぇー、と、誤魔化すために微笑んでみたが、効果はない。
「きみの身体は弱っているんだ、と、何度、説明したら理解するのかな? こんな無茶な飲み方をしたら、内臓が弱るということには思い至らないか? 」
作品名:こらぼでほすと 風邪2 作家名:篠義