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同じ夢を持つあなたと

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 「ぼ、僕はそんな!なにもしてませんよ。」


 「あなたにはまだわからないのね。あなたの行動が言葉がどれほどの助けになっていたか。」


 彼は照れているのと同時に、少し困惑しているようだった。確かに彼にとっては当然のことで特別意識して行ったことではないのかもしれない。だが、実際、私はそれで救われて、たくさんの力をもらった。同じ夢を持つ人が一人でもいて、背中を押してもらうことができたという奇跡に私は救われた。私は、そのお礼をしたいと考えていた。そう。今の先輩後輩という立ち位置ではなくもっと近くで。彼のもっと傍で。彼のためにできることはないのかと。


 「これから…この先…私があなたの力になることはできないのかしら。」

 「…えっ??」


 きょとんとした彼はどうやら質問の意味を上手く理解できていないようだった。思い切ってストレートに気持ちを伝えるしかない。きっと彼は天然で鈍感だ。伝えよう、私の気持ちを。


 先ほどまでとは違う緊張感が私を包む。もし断られたら、なんて不安も出てくる。だが、私にはもう気持ちを伝えることしかできなくなっていた。もう止められなくなっていた。


 そっと彼の手を取り、目をまっすぐに見る。そして―――

 「大八木…朔くん。私は…。私は。」

 「は、はい。」

 


 「あなたのことが好きです。よかったら私の…彼氏になってください…」

 「…っ、え、あ、あの…」

 
 きっと顔は真っ赤になっているだろう。恥ずかしさから今すぐにでもこの手を放して、走り去りたい。だが、そんな気持ちとは裏腹に握った手には強く力が入り、彼を放しまいとさらに強く握ってしまう。視線も赤く染まった彼の顔から話すことができなくなっていた。


 「…いきなりごめんなさい…でも…もう、気持ちを伝えられずにはいられなかったの。本当に…大八木くんが大切な人になっていたから…」


 「あ…いえっ!!そんな!!すごく嬉しいです!!僕なんかが琴塚先輩にそんな風に思われてたなんて…ビックリして…」


 慌てたように彼が口を開く。あたふたとどうしていいのかわからないのだろう。きっと陰でモテていることも彼はまったく気づいていないのだろう。本当に天然で、鈍いのだから。


 「…もし…願うことができるなら、私はあなたの傍で、あなたの力になりたいと思います。そして、あなたにも私の傍にいて欲しい…彼氏として…私の大切な人として…力になって欲しい…。よかったら、返事を聞かせてもらえないかしら…。」


 「あ、はい…えっと…琴塚先輩…」


 真剣な表情で彼がこちらを向く。どんな返事であろうと受け入れよう。もし彼の中で一番が私でなくとも、彼が私にとって大切な人なのは変わらないのだから。


 「ほ、本当に…僕なんかでいいんですか…??年下だし…先輩は綺麗だし…頭もいいし…きっと大学に行っても…もっとたくさんの人と出会うかもしれないのに。本当に僕でいいんですか??」


 「…っ!!」

 「せ!先輩!?」


 自分のことを肯定するのが苦手な彼はネガティブなことを言う。そう言ってしまうのはわかる。仮に私が彼から告白されたとしてもきっと同じ反応をしただろう。明野に矢来さん、同級生の蒔田さん、たしかほかの学校の女の子にも少なからず好意を寄せられていたはずだ。その中で本当に自分でいいのか、自分でもわからない。

 
 でも、だからこそ思わず彼を抱き寄せ、思い切り抱きしめる。精一杯の力で。彼は驚き、手をあたふたとしている。本当のことを言うと私自身が私自身について驚いていた。まさか、いきなり抱きつくなんて。きっと泣き顔を見られたくないのと恥ずかしさとたくさんの感情のせいだ。


 「あなたじゃないとダメなの…っ。私は…あなたが好きなのっ!!…うぅ…ぐすっ…だから…」

 「…………ありがとうございます。琴塚先輩。僕でよかったら先輩の…彼氏にしてください。…それで…」

 「??」

 「僕の彼女になってください。よろしくお願いします…!」

 「………っ………はいっ…!不束者ですがよろしくお願いします。…ふふっ。」


  
 今日という日を私はずっと忘れないだろう。

 たくさんの大切なものを与えてくれた人の一番になれた日を。まだ彼には好きという言葉を言わせてはいないがきっとすぐに言わせてみせる。彼の優しさ、強さ、弱さ、全部を受け止める人になる、私は強く決心する。 



 「あ、あの…そろそろ離れたほうが…」

 「えっ、あ!!そうね!!」


 ばっと勢いよく離れる。今思えばどんなに大胆なことをしたのかと思うと恥ずかしさのあまりどうにかなりそうだ。それにしても本当に現実味がわかない。彼がまさか本当に彼氏になってくれて、私が彼の彼女になれたなんて。ほっぺをつねってみようかと思ったが、紛れもない現実なのだ。


 「…あ、あの。琴塚先輩」

 「なにかしら??…そうだ。おおや…いえ。朔くん。」

 「さっ!朔くん??」

 「なにかしら?朔くん?あと私と二人の時は先輩は禁止よ。…彼氏なんだから名前で呼びなさい。」


 どうやら私にもこういったことは言えるようだ。年上ということはネックになると思っていたが、どうやらうまくやれそうだ。なによりこの雰囲気のほうが心が落ち着く。変に心を着飾らないほうがきっと彼とはうまくやれる。そう思えた。


 「い、いきなりハードル高すぎませんか!?」

 どういったことか彼の焦った様子は私を嬉しくさせる。ついからかいたくなっていしまうのは彼の素質なのか、私の素質なのか、一体どっちなのだろうと不思議になってしまう。すると不意に携帯電話が鳴る。電話に出てみると文芸部の後輩たちだ。どうやら月刊小説をみて連絡をくれたらしい。電話越しだが涙声でいるのがわかった。なだめて、お礼を伝え電話を切る。


 「ふふっ、そろそろ帰りましょうか。」

 「あ、はい。そうですね。」


 二人並んで公園を出る。来た時よりも近い距離でいれることを実感し、嬉しく思う。彼の横顔を見つめると恥ずかしそうにこちらに気付きほほ笑んでくれる。それに私も微笑み返す。どうせなら手を握って欲しい、なんて言いたいけれど、今日はこの距離が心地いい。きっと次に二人で出かけるときは手を繋いでもらおう。そんなことを考えているとは思いもしないだろうと私はまた意地悪な考えをしていたのだった。と、ここで気が付いた。



 「そういえば…明野たちにはこのことは伝えたい??」

 「えっと、せんぱ…琴塚さんの佳作受賞のことですか??」

 「違うわよ。私たちの関係のことよ。」
 


 わざと間違えているのだろうかとも思ってしまう発言にやきもきしてしまう。隠していたいのならそれでもいいのだが、いずれバレてしまうのは必至だし、いっそのこと初めから伝えていてもいいのかと思う。個人的には明野には言わなければならないような気がしてしょうがなかったのだ。


 「僕は…どちらでも。きっと隠していてもそのうち江戸川とかに感づかれそうですし。」

作品名:同じ夢を持つあなたと 作家名:はるかす