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同じ夢を持つあなたと

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 ははは、と困ったように彼は答える。どうやら考えていることは一緒のようだった。そうなればと、私は、決断する。


 「なら、今度時間を作りましょう。とりあえずお互いの伝えておきたい人たちを呼んでおいて…天文部の部室にでも集まりましょう。………あ、ごめんなさい。つい…いつもの癖じゃないけど仕切っちゃって。どう…かしら…??」


 ついいつもの仕切り癖が出てしまった。二人のことなのだから二人で決めたかったのについやってしまった。このあたりは反省しなければいけない所なのかもしれない。



 「あ、全然です!!むしろその方がいいかなぁって僕も思ってましたし…ただ…」

 「ただ…??」

 「き、緊張しますね!!やっぱり!!みんなに伝えるとなると…いろいろ聞かれそうで。」


 そういえばそうだ、と今更ながら思ってしまった。付き合ったこと自体を伝えるのは簡単だが、そのあと確実に質問攻めにあう気がする。どういった経緯で付き合ったのか、どっちから告白したのか、正直、聞かれたら恥ずかしすぎることばかりだ。特に私から告白したなんてみんなが知ったらきっと意外だと思われるのだろう。
 


 「きっと…驚くでしょうね。何より一番自分が驚いているんだもの。」

 「正直、僕もです。ほんと…夢みたいです。」



 お互いに笑ってしまう。それに、たくさんの人の驚く表情が簡単に想像できた。ただ、その中にはきっと複雑そうな表情や、悲しそうな表情をみせる子もいるのだろうと思うと、少し心が痛んだ。だが、彼が私を選んでくれたことに私は自信を持たなければならない。変に謝ってはいけない。そう思った。

 結局のところ、どうやって学校の皆に伝えるか、いつ伝えるかの答えは出ることなく、駅につき、電車に乗ってしまった。気が付けば別れ際になるまで別の話をしてしまい、答えを出せないまま帰宅することになってしまった。


 「…どうするかは今後、ゆっくり決めましょう。きっと良いタイミングが見つかるわ。」


 「はい。じゃあ…また明日。学校で。」


 「……えぇ。」


 それじゃあここで、と私は立ち止まり告げる。私の家まで送っていくと言った彼だったが、私が遠慮してしまった。というよりも、もし両親に見つかってしまったら恥ずかしすぎてきっと何も言えなくなってしまう、そんな気がした。だが、心は彼と一緒にいたいという気持ちでいっぱいで、彼と離れるのが実のところ、すごく寂しかった。つい、声のトーンが下がってしまう。


 「どうかしましたか?琴塚さん??」


 「い、いえ。大丈夫よ。今日はありがとう。…それとこれからよろしく…ね。」

 
 「あ、はい!よろしくお願いします!!」


 やっぱり感づかれてしまったのか心配されてしまった。なんでもないと誤魔化す。きっとここで素直に寂しいと伝えることができない私はただの強がりなんだろうと自嘲気味に思ってしまう。だが、そんな私に彼は優しい笑顔で答えてくれる。


 「そ、それじゃあ!!また!!」


 そういうと彼は慌てたように走って行った。恥ずかしかったのか結構な勢いで。途中、振り返りこちらに向かって大きく手を振る。私も小さく手を振り返事をする。それを確認した後、彼は再び走って行ってしまった。曲がり角で彼の姿が見えなくなる。振っていた手を下ろし、私も自宅に向かった。帰り道は一人になってしまい、冬の冷たい空気がなんだか身に沁みる。だが、心は温かいままで夢見心地といった感じだった。


 「…彼氏彼女……か…」


 自分はそういった関係には遠く縁のないものだとばかりこれまで考えていたが、本当に何が起こるのかわからないものだと可笑しくなってしまう。きっと両親も知れば驚くだろう。多分よろこんでもくれる…はず。


 自宅に付く。両親はまだ帰っておらず、家には一人だった。家に入ると念のために鍵を掛け、自分の部屋に入る。電気をつけ、上着と荷物を置き、小説大賞だけを抱えベッドに横になった。ふぅ、と一息つき小説大賞をもう一度見る。そこには自分の名前が間違いなく書かれている。受賞したという喜びと同じ、それ以上に彼の顔が頭に浮かぶ。ボッと顔が熱くなるのを感じる。きっとまた赤くなっているんだろうと思うと一人でいたとしても恥ずかしくなり、つい本で顔を隠してしまった。不意にこんな自分に笑いが込み上げてくる。


 「ふふふ……本当に夢みたいね。明日起きたらきっと夢だったんじゃないのかって思ってしまいそう。」


 ベットから起き上がり、小説大賞を机の上に置く。この本は一生大切に置いておこう。新しい宝物がまた一つ増えた、まるで子供みたいに浮かれている自分がまた可笑しくて笑ってしまった。部屋を出ようとすると、玄関で鍵が開く音がした。どうやら母が帰ってきたようだ。ただいまーと声が聞こえる。部屋を出るとお帰りなさいと迎える。そして発表の結果を伝える。すると、普段、感情の起伏が少ない両親が泣きながら抱き着いてきた。おめでとう、よく頑張ったねと褒めてくれる。とても嬉しかったのだが、やっぱり両親には近いうちに彼のことは伝えよう、ここまで来るのに力を与えてくれた人を知ってほしい、そう私はあらためて思うのだった。








作品名:同じ夢を持つあなたと 作家名:はるかす