こらぼでほすと 風邪3
「それなら、俺が、明日、顔を出す。マリューも休みだから、一泊二日ボランティアツアーをやらせてもらおう。」
「ああ、それならお願いします、ムウさん。」
鷹単独だと、止められるが、鷹の女房も一緒なら悪戯もしないだろうと、アスランも許可する。別に、これといって難しい用事はない。確実に、ニールにクスリを飲ませて栄養補給させるだけだから、遊びがてらに出向いてくれるなら有り難い。
「マリューが、リジェネと顔合わせてなかったんだ。だから、逢いたいって言われてたんだ。」
ティエリアの片割れは、神出鬼没なので、なかなかお目にかかれない。仕事を持っているマリューだと予定が合わなくて、なかなか顔が見られなかった。
「ムウさん、ママは弱ってるから悪戯しないでよ? 」
「うーん、軽いスキンシップぐらいにするか。」
「あんたの場合、どこまでが軽いか疑問だけどな。」
「スキンシップだから、軽く触れるぐらいが妥当線だろ? 虎さん。」
「触れる部分が、尻とか胸はセクハラだけどな? 鷹さん。」
「あーそういうことなら、リジェネが撃退するぜ? 虎さん。 それにマリューさんもいるしさ。」
「というか、セクハラの報告が入ったら、後日、俺が、ママの代わりに報復させてもらいますよ? 鷹さん。」
シンとレイが、牽制すると、鷹は、「信用がないにも程がある。」 と、大笑いしている。実際は、弱ってるニールに、そんな御無体を働くほど、鷹は溜めることもないから、冗談の言い合いのようなものだ。
「あと、ティエリアが言ってたんだけど、刹那はママの独占を贈り物に欲しいんだって。だから、刹那の誕生日祝いは日を変えてやるよ。そのつもりで。」
「まあ、そりゃそうだよな。刹那らしい。」
「そういうことなら、どこかでゆっくりしてもらったほうがいいんじやないですか? キラさん。寺だと、独占は難しい。」
「うーん、でも、刹那もギリギリだし、ミッションなうだから連絡がつかないんだよね。希望とかリクエストの確認もできないし。」
刹那は、ミッション中だから、こちらから連絡ができない。リクエストがあれば、それに添うようにセッティングできるのだが、それができないからキラも考えていた。
「最悪は、マンションで、独占ぐらいかな。鷹さん、マンションの部屋、冬仕様でしたか? 」
「確認しておく。ちび猫ちゃんの降下の連絡入ったら、リクエストの確認をしろ、アスラン。それからでも、間に合うだろ。」
「了解です。・・・・じゃあ、ミーティング終了です。本日もお願いします。」
そろそろ、予約客がやってくるから、アスランも締め括った。本日のお客様をリラックスして楽しんでもらうのが優先だ。本日の趣向は、少し早い春のイメージでフロアには桜が配置されている。静かな花見の気分に浸っていただくために、琴の音と水音をBGMに流している。ただし、料理はイタリアン。春先の旬の魚を、いろいろと調理したものだ。
翌日、ハイネは朝から外出した。一応、坊主は居ることは居るが、居間で書類仕事をしている。家庭菜園のほうれん草を引き抜いて、ニールは献立を考えている。さすがに、フレッシュなものがない。このほうれん草も、全員で食べるほどにはないので、何かと組み合わせないと量が足りない。
・・・・絹ごし豆腐とほうれん草で白和えにするとして、なんか生野菜が欲しいなあ。ちょっとスーパーまで出ようかな。三蔵さんの酒のアテに刺身ぐらいはあったほうがいいしなあ・・・・・
と、スコップでほうれん草を根から掘り起こしつつ、そんなことを考えていた。リジェネは、ぴとっとニールのとなりにくっついている。兎に角、体温を感じていたいらしいので、好きにさせている。声が出せれば、もう少し、言葉で癒してやれるのだが、いかんせん、今は声を出そうものなら、リジェネは泣くし、亭主がマグナムで狙うので、さすがに、ニールも声を出したくない。
・・・ごめんな、リジェネ。今度から気をつけるからな・・・・・
そこまで、リジェネの精神年齢は低いのだと思わなかった。ティエリアも最初は、そういうところもあったから気付いてやるべきだった、と、反省した。 というか、さすがに、インフルエンザは堪えた。久しぶりに高熱を発したので、ニールも対応が効かなかったのだ。家庭菜園の作業だけでも、疲れてくるから、相当に体力を落としたのは自覚できる。掘り起こしたほうれん草をバケツに投げ入れて、傍の水道で、さっと洗う。僕がする、と、リジェネが手伝ってくれるので、頼んで、それを眺めていた。
「ちょっと、風邪引きさんが、何をしてるの? 」
背後から声がして、振り向いたら、鷹夫婦が縁側から手を振っていた。
「一泊二日ボランティアツアーなので、今から家事は代わるわよ。それから、何かして欲しいことがあるなら、遠慮なく言って? 」
戻って来て、お茶を出したら、マリューから、そう提案された。ボランティアツアーということは、寺に泊るらしい。
『せっかく、ふたりして休みが重なったんなら、夫婦で旅行でもしてくればいいんでは? マリューさん。』
と、メモに書いて掲げたら、「それは、老後の楽しみにしてるわよ。」 と、笑い飛ばされた。
「たまには、盛大に料理を作ったりしたいの。ほら、うちはムウと二人でしょ? 作り甲斐がないのよねぇ。」
「ここなら、悟空が消費してくれるから、マリューも存分に作れるんだとさ。ママニャン、そういうことだから、家事代わってやってくれ? 」
そういうことなら、楽しんでいただこう、と、ニールも頷く。客間に布団だけ用意しておけば良いだろう。それから、材料の買出しもしてもらわなければ、在庫がない。
『食材がないので買出しをお願いします。』 と、メモを書くと、了解、と、マリューも返事する。今夜のメニューは、いろいろと試すつもりだったから、最初から買出しは予定に入っていたらしい。ナマモノは皆無です、と、メモを書くと、「何か買ってきて欲しい食材は? 」 と、勧めてくれるので、亭主の晩酌用の刺身をお願いする。
「ん? 晩酌用と晩御飯は別ってこと? 」
そう、普通の一般家庭なら、晩酌して食事という流れだが、バイトがあるので、晩酌して出勤。戻ったら、軽く食べるというのが、寺での流れだ。店で夜食は食べたりするから、晩御飯は食べないこともある。その場合は朝に、その料理が転用されるので、まあ、とりあえず大量には必要になる。
「おやつはお菓子? 」
『いえ、軽食で。今日は、悟空だけなので、ハヤシライスにしようかと思ってました。』
「それ、もうできてるの? 」
『ルーは冷凍してあるんで解凍すれば、すぐに。』
「あら、ちょっと待って。じゃあ、晩酌って五時ごろかしら? 」
『まあ、そんなとこですね。六時過ぎにはバイトに出るので。』
「うーん、さっさと買い出してこないと間に合わないわね。」
『すいません。刺身だけは夕方に欲しいです。』
ふたりして口頭とメモというおかしな打ち合わせで、買出しメニューも決められた。夕方に入り用なものだけは、先に用意しなければならないから、まずは近所のスーパーと鷹夫婦は遠征していった。
作品名:こらぼでほすと 風邪3 作家名:篠義