こらぼでほすと 風邪4
悟空はが寺に帰ると、なんだか騒々しいことになっていた。原因は台所で、きゃあとかわおとか言う叫び声が聞こえている。
「何事だよ? ・・・あれ? 」
居間に入ったら、こたつには寺の住人が鎮座していて、坊主の晩酌を女房が相手をしている。もちろん、リジェネもニールの横に座っている。で、台所の異音は、鷹夫婦のものだった。
「おかえり、悟空。おやつは準備できてるわよ。」
悟空の声に反応して、鷹夫婦が振り向いた。どちらも、顔に白いものが付着している。
「何してんの? マリューさん。」
「お寺の台所を借りて、心置きなく料理をしているのよ。今、餃子の皮を製作中。」
台所の食卓は片付けられて、そこで鷹が白いものを捏ねている。それが餃子の皮であるらしい。
「え? 皮から作んの? 」
「そう、変り種も入れてね。これなら冷凍もしておけるから大量に作っても無問題。」
もちろん、それだけではない。大きな鍋ではテールスープを炊き込んでいるし、煮魚のいい匂いもしている。とりあえず、大量にいろいろと製作しているらしい。マリューが、ハヤシライスを配達すると、悟空も、まず、そちらを食べる。ちょこんとほうれん草の白和えも運ばれて来た。坊主のほうは、刺身と、ちょこちょこっとした酒の肴が用意されている。
「ママも食べなよ。」
『後でな。足りなかったら、おかわりもあるよ?』
「うん、もう二杯は欲しいな。カレーねぇーの? 」
一人前ずつ、いろいろと準備はしてあるので、リクエストすると大抵、簡単なものは用意してくれる。ちょっと待ってな、と、手で合図して、ママは台所に赴いて、リクエストしたカレーのルーをチンしている。リジェネも、ママの服を掴んでついてまわっている。チンしている間に、二枚のカレー皿に、ごはんを盛りつけて福神漬けとらっきょを冷蔵庫から出して、リジェネに運ばせている。
「おい、俺にもカレーくれ。」
いい匂いに釣られて坊主もリクエストだ。はいはい、と、それらも用意する。寺の日常風景だ。鷹夫婦は、それを観察しつつ餃子の皮を引き延ばす作業をしている。しかし、どう見ても通常サイズの三倍はありそうな大きさだ。え? と、ニールが食卓の上の光景に驚いていると、マリューが、「これ、悟空くん用なの。ちまちま食べるより、このぐらいのボリュームがあったほうがいいでしょ? 」 と、説明してくれた。通常サイズは市販のものが用意してあるらしい。なるほど、と、ニールのほうも納得して頷いた。餃子は、たまにするが、悟空は、ひとりで五十や六十は食べてしまうから、準備するのも手間がかかるのだ。包む人数が居るなら、共同作業で楽しいのだが、ひとりだと百も作ると飽きてくるから、年少組が休日に顔を出した時のレクリエーション用のメニューになっている。そういう発想の転換って必要だな、と、ニールも感心する。確かに、おにぎりも、小さいのより大きいのがいい、と、悟空は言うのだから餃子も次回からは、ビックサイズにしようと予定した。
坊主たちが出勤すると、こたつの上が片付けられて、そこで包む作業になる。タネはフードプロセッサーで粉砕されて混ぜ合わされた通常の餃子のもの、鳥肉と白菜とショウガというもの、エビとにら、ネギ、タマネギのエビ餃子用のもの、さらにエビの代わりに白身魚に変わったもの、塩鯖としそ、白菜という変り種などなど、各種のタネが用意されていた。買出しから帰ってきて数時間しても作業が完了しないはずだ、と、ニールも納得の量だ。
「アラ? もう包むトコロなの? 」
ひょっこりと現れたのはアイシャだ。さらに、背後からアマギも顔を出した。珍しい組み合わせだ。マリューが亭主が出勤して暇なら一緒に食事しない? と、アイシャを呼び出した。ついでに、トダカが様子を見て来てくれ、と、アマギに頼んだので店で待ち合わせをして一緒にやってきたのだという。
この陣容を客間に押し込めるわけにはいかないが、さて、どう配置しようか、と、考えて、泊まりの確認をすると、アイシャのほうは仕事が終わったら虎が迎えに来るし、アマギは勝手に帰るということで、泊りではないとのことだ。
「遅いわよ? アイシャ。あれ、用意してくれた? 」
「モチロンよ。硬めにしてあるから包めるわ。」
アイシャがタッパーを紙袋から取り出した。カレー色のブツだ。それは? と、ニールが指差して首を傾げたら、「ガーリエマーヒーよ、ニール。」 と、アイシャは微笑んだ。
「もうすぐ、セツナが戻るでショ? 冷凍しておけば食べさせラレルからネ。」
「うふふふ・・・これがサプライズなの。どう? かなりインパクトがあるでしょ? 」
変り種の餃子を作りたい、と、考えたマリューは、アイシャにも依頼したらしい。
「明日は土曜だし、キラくんたちも呼んで餃子を振舞うつもりなの。ニールは、何もしないように。全て、私とアイシャで仕切るから。」
『ということは、今夜の食事メニューじゃないんですね? 』
しゃかしゃかとメモを書いて掲げたら、「今夜、味見はするけど?メインは、テールスープとローストポークです。」とのことだ。
「じゃあ、さっさと包まないと晩飯は始まらないわけですか? マリューさん。」
「そういうことよ、アマギさん。 」
そういうことなら、手伝いますか、と、アマギとアイシャも手を洗ってこたつに座り込む。この人数で五百ぐらい包む予定だ。ひとり、百近いが、まあ、くだらない世間話をしながらなら楽しい作業だ。
「リジェネくんは、こっち。三角の真ん中に、これぐらい置いて、端に水をつけて折ればいいの。これは、ニールの晩御飯にするから。」
リジェネにも、もれなくノルマがついている。鳥肉のタネをワンタンの皮で包むノルマだ。とりあえず、これは五十だと皮を置かれた。
「ニール、ビックサイズをお願い。全部のタネで作ってちょうだい。三十枚くらいはあるから。」
ニールの担当は、悟空用のビックサイズだ。さすがに、こういう特殊なものは、マリューたちでは難しいので、主夫に頼む。はいはい、と、ニールが、それらを包む。
「アマギさん、今年も移動無しなのか? 」
「しばらく移動はないよ、鷹さん。」
「キサカさんが零してたぞ? そろそろ、艦隊副司令ぐらいはして欲しいのにってさ。」
「あーまあ、以前から打診はされてるんだが、トダカさんの傍で学びたいこともあるしね。のんびりさせてもらおうと思ってるんだ。」
「トダカーズラブ筆頭のほうが大事ってことか。愛されてるなあ、トダカさんは。」
「はははは・・・そりゃ、そうだろう。引退してもついてくる人間がいるんだからさ。」
「まあ、いいんじゃないの? アマギさんも、先の大戦で燃焼しちゃったんでしょ? ・・・・いろいろと大変だったものね。」
「マリューは燃焼しなかっタノ? 」
「燃焼はしたけど、うちは稼がないと、いつ、ムウが慰謝料請求されちゃうかわからないもの。」
「え? 女の子には手を出してないから賠償問題はないんじゃないか? マリュー。」
「その意見も、どうなんだろうな、鷹さん。まず、浮気しないことを誓ったほうがいいんじゃないか? 」
「いや、浮気はいいんだよ、アマギさん。据え膳差し出されて食ってるだけだからさ。」
「何事だよ? ・・・あれ? 」
居間に入ったら、こたつには寺の住人が鎮座していて、坊主の晩酌を女房が相手をしている。もちろん、リジェネもニールの横に座っている。で、台所の異音は、鷹夫婦のものだった。
「おかえり、悟空。おやつは準備できてるわよ。」
悟空の声に反応して、鷹夫婦が振り向いた。どちらも、顔に白いものが付着している。
「何してんの? マリューさん。」
「お寺の台所を借りて、心置きなく料理をしているのよ。今、餃子の皮を製作中。」
台所の食卓は片付けられて、そこで鷹が白いものを捏ねている。それが餃子の皮であるらしい。
「え? 皮から作んの? 」
「そう、変り種も入れてね。これなら冷凍もしておけるから大量に作っても無問題。」
もちろん、それだけではない。大きな鍋ではテールスープを炊き込んでいるし、煮魚のいい匂いもしている。とりあえず、大量にいろいろと製作しているらしい。マリューが、ハヤシライスを配達すると、悟空も、まず、そちらを食べる。ちょこんとほうれん草の白和えも運ばれて来た。坊主のほうは、刺身と、ちょこちょこっとした酒の肴が用意されている。
「ママも食べなよ。」
『後でな。足りなかったら、おかわりもあるよ?』
「うん、もう二杯は欲しいな。カレーねぇーの? 」
一人前ずつ、いろいろと準備はしてあるので、リクエストすると大抵、簡単なものは用意してくれる。ちょっと待ってな、と、手で合図して、ママは台所に赴いて、リクエストしたカレーのルーをチンしている。リジェネも、ママの服を掴んでついてまわっている。チンしている間に、二枚のカレー皿に、ごはんを盛りつけて福神漬けとらっきょを冷蔵庫から出して、リジェネに運ばせている。
「おい、俺にもカレーくれ。」
いい匂いに釣られて坊主もリクエストだ。はいはい、と、それらも用意する。寺の日常風景だ。鷹夫婦は、それを観察しつつ餃子の皮を引き延ばす作業をしている。しかし、どう見ても通常サイズの三倍はありそうな大きさだ。え? と、ニールが食卓の上の光景に驚いていると、マリューが、「これ、悟空くん用なの。ちまちま食べるより、このぐらいのボリュームがあったほうがいいでしょ? 」 と、説明してくれた。通常サイズは市販のものが用意してあるらしい。なるほど、と、ニールのほうも納得して頷いた。餃子は、たまにするが、悟空は、ひとりで五十や六十は食べてしまうから、準備するのも手間がかかるのだ。包む人数が居るなら、共同作業で楽しいのだが、ひとりだと百も作ると飽きてくるから、年少組が休日に顔を出した時のレクリエーション用のメニューになっている。そういう発想の転換って必要だな、と、ニールも感心する。確かに、おにぎりも、小さいのより大きいのがいい、と、悟空は言うのだから餃子も次回からは、ビックサイズにしようと予定した。
坊主たちが出勤すると、こたつの上が片付けられて、そこで包む作業になる。タネはフードプロセッサーで粉砕されて混ぜ合わされた通常の餃子のもの、鳥肉と白菜とショウガというもの、エビとにら、ネギ、タマネギのエビ餃子用のもの、さらにエビの代わりに白身魚に変わったもの、塩鯖としそ、白菜という変り種などなど、各種のタネが用意されていた。買出しから帰ってきて数時間しても作業が完了しないはずだ、と、ニールも納得の量だ。
「アラ? もう包むトコロなの? 」
ひょっこりと現れたのはアイシャだ。さらに、背後からアマギも顔を出した。珍しい組み合わせだ。マリューが亭主が出勤して暇なら一緒に食事しない? と、アイシャを呼び出した。ついでに、トダカが様子を見て来てくれ、と、アマギに頼んだので店で待ち合わせをして一緒にやってきたのだという。
この陣容を客間に押し込めるわけにはいかないが、さて、どう配置しようか、と、考えて、泊まりの確認をすると、アイシャのほうは仕事が終わったら虎が迎えに来るし、アマギは勝手に帰るということで、泊りではないとのことだ。
「遅いわよ? アイシャ。あれ、用意してくれた? 」
「モチロンよ。硬めにしてあるから包めるわ。」
アイシャがタッパーを紙袋から取り出した。カレー色のブツだ。それは? と、ニールが指差して首を傾げたら、「ガーリエマーヒーよ、ニール。」 と、アイシャは微笑んだ。
「もうすぐ、セツナが戻るでショ? 冷凍しておけば食べさせラレルからネ。」
「うふふふ・・・これがサプライズなの。どう? かなりインパクトがあるでしょ? 」
変り種の餃子を作りたい、と、考えたマリューは、アイシャにも依頼したらしい。
「明日は土曜だし、キラくんたちも呼んで餃子を振舞うつもりなの。ニールは、何もしないように。全て、私とアイシャで仕切るから。」
『ということは、今夜の食事メニューじゃないんですね? 』
しゃかしゃかとメモを書いて掲げたら、「今夜、味見はするけど?メインは、テールスープとローストポークです。」とのことだ。
「じゃあ、さっさと包まないと晩飯は始まらないわけですか? マリューさん。」
「そういうことよ、アマギさん。 」
そういうことなら、手伝いますか、と、アマギとアイシャも手を洗ってこたつに座り込む。この人数で五百ぐらい包む予定だ。ひとり、百近いが、まあ、くだらない世間話をしながらなら楽しい作業だ。
「リジェネくんは、こっち。三角の真ん中に、これぐらい置いて、端に水をつけて折ればいいの。これは、ニールの晩御飯にするから。」
リジェネにも、もれなくノルマがついている。鳥肉のタネをワンタンの皮で包むノルマだ。とりあえず、これは五十だと皮を置かれた。
「ニール、ビックサイズをお願い。全部のタネで作ってちょうだい。三十枚くらいはあるから。」
ニールの担当は、悟空用のビックサイズだ。さすがに、こういう特殊なものは、マリューたちでは難しいので、主夫に頼む。はいはい、と、ニールが、それらを包む。
「アマギさん、今年も移動無しなのか? 」
「しばらく移動はないよ、鷹さん。」
「キサカさんが零してたぞ? そろそろ、艦隊副司令ぐらいはして欲しいのにってさ。」
「あーまあ、以前から打診はされてるんだが、トダカさんの傍で学びたいこともあるしね。のんびりさせてもらおうと思ってるんだ。」
「トダカーズラブ筆頭のほうが大事ってことか。愛されてるなあ、トダカさんは。」
「はははは・・・そりゃ、そうだろう。引退してもついてくる人間がいるんだからさ。」
「まあ、いいんじゃないの? アマギさんも、先の大戦で燃焼しちゃったんでしょ? ・・・・いろいろと大変だったものね。」
「マリューは燃焼しなかっタノ? 」
「燃焼はしたけど、うちは稼がないと、いつ、ムウが慰謝料請求されちゃうかわからないもの。」
「え? 女の子には手を出してないから賠償問題はないんじゃないか? マリュー。」
「その意見も、どうなんだろうな、鷹さん。まず、浮気しないことを誓ったほうがいいんじゃないか? 」
「いや、浮気はいいんだよ、アマギさん。据え膳差し出されて食ってるだけだからさ。」
作品名:こらぼでほすと 風邪4 作家名:篠義