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こらぼでほすと 風邪4

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「ほら、鷹さんたちも、そう言ってるから、三蔵の次に入って。リジェネ、クスリ飲ませて湿布も変えろ? 」
「了解。」
 坊主の晩酌の準備をしていたら、勝手に決められている。まあ、そろそろ横になりたいとニールも思っていたので、それなら甘えさせてもらおう、と、頷いた。



 翌日、昨晩、うっかり味見にしては食べ過ぎてしまったので、新たな餃子を作成するため、鷹夫婦が買出しに出かけた。今日は、年少組が顔を出すから包み手も多いので、さらなる大量製作をするつもりらしい。ある意味、レクリエーションの一環だから、それはそれでいいので、ニールのほうは通常の家事を片付けて、食卓でリジェネにピーラーの使い方を教えつつ、ジャガイモの皮むきをしていた。ジャガイモスープが飲みたくなったからだ。トダカの差し入れには、ビシソワーズはあったのだが、それとも違うものだ。ただし、ニールには、母親の味はわからない。こういうものだった、という漠然とした記憶しかないので、作り方は携帯端末で調べた。家庭料理だから、それほど凝ったものではない。ジャガイモをブイヨンで煮て、ミキサーにかけて味を調えるという単純なものだ。
「昼は、ボランティア夫婦が作るんだろ? 」
 食卓の椅子で、坊主も一緒に座って新聞を読んでいる。手伝う気はないが、とりあえず会話はしたいらしい。ニールは、時計に視線を流して首を傾げている。すでに、昼に近い時間だから、これから作るのは無理だろうと言いたいらしい。
「なら、ラーメンでいいぞ? 」
 時間のかからない料理となると、インスタントラーメンが最も早い。それに炒めた野菜を乗せれば栄養面も問題はない。もう、お腹空いたんですか? と、マスクを外して口パクすると、「いや、まだいい。」との返事だ。
 リジェネは、その会話はスルーだ。どうしてもママの言っていることがわからない。唇の動きを見ていても、何を喋っているのか、なんて全然、わからないのだ。悟空もわからないと言うから、これはイノベイドだからではなくて、ママと三蔵だからできるらしい。
「・・・あ・・・それ・・・」
 べしべしと乱暴にジャガイモを剥いていたら、ママが声を出した。慌ててリジェネがママの口を抑えるし、坊主が横っ面にハリセンを叩き込む。咄嗟に、声が出てしまうので、ニールも何度もやられている。メモに、『もう少し、皮を薄く削れ。』とメモに書いて、リジェネに見せている。
「薄く? でも、ボコボコのとこ、残していいの? 」
『後でえぐる。』
「なるほど、了解。」
 芽の部分も削ろうとしていたが、そうではないとのことだ。では、薄く、と、リジェネもやり方を変える。
「おまえのメシは、いろいろとあっただろ? 」
 なぜ、わざわざ、自分用と思われる料理をしているのか、坊主は尋ねる。ニール用の流動食は、きちんと用意されている。わざわざ作らなくてもいいはずだ。故郷の風邪メニューを思い出したので、と、ニールが口パクする。それから、あんたは風邪の時は、何かありますか? と、首を傾げている。
「あー、風邪なんか引かねぇーからなあ。別に、これといってはねぇーな。肉でいい。」
 肉? と、ニールは驚いて笑っている。体力を落とさないというなら、それもアリだろう。俺には無理ですねー、と、返している。
「おまえは、粥かおじやが、せいぜいだろ? 食わないから回復が遅せぇーんだぞ? 舅の持って来たものは、完食しろよ? 」
 それこそ無理だ。トダカとアマギは少しずつ、いろんなものを運んでくれたし、レイも似たようなものを用意してくれた。お陰で、ものすごい量になっている。普段から、それほど量が入らないので、完食は無理だ。適当に、転用できるものは、転用して、デザートはリジェネと悟空にも消費を頼んでいる。
 リジェネが剥いたジャガイモの芽をえぐりつつ、ニールは、無理ですよ、と、亭主に返事している。もちろん、口パクだ。鷹夫婦は帰ってくるのか、もしかして、昼ご飯をテイクアウトしてくるつもりなのか、そこいらがわからないと作るほうも困る。亭主に、電話して尋ねて欲しい、と、携帯端末で電話する真似を女房がする。
「別に、被ってもサルが食うからいいだろ? 餃子は夜じゃねぇーのか? 今から作ってたら、昼には間に合わないぞ。」
 あーそーですよねー、と、頷きつつ、ジャガイモは適当に分割されて鍋で煮込まれ始めた。そこに固形キューブのブイヨンも投下されている。茹で上がるまでは時間がある。さて、家庭菜園の水遣りでもするか、と、女房が動こうとして、亭主に腕を取られた。
「どこへ行く? 」
 外、と、家庭菜園方面を指差すので、そのまま椅子に座らせた。それから、「おい、紫ちびもどき、水遣りしてこい。」 と、命じる。
「え? 」
「おまえが行かないと、こいつが寒い中、外へ行くことになる。それでもいいのか? 」
 どんな脅しかけてんですか、と、女房が亭主の肩を掴れていないほうの手で軽く叩くが、掴れた腕は外れない。リジェネが、ショックで、おかんから離れないのは坊主も承知のことだ。ものすごく不安な顔をしてリジェネは、ママを見ている。まだ、離れたくないのだろう、と、ニールも無理矢理立ち上がろうとする。
「いいっっ。僕が水遣りしてくる。ママは座ってて。」
 大丈夫か? と、ニールがリジェネの顔を覗きこむと、無理に微笑んだ顔をしている。すごく怖いというのが表情に表れている。
「大丈夫。そこだと、ママは見えてる。」
 でも、ママを寒いところに出して風邪をぶり返させたくはない。でも、離れるのも不安だ。そこから動けないで、いると、おい、という坊主の声だ。
「心配すんな。こいつは、俺がいいと言うまでは生きてる予定だ。行け。」
 女房の手を掴んだまま、坊主が女房の顔を見て笑う。それに釣られて、ママも微笑んで頷いている。イノベイドのリジェネが見ても、とても温かいものが溢れてくる二人の姿だ。

・・・・あれが、人間のラブラブってものなんだろうな・・・・

 なぜだか、それを見ていると、ママは死なないんだろうな、と、信じられる気がする。そうすると、離れることも、なんとかなりそうだ。坊主に命じられて、リジェネは外へ飛び出していった。とはいっても、数メーターのことだが、それでもニールとしても、ちょっとほっとする。刹那の時も、かなり心配したが、少しずつ距離が取れれば問題はない。庭へと出て来たリジェネは、急いで如雨露で菜園に水遣りをしている。それほど広くはないので、ものの十分とかかる作業ではない。それが終わると、こちらに手を振っている。ニールも、それに手を振り返して、立ち上がる。
「次はなんだ? 」
 ジャガイモが煮えました、と、鍋を指差したら、亭主の手は腕から離れた。玄関で物音がしているから、誰かやってきたらしい。荷物を運ぶ音がして、居間に鷹夫婦が現れた。
「ごめんなさい、遅くなったわ。とりあえず、お弁当買ってきたから、昼は、それで勘弁して。」
 と、マリューが荷物を運んでいる。そういうことなら、温かいものは必要だろうな、と、寺の女房は用意されているテールスープに火を入れることにした。ジャガイモスープは、すでに煮えているので、ミキサーにかければ完成だ。
「腹減ったぁー。」
作品名:こらぼでほすと 風邪4 作家名:篠義