決意は揺れて 5
黄瀬が黒子のことを男前と評していたことを思い出す。女の子に人気が出て、男の子にも嫌悪感を抱かれないタイプだと嬉々として話していた。
そんなところを今発揮されても困るわけで。
『じゃあ、黄瀬くんにも伝えておきますね。十一時までに笠松さんが行かなければ、自動的に僕から伝えることになりますから』
逃げないでくださいね。念押しの言葉に少し前のランチを思い出す。まったく同じセリフを言われても、今回ばかりは本当に逃げられないと感じた。
「……わかった、土曜日に」
『はい』
受話口の向こうで、満足そうに笑う気配がした。