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ペコ@宮高布教中
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大好きな人のお題 ちょっとズレたたとえ話

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大好きな人のお題 ちょっとズレたたとえ話










「――――――え?」
















ちょっとした、話をしよう。


下駄箱の中のラブレターなんてもんは都市伝説だ。
あんなもん実際にあるわけない。
よーく少女漫画とかでさ、可愛い女の子が裏庭に好きな相手を呼び出して「○○君の事好きです。付き合って下さい」ってシーンがある。
アレだって普通に考えればありえないだろ?
可愛い女の子って言うのは自分が可愛いってちゃんと分かっているから、わざわざそんな事をしなくてもその気のあるそぶりを見せれば大概の男は自分から言い寄る。
だからわざわざ告白の為に呼び出してやる必要はないんだ。
もし相手がもの凄い鈍いヤツでも、仲良くなりさえすればメールでも何でも告白する手はあるだろ?
下駄箱にラブレター入れてまで呼び出す必要あるか?
漫画の世界じゃないんだから、よっぽど自分に酔っているとしか言いようがない。
私、『可愛い女の子』を演出しているんだ。
大体からして大和撫子だって絶滅危惧種だろ?
今時慎ましやかで、三歩下がって歩いて、更に才色兼備な美人……いるわけねぇな。うん。
マジない。有り得ない。
自分で言ってて可笑しいって思ったぞオレは。
そんな女いるわけない。
は?何でそんなに女に厳しいかって?
別に厳しいわけじゃねぇよ。
ただ単に事実を言ってるだけだ。
そんな事ない?そんな事ないなんて事がないんだよ!
だーかーらー

「女に夢見てンじゃねーよお前……」
「そうは言いますけどね!ホントに入ってたんスよ!下駄箱にラブレターが!!」
そう言って力説するのはオレの二つ下の後輩
そんでもって目下、オレのカタオモイとか言うヤツの相手だ。
男相手にカタオモイって何よ?
ハッキリ言ってコレこそあり得ない。
見た目だってソコソコだし?強豪って言われている学校でレギュラー張ってるんだからそれなりにモテる。
それなのにどうしてだ?
いや、100歩譲って男が相手だとしてだ……コイツって事が有り得ない。
なーんでコイツなんだろう?
こんな……
「良いじゃないッスかー夢見たってぇぇぇ!!」
「五月蠅いのだよ高尾」
「真ちゃん酷ッ!!」
「いや、酷くねーから。五月蠅いから」
「宮地さんまで酷ッ!!」
「そもそも相談する相手を間違えてると思うけどなオレは……」
「木村さんまで!!」
「とりあえず高尾、外走ってこい10周くらい」
「にぎゃっ!?どうして!?」
「あと宮地もな」
「ちょっと待て大坪!何でオレまで走るんだよ!!」
「………周数増やすか?」
ジロリと睨まれて渋々外に向かう。
まぁ確かに、今は絶賛部活中だけどね!
でも元々の話を持ってきたのは高尾なんだから、高尾だけ走らせりゃいいじゃん。
オレまで巻き添えで走らせるなよ!!
心の中で大坪に向かって文句を言いつつ、隣をトボトボと付いてくる高尾にチラリと視線を向けると何故か目があった。
「……お前の所為だぞ」
「オレは相談しただけじゃないッスか」
「答えの分かりきった相談なんかしてくんじゃねぇよ」
そうだ。
答えの分かりきった相談だ。
「……少しくらいはトキメキにテンション高く挑みたいじゃないッスか」
「挑むなよ!」
「ちぇーそーゆー宮地さんはないんスか?」
軽く口を尖らせながらオレに問いかけてくる。
その口摘んでやろうか、と思わなくもないが……とりあえず、理性で押さえる。
「……グダグダ言ってねーで走るぞ」
外に出て、軽くストレッチをするとオレは高尾を置いて走り出す。
10周とかまぁ、学校周りだから良いけどね!いや、良くないけど……とりあえずとっとと終わらせねぇと自分の練習時間が短くなる。
それにも関わらず高尾は横にピッタリと併走しながらしつこく聞いてきた。
「ないんスかー宮地さーん」
「お前しつこい……」
「だって気になるじゃないッスか!」
「お前の気になるは単純に好奇心だろ!」
「そりゃー好奇心を刺激されますよ?」
「そーかよ。そんなんだから童貞のままなんだよ」
「なっ!!!!そ・そんなことねッスよ」
そんな事あるだろ?どもられても全くもって説得力がない。
「………いっその事付き合ってみたらどうだー」
全く思っていない事を口にしてみた。
そんでそれに傷ついてるオレが居る。
「………えー無理ッスよ」
「手紙くれた子が可愛いんだろ?」
「そうッスけどーオレ今バスケに集中したいし」
「それでも構わないって言ってくるかも知れないぜ?」
ああ、心にもない台詞
別に悲劇のヒロインになりたいわけじゃない。
てか、ヒロインって可笑しいか……いや、そうじゃなくて……
ともかく、男女間ですら恋愛なんて難しいのに男同士で上手くいくはずないし。
その辺の諦めはとっとと付けて終わらせたい。
恋愛なんて面倒だ。
相手の行動一つに一喜一憂するなんてめんどくさい以外の何者でもない。
今はもっと集中しなきゃならない物があるのに……

「宮地さーん……宮地センパーイ!」
「……まだ何かあるのかよ?」
チッと軽く舌打ちすると、走りながら泣く真似をする。
それだけ余裕があるなら先に走って行きゃ良いじゃねぇかよ……
「ちぇーもう少し真面目に相談のって下さいよ」
「断る話に真面目にのる必要ってあるのか?ん?」
「いや……そうッスけどー」
「けど何だ?」
「……センパイは無かったんスか?」
「つまり、付き合って欲しいと言われて付き合った経験か?それとも断った回数か?お前に比べれば多いぜ」
「リアルな嫌みッスね……」
「お前が振ったんだろ」
「いやー断るにしても、どう断ったものかと思いまして……」
「普通に、今はバスケに集中したいから無理つって断れば?」
これはオレも良く使う。
もちろんタダで引かないヤツは「部活が優先でも良いから!」と言ってくるが……そのうち「私と部活どっちが大事なの!?」に変わってくるのを知っているから、今は例え何を言われても全部断る事にしている。
それに、一応好きなヤツもいるし?
「まぁ、いざとなったらそれ何スけど……」
「お前、『けど』が多いな……」
「いや、まぁ……何というか……きっとこれ1枚出すのにも勇気がいったんだろうなぁーとか思うと、単純に断るのも罪悪感があると言いますか……」
「なら付き合えばいいだろ?」
「そうは言っても知らない子だし」
興味のない事には全くもって関心を示さないドライな面を持ち合わせている割には今回は何故か歯切れが悪い。
相手の女が可愛いって言う所もネックにはなっているんだろうが……
「お前ね…「あ・いた」
そう言って高尾はピタリと走るのを止めると、物陰に隠れる様にする。
「お前……別に良いだろ?走ったって……」
つられる様に隠れてみたものの、これはもの凄くマヌケな図だ。
「いや、何か!恥ずかしいじゃないッスか!!」
「そんなの知るかよ」
隠れる必要ねぇだろ。普通に。
前方にいる手紙を寄こした女+その友達数人は楽しそうに笑いながら歩いている。
もちろんこちらに気付いている様子はない。
「で、どれよ?」
何となく気になって聞いて見る。
張り合う気なんてもんは最初から無い。
もちろん女になりたいわけじゃないが……

「でさー出したの手紙?」