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魔法少女まどか★マギカ~マギカ★parallel~ 第1話

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ここでリッカの家族について説明しよう。父親のマークはアメリカ、コネティカット州の旧家の出身。ちなみにリッカが指輪を見つけたのは春休みに父親の実家を訪れた時だ。母親の由夢は地元見滝原の出身で、アメリカの大学に留学していた時にマークと出会った。やがて、マークの入り婿という形で二人は結婚し、一人娘のリッカを儲けた。
リッカは優しい両親の愛情を一身に受けて育ったのである。ダンディーな父親と大和撫子の母親はリッカの自慢だった。

話を戻そう。親子は朝食を食べている。どこにでもある平凡ながらも幸せな朝のひと時だ。

「リッカ、今日から1週間いないけど、大丈夫だね?」
「大丈夫よパパ。ちょっと寂しいけどね。」
父親の言葉に笑顔でリッカは答えた。

「リッカなら大丈夫だな。」
リッカの言葉にマークも満足そうにうなずいた。

「何かあったらスカイプがあるからね。頑張って。」
「心配しないでママ。私はパパとママの娘よ。」
母親の言葉にも笑顔で答える。

今日から1か月、父親はアメリカの大学に出張することになっていた。母親もそれについて行くのだ。しばらくリッカは一人ぼっちだった。

「それじゃあ、いってきまーす!!パパ、ママ、頑張ってね!!」
朝食を食べ終わるとリッカは、カバンを手に元気に飛び出して行った。一面桃色に染まった春の街へ。さらりとした黄金色の髪の毛が朝日に映えていた。
白地に青いラインの入ったセーラーカラーの上着と青色のスカートの制服に身を包んだリッカは、さながら春の妖精のようだった。


「リッカももう中学2年生かぁ・・・。」
マークは元気に駆け出していくリッカの後姿を見つめながら小さく呟いた。
「そうですねぇ・・・。」
由夢も目を細めていた。二人にとってリッカは目に入れても痛くない大事な一人娘だった。


「グッドモーニーング!!」
リッカは自分と同じ制服に身を包んだ二人の生徒を見つけ、手を振りながら駆け寄った。
「おはよ!」
「よっ!」
ショートカットの女子生徒は朝倉姫乃(あさくら・ひめの)、ロングヘアの女子生徒は秋山さら、と言った。

リッカの小学校からの友達で、リッカのご近所さんでもあり、実の姉妹のように育ってきたのだった。

「今日から2年生だねー。」
「後輩入ってくるよ〜。」
「同じクラスだといいね!」

学校までの道中、3人は色々な会話をする。他愛もない会話。いわゆる駄弁りだが、リッカは二人の親友と駄弁っている時間が何よりも好きだった。
やがて駄弁りはリッカの戦利品の指輪に及んだ。

「綺麗ねぇー。シルバー?」
「でもさ、それ屋根裏部屋から持ち出してきたんでしょ?大丈夫なの?」
「大丈夫よ。お宝って程のものではなさそうだし。」
「でもわからないよ。ホラ、テレビでもやってるじゃない。ガラクタが実は何百万ってお宝だったってさ。」
「確かにねー。お宝だったらいいけどさ、もしこれがいわくつきの品だったらどうする?呪いのダイヤとか言うのもあったじゃん?」
「え!?じゃあもしこれが呪いの指輪ならリッカもう死んじゃうじゃん!?」
「呪いのダイヤって・・・リッカそういうの好きねーホント。」

他愛もない会話が続く、とここでリッカはふと言った。
「ね、ね、もしかしたらさ、この指輪を着けたら魔法使えるようになったりとかしないかなぁ?」

「んなこと、あるわけないでしょ。」さらは若干呆れ気味だ。
「あるんじゃない?リッカ、前世は魔法使いだったって設定じゃん?」姫乃はにやにやしながら言う。

「設定言うなー。ホントよそれ。私、前世は魔法使いだったんだから!」リッカは両手を胸の前でぐーにして怒ったように言う。

「戻ってこいよ現実に・・・。」さらが言う

「何言ってるのよさら、私はいつだって現実に足をつけて・・・。あっ!今日生徒会の仕事があるんだった!かったるいけど行かないと!ゴメン後でね!」
リッカは腕時計を見て生徒会の用事があったことを思い出し、若干慌て気味に二人から離れて駆け出した。

「なーにやってんのよー?」
「あとでねー!」

その姿を目で追いながら姫乃はポツリと言った
「アレ、さえなければ完璧なのにね。」

「本当、完璧なのにね。天は二物を与えずってヤツ?」さらも言う。

やがて二人も学校に着いた。白亜の立派な校舎。私立風見ヶ丘学園、見滝原市内でも有数の進学校だ。

誰が見ても惚れ惚れするような美貌に恵まれ、成績優秀でスポーツも万能。その上明るく親しみやすい性格で、学園の男女問わず好かれているリッカはまさに「学園のアイドル」だった。今季は生徒会長も務めることになっている。そんな完璧美少女に見えるリッカではあったが、実は夢見がちなロマンチストで、結構子供っぽいところもある。
また、ミリタリーやオカルトが好きで結構その方面に詳しい。そう、リッカは俗にいう「中2病」であり、そう見ると結構残念な娘であった。もっとも、本人は残念などとこれっぽっちも思ってはいないのだが・・・。

とはいえ、芳野リッカがどこにでもいるような女の子であることに変わりはなかった。

今日は始業式。抜けるような青い空に、満開の桜の花びら・・・。全てが新入生はもちろん、進級した生徒たちを優しく包み込み、祝福していた。
リッカは桜の春が大好きだった。


優しい両親、素敵な友達、頼れる先生、楽しい学校、住みよい街・・・。
「こんな平凡な毎日がずっと続いたらいい」
いちいち口には出さなくてもそれは、リッカの切なる願いだった。いや、リッカだけではなく、どこの誰にも共通の願いだろう。
そして、その願いはいつまでも続く・・・口には出さなくとも、リッカはそう信じて疑うことはなかった。