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魔法少女まどか★マギカ~マギカ★parallel~ 第3話

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魔法少女まどか★マギカ〜マギカ★parallel〜

第3話「魔法少女」

そう、リッカは「変身」していた。アニメとか、マンガとか、ドラマとか、映画など架空の世界の中でしか起こらないようなことが実際にリッカの身に起こったのである。
 

その間にも怪物は黒いツタで少女を弾き飛ばした。「きゃああああああああ!!」少女は壁に叩き付けられ、崩れ落ちる。怪物は黒いツタで少女を縛り上げる。
少女は 顔を苦痛に歪ませて逃れようとするが、ツタの締め付けは強まる一方だった。

「ぐうっ・・・。まさか・・・こんなところで・・・?・・・ま・・・どか・・・、どうして?・・・過去には戻れないし・・・、もう、ダメなの・・・?」
少女は絞り出すように言った。怪物に何度も壁に打ち付けられ、ツタで締め付けられ、意識が朦朧としはじめているようだった。
怪物は少女をツタで絞め殺すつもりのようだ。

リッカの体が反射的に体が動いた。
もはや「驚く」とか「超常現象」などという言葉だけでは表現しきれないような、普通なら絶対にあり得ないような異常現象がリッカの身に起こっている、にもかかわらずリッカは不思議と何も感じなかった。誰かに教えられた訳でもないのに、体が反射的に動いたのである。まるで別人がリッカに乗り移り、リッカの体を動かしているようだったが、不思議とリッカは違和感を覚えなかった。そして、次の瞬間には、素早い動きで怪物との距離を詰めると、手に持った大剣で少女に縛り上げていた幾本もの黒いツタをばっさりと斬り捨てていた。
 
怪物は新たな敵の登場に一瞬怯むようなそぶりを見せたが、すぐに黒いツタを、今度はリッカに向けて伸ばしてきた。だが、リッカはまるで踊るような鮮やかな動きで襲いかかるツタを躱し、大剣を閃かせて次々に斬り捨てていく。当然リッカは今までに剣で戦ったことなどない。まして、こんな「怪物と戦う」ことなど実際に体験したためしがない。だが、的確に体を動かし怪物の攻撃に対処していく。リッカに次々に黒いツタを斬り捨てられ、怪物は次第に劣勢になってきた。

リッカは何も考えず、本能のままに怪物を追い詰めていた。そして、リッカは高く跳びあがると、大剣を両手でしっかりと握りしめ、大上段に振りかぶり、怪物を一閃した。
高所からの一撃で真っ二つにされた怪物は、耳をつんざくような轟音をあげて大爆発をおこし、消え去っていた。

「勝った・・・。」
放心状態でリッカはぽつりと呟いた。そして、そこでぷっつりと意識が消えた。気を失ったリッカは糸が切れた操り人形のようにその場にばったりと倒れこんだ。

いったいどれくらいの時間がたったのだろう。リッカは不鮮明な夢を見ていた。

2人の女の子の笑い声が聞こえた。それはとても楽しそうな笑い声だった。誰の声なのかわからなかったが、リッカにはそれが不思議なほどなつかしく感じ、胸を締め付けられるような気がした。
 

そして、目を覚ました。

「目が覚めた?」
誰かの静かな声が響く。女の子の声。
リッカがまだ重たい瞼を開けると、そこにはあの長い黒髪の少女がベットの横に置いた椅子に座り、リッカを心配そうに見つめていた。理知的な鋭い光をたたえた瞳が、ミステリアスな印象を与える少女だ。今は黒とグレーと白の不思議な衣装ではなく、赤い大きなリボンのついた白い上着と、黒いチェックのスカートの制服を着ていた。ここはリッカの家、リッカの自室だった。リッカは、知らないうちに自分のパジャマを着させられ、自分のベットで寝かされていた。頭には濡れタオルが乗せられている。
 
「ふぇ?え?え!?何!?何!?何なのよこれ!?ここは!?わ、私は一体!?か、怪物は!?うっ!あうっ!!」
自分の置かれている状況が呑み込めず、若干パニックを起こしたリッカの頭に激痛が走る。

「大丈夫!?もう大丈夫だから、落ち着いて。」
少女はリッカを再びベッドに寝かせる。
「落ち着いて。大丈夫、あなたに危害は加えないわ。ここはあなたの部屋。だから安心して。」
少女はなだめるように言う。

やがて頭痛もおさまり、意識がはっきりしていく。意識こそはっきりしてきたが、リッカは依然自分の置かれている状況が把握できずに混乱していた。
少女はコップに水を入れて持ってきた。

リッカが水を飲んである程度落ちついたのを見計らい、少女は静かに言った。
「勝手に部屋にはいったことはごめんなさい。謝るわ。さっきは助けてくれてありがとう。私は暁美ほむら。見滝原市立見滝原中学校の2年生。
えっと・・・芳野・・・リッカさん?こんな時に申し訳ないけど、幾つか質問させてもらってもいいかしら?」
『暁美ほむら』と名乗った少女はリッカに話しかけた。

「え・・・、ええ。どうぞ。」
リッカはまったく状況がつかめず混乱したままだったが、ほむらの鋭い視線に射抜かれ、リッカは素直に頷く。

「まず・・・、あなた、魔法少女よね?」
ほむらは静かに尋ねた。

「あの・・・。すみません・・・。何のことですか?魔法少女?一体全体何のことですか?」
いきなり訳の分からない質問をされたので、リッカは驚いて聞き返した。

「ふざけないでちょうだい。」
ほむらは若干語気を強めたが、わからない物はわからないんだからしょうがない。
「いや、本当にわかりません。」
リッカの様子からほむらはリッカが質問の意味を本当に理解できていないのだとわかり、驚いているようだった。

「え!?あなた、魔法少女じゃないの!?でもさっきあなた確かに変身して魔女を・・・」」
ほむらの顔には驚きの色が明らかに現れていた。

「魔法少女?魔法少女って、一体何なんですか?アニメじゃあるまいし。私は芳乃リッカ、風見ヶ丘学園中学の2年生。どこにでもいる女子中学生。
確かに私の前世は魔法使いだったけど、現役じゃないわよ。」
リッカは戸惑った。どう考えても意味不明だが、このほむらという少女の顔はまじめそのものだ。ふざけている、という感じではない。
頭がおかしいのか?と思えば、そうでもなさそうだ。

このような状況でも中2病気質丸出しのリッカの受け答えにツッコミを入れるでもなく、ほむらは難しい顔で少し考えた後
「・・・わかったわ。質問を変えるわね。覚えている範囲でいいから、あなたが気を失うまでに何があったか話してくれるかしら?何かいつもと変わったことが起きたりはしなかった?」と尋ねた。

リッカはポツリポツリと話し始めた。学校帰りに、ほむらが学生証を落としたので、廃墟まで追いかけると、異世界に入ってしまったこと。そこで、ほむらが怪物と戦っている現場に遭遇したこと。そして、頭の中に指輪をつけろ、という声が響いたので、指輪をはめたこと。その指輪についてのこと。それはアメリカの父親の実家の屋根裏部屋で見つけたこと。そして指輪をはめると自分が変身し、無我夢中で怪物と戦ったこと。を話した。1時間弱くらいかけて話しただろうか。

リッカの話を聞き終えたほむらは頭を抱えた。
「一体どういうこと?でもあなたは魔法少女のはずよ?あなたは契約して魔法少女になったんじゃないの?」
ほむらが尋ねたその時だった。