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魔法少女まどか★マギカ~マギカ★parallel~ 第4話

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魔法少女まどか★マギカ〜マギカ★parallel〜

第4話「動き出す歯車」

「今、あなたに用は無いわ。葬られたくなければ、今すぐここから消えなさい。」
そう強い口調で言い放った後、ほむらはどこからともなく金色の拳銃を取り出すと、その白い生き物に銃口を向けた。

「やれやれ、わかったよ。暁美ほむら、君は本当に短気だねぇ。行けばいいんだろ?しかし、時空遡行者でも充分にイレギュラーなのにね・・・。ああ、でも今君はどうやら時間を遡行できないようだけど。まさか君の上を行くイレギュラーが出現するとはねぇ。僕と契約せずに魔法少女になるとは・・・。まったく訳が分からないよ。もっとも、何が起こっても驚くには値しないけどね。魔法少女は常識を超えた存在だからねぇ。」
その生き物は呑気な声でそう言い捨てると、消えて行った。

「な、何・・・アレ・・・?」
リッカは恐る恐るほむらに尋ねた。

「あなた、イン・・・、キュゥべぇも知らないの!?・・・本当に何も知らないの?じゃあ本当にあなたは契約していなって言うの?そんなの在り得ないわ!?」
ほむらはさらに驚いたように言う。

「だから、さっきから一体何がどうなっているんですか!?契約!?何の契約ですか!?私には本当に何もわからないわ!!分からないって言ってるじゃない!!」
ついにリッカは叫んだ。

ほむらは少し目を閉じて深呼吸すると、リッカの目をまっすぐに見据えて言った。
「わかった。芳野リッカさん。いい?あなたは魔法少女よ。あなたがどういう経緯で魔法少女になったのか、私にもわからない。
でも、こうなってしまった以上、あなたは知る権利・・・いいえ。知る必要がある。今から私が話すことを、よく聴いて。」

「わ、わかったわ・・・。」
リッカは逆にこの、ほむら、という少女を質問攻めにしてやりたかったが、ほむらの真面目な顔を見て、おとなしくそう答えた。

ほむらはゆっくりと話し始めた。
「さっきあなたが見た怪物は、『魔女』。わかりやすく言うと、人々の怒りや恨みなど負の感情から生まれ、世の中に害をもたらす存在よ。理由のはっきりしない事件や事故の多くは、これの仕業よ。魔女は『結界』という迷宮と、『使い魔』という家来を作り出して隠れているの。だから普通の人にはわからないの。さっきのあの空間が『結界』よ。」ほむらは話を続ける。

「その『魔女』という存在と戦うのが私達『魔法少女』。普通魔法少女は、あの『キュゥべぇ』に何か1つ願い事を叶えてもらう代わりに、『魔法少女』として戦う義務を負うの。」

おそるおそるリッカは尋ねた。
「願い・・・って、何でも叶うんですか?」

すると、ほむらは少し考えてから、
「ええ。叶うわ。どんな願いでも、どんな奇跡でも。」
と答えた。

リッカは何も言えなかった。ほむらは話を続ける
「あなた、本当に契約はしていないのよね。普通では絶対にありえないことよ。でも、あなたは確かに『魔法少女』よ。ほら、その指輪・・・これがその証拠よ。」

ほむらはリッカの手を取った。指輪はリッカの左手の中指にはまっていた。そして、淡い空色の光を放っていた。リッカが指輪をつけている指の爪には、空色の花びらのような模様が浮かんでいた。ほむらは自分の手も出して見せる。なるほど、ほむらの指にもリッカの指輪と同じような指輪がはめられている。そして、指輪のはまっている指の爪には、紫色のダイヤ型の模様が浮かんでいた。さらにほむらは指輪から手のひらに、紫色に輝く卵形の物体を出す。そして、リッカの手を取ると、リッカの手のひらにも同じような物体を出現させる。リッカの手のひらの上でその卵形の物体は空色の光を発して輝いていた。

「あっ・・・。」
リッカが息をのむ。

ほむらはさらに話を続ける。
「これは『ソウルジェム』。魔法少女になった女の子が契約によって生み出す宝石。魔力の源であり、魔法少女であることの証。・・・さっきその指輪についての話は聞かせてもらったけど、今日からは何があっても絶対に指から外さないで。いい?」
ほむらがリッカを見る。真剣な瞳。リッカは黙って頷く。

次にほむらはポケットから黒い宝石のようなものを取り出した。
「これは『グリーフシード』魔女の卵」
「ま、魔女の卵!?」
リッカは驚いてその黒い石を見つめる。

「この状態では無害だわ。魔女を倒すと、魔女はこの状態に戻るの。」
ほむらはそう言ってリッカののソウルジェムにグリーフシードを近づける。すると、二つの石は共鳴するような音を立てて輝き、ソウルジェムから黒い雲のようなものが流れ出てて、グリーフシードに移っていく。そして、リッカのソウルジェムはさっきよりも輝きを増していた。

ほむらは自分のソウルジェムにもグリーフシードを近づけながら言う。
「・・・驚いた。あなたはさっきあれだけの戦い方をしたのに、あまり魔力を消耗していないようね。あなた、かなり強い魔力を持っているみたいね。で、魔力、と言っても無限ではないわ。グリーフシードには消耗した魔力を補う働きがあるの。魔女を倒した見返り、と言ったところかしら。・・・説明することはこれくらいかしらね。何か質問はある?」

「わ・・・、私は・・・、そ、その、魔法少女で、これからあの、魔女、って怪物と戦っていかなければいけない訳?」
リッカはほむらに尋ねた。声が若干震えていた。

ほむらは冷静に言った。
「そう。どんな理由かはわからないけど、あなたは魔法少女になってしまった。
この世界について知り、足を踏み入れてしまった以上、あなたは魔女と戦わなければいけない。」

「そ、そんな・・・。な、なんで、なんで私が・・・?」
つい2,3時間前までは、これと言って変わったことのない、普通の日常を過ごしていた。確かにリッカは魔法の存在を信じて疑わず、前世は魔法使い、なんて言っていた。だが、今、リッカに突きつけられた事実はあまりに過酷だった。『嘘だ』と全力で否定したかったが、こうも現実を突きつけられてはどうすることもできなかった。

何かがリッカの中で音を立てて崩れた。それは『いつまでも続いてほしい』そう思っていた平凡でも幸せな日々が、音を立てて崩れ去った音だった。
リッカはそれがはっきりと理解できた。一体何の因果か、『魔法少女』とやらになってしまったリッカはこれから、さっきのような恐ろしい場所で、さっきのような恐ろしい怪物と戦っていかなければいけないという義務を負ってしまったのだ。いきなり自分に課せられた義務は、あまりに大きく、恐ろしいもののように思えた。

リッカの胸に言葉では言い表せない感情がこみ上げ、涙がぽたぽたとリッカの目から転がり落ちた。
明るく快活なリッカはめったなことでは泣かなかった。だが、自然と涙があふれ出できた。そして、ついにリッカは声を上げて泣き出していた。

「あなたの気持ちはよくわかるわ。でも泣かないで。泣いてもどうにもならないわ。どんな理由であってもあなたは魔法少女になってしまった。だから、あなたはこの義務から逃れられないの。ほら泣かないで。あなた、せっかく可愛いのに・・・泣いたら台無しよ。」
ほむらはリッカに寄り添い、ハンカチでリッカの涙を拭きながら優しく言った。