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魔法少女まどか★マギカ~マギカ★parallel~ 第6話

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魔法少女まどか★マギカ〜マギカ★parallel〜

第6話「遭遇」
 
 リッカとほむらが『芸術家の魔女』と戦っていたその頃。

 見滝原市の中心部からかなり離れたところにある郊外のとある廃工場。閉鎖されてから久しいその廃工場に、なぜか多くの人々が向かっていた。その人々は、何やらブツブツと呟きながらふらふらとした足取りで廃工場に向かっていた。誰がどう見ても尋常ならざる光景だ。やがて、廃工場に集まった人々は、その一室に輪になって座った。人々の中の一人の男が、人々の輪の中央にバケツを置き、そこに液体を入れた。それは・・・トイレ用洗剤。また、もう一人の男が、漂白材のボトルを手に立ち上がった。ご存知のように、酸性のトイレ用洗剤に、アルカリ性の漂白剤を混ぜると、化学反応により、有毒の塩素ガスが発生する。このままではこの人々は全員死ぬことになる・・・。
 
 その時だった。人々が集まっていた部屋のドアが吹っ飛んだ。次の瞬間、赤と青の閃光が部屋に飛び込む。赤い閃光の正体は、長い髪を頭上でまとめ、真紅のノースリーブに身を包んだ少女だった。その少女は男からボトルを奪い取ると、男の腹に蹴りを入れて気絶させる。男は声も上げずにその場に崩れ落ちた。もう一つの青い閃光の正体も少女だった。こちらはショートカットの髪に、目にも鮮やかな白いマントと青いミニスカートの衣装。赤い服の少女が雄々しく、猛々しい印象を与えるのに対し、こちらの少女は、勇ましくも可愛らしい印象を与える。ショートカットの少女はバケツを蹴飛ばした。バケツが派手な音を立てて倒れ、中の液体が床にぶちまけられた。その間にどうやったのか、真紅のノースリーブの少女はその場にいた人々を全てを気絶させていた。すべては一瞬の出来事だった。
 
 「さすがだね、杏子。いつもながら仕事が早い!」
ショートカットの少女は、にやりと笑みを浮かべて赤い服の少女に声をかける。

「こんくらい朝飯前よ!しかし、間一髪だったな。もう少し遅かったら大惨事だったぜ・・・!さすがに家の近所で大事件を起こされちゃあ、たまったもんじゃねぇからな。・・・思った通りだぜ。見ろよさやか、コレ・・・。」
 
 杏子、と呼ばれた赤い服の少女は、気を失って倒れている人の首筋を指さす。そこには不思議な文様が刻まれていた。
 
「『魔女の口づけ』・・・。間違いないね。そうとわかったら、さっさと片付けて帰ろっか。」
 
 さやか、と呼ばれた少女が答え、隣の部屋に続くドアを蹴って開ける。二人の少女が部屋の中に入るとすぐに、周りの景色が歪み、崩れ始める。すぐに廃工場の一室は不気味な笑い声の響く異世界と化していた。どこからともなく、大きな羽の生えたテレビモニターのような何かと、人のような形をした何かが現れ、二人の少女を取り囲む。
 
 「『ハコの魔女』か・・・。使い魔と遊んでる暇はねえぞ!さやか!」
杏子は不敵な笑みを浮かべて言うと、どこからともなく長い槍を取り出して、くるりと一回転させる。

「そうね、雑魚どもに構っている暇はないよね!」
一方さやかは刀を取り出すと、それを両手に構えた。

2人の少女は猛禽のごとく異形の物に襲い掛かった。遠目に見ると、赤と青の閃光が、稲妻のように駆け巡っている光景にしか見えない。二人の少女は、目にもとまらぬスピードで、その異形の者達を一方的に薙ぎ払い、斬り伏せ、突き倒していく。圧倒的だった。

2人の少女は一瞬のうちに魔女を追い詰めてしまった。使い魔を一瞬のうちに壊滅させられ、魔女はうろたえ、逃げ腰になっているようだった。

「逃がしはしないよ!」
さやかが双剣を閃かせて魔女に突進する。魔女の周りを青い閃光が走ったかのように見えた次の瞬間には、魔女はずたずたに切り裂かれ、瀕死の状態になっていた。

「杏子!」
さやかが杏子に目くばせする。

「おうよ!うおりゃああああああああああああ!!」
赤い服の少女は力強く頷き、槍を手に高く跳び上がり、気合いと共に魔女を串刺しにする。
必殺の一撃。槍は魔女を見事に貫き、魔女は耳をつんざく轟音と共に大爆発した。同時に結界も消滅する。

「一丁上がり!」
青い服の少女は満足げに言った。手には鈍く光るグリーフシードが握られている。

「ふ?。一仕事したら腹減ったぜ。帰ろうぜ。」
「そうだね。長居は無用!」
いつの間にか赤いリボンが特徴的な紺色のブレザーの制服姿になった二人の少女はその場を離れた。

『不審な物音がする』という近隣住民からの通報を受けた警察がこの場に到着したのは、それからまもなくだった。

翌日、見滝原市中があるニュースの話題で持ちきりになっていた。街はずれの廃工場の一室で、互いに面識のない大勢の男女が気を失って倒れているが見つかったのである。そこでは塩素ガスを発生させようとした形跡があったが、この事件に巻き込まれた人々は誰一人何も覚えていなかったのである。新聞も大々的にこの珍事を取り上げ、テレビでは特集が組まれた。風見ヶ丘学園でも例外ではなかった。教師たちは生徒達に注意するようにと、口をすっぱくして言った。また、注意を促すプリントが生徒に配られた。生徒たちの間でも話題になり、様々な憶測が流れた。

「リッカはどう思う?テレビに出てた専門家は集団幻覚じゃないって言ってたけど・・・?」
帰り道、さらがリッカに尋ねた
「確かにそう考えるのが妥当だとは思うけど、宇宙人の仕業という可能性もあるわね。」
リッカは言う。
「いや、さすがにそれはないっしょ。リッカ先生・・・。」
姫乃が笑いながら言う。

さら、姫乃の2人とも、リッカとは長い付き合いだ。リッカのオカルト好きは充分に理解している。

「充分にあり得るわ・・・。確かラオスでも似たような事件があってね・・・(以下略)」
リッカは自説を長々と展開する。

しかし、かつてのリッカなら、宇宙人の関与と信じて疑わなかったが、今は違った。事件の話を聞いたとたんに、リッカにはすぐに魔女の仕業だと分かったからである。宇宙人よりもよっぽどたちが悪い。リッカは顔では笑っていても、心の中では戦慄していた。魔女の魔の手は、すぐ身近なところにあるのだと実感させられる。下手をすれば、本当に自分の大事な親友にも害が及びかねない。リッカは改めて緊張するのであった。

リッカが帰宅した直後、リッカの携帯が鳴る。ほむらからメールが来ていた。

『今日の午後5時半、音羽公園東入口に』

と簡潔な文面。音羽公園、とはリッカの家からもほど近いところにある割と大きな公園である。桜がきれいで、お花見スポットとしても人気が高い見滝原市民の憩いの場である。

「やっぱり・・・思った通り・・・」
リッカは呟くと、『了解』と返信した。

午後5時半。リッカが待ち合わせ場所の音羽公園に行くと、ほむらが待っていた。

「今日の事件、あれは間違いなく魔女の仕業。でも、これには魔法少女も関与してるわ。でなければ大惨事になってた。」

ソウルジェムを手のひらに乗せてパトロールしながら、ほむらがリッカに言う。

「見滝原には私たちのほかにも魔法少女がいるの?」
リッカはほむらに尋ねた。ほむらは少し考えてから答えた。