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幸福な少年? (続いてます)

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そもそも静雄と幽の会話だって、あの人の盗聴を集めておいたファイル集データーを盗み、こじ開けて見つけた物だ。

セルティや新羅が施してくれる『餌』程度では全然足りなかった。二人は基本温厚な人だったし。
気が狂いそうな彼の『飢餓』を癒すには、【自動喧嘩人形】と呼ばれるぐらい、強烈なあの人がどうしても必要だった。

それで家政婦のダブルブッキングを装って静雄さん家に潜り込み、極貧苦学生を免罪符に掲げ、雇って貰うつもりだったのに。
何と本来の家政婦など一度も彼の家で鉢合わせた事なんてなく、今日まで怪しまれる事無く、彼のお世話を無事にする事ができたのだ。


でも、約束の一ヶ月目まで後5日。
静雄の弟さんが帰国すれば、今回の嘘もばれてしまう。


「大丈夫。静雄はああ見えて、人情味がある奴だから、正直に理由を話せば、直ぐに許してくれると思うけどなぁ」
「本当にいい人ですよね静雄さん。だから駄目なんです。ああいう薄幸で天使のように善人な人は、利用しちゃいけないんです。僕の矜持です、駄目絶対」
≪だったら臨也の所へ戻ったらいい。いいぞ、今回だけは許す!! あいつならどんどん不幸にしてやれ!!≫

大きな発泡スチロールの箱を小脇に抱え、PDAを景気良く振り回しながらセルティが戻ってきた。
「駄目です。まだあちらの方が一枚上手です。ネット越しのハッキング対決だったら100戦戦ったって一つも勝ちを与えない自信はありますけど、真っ向から不幸にするつもりで近づいたって、逆に僕が売り飛ばされかねません」

悔しいが、帝人は自分の実力を冷静かつ客観的に分析する能力もピカ一なのだ。
ここに住まわせて貰って、どんどん骨と皮だけに痩せていく姿をつぶさに見るしかできなかったからこそ、セルティも何も言えなくなった。

「僕もまだ、自分の変化に追いついていないんです。でも、いつかきっとこれはコントロールできる筈だから。そしたら正臣や静雄さんの被った被害分を纏めて、臨也さんにぶつけてやりますよ。僕はもうそんな事しか静雄さんにできない」
≪いいや、まだまだ幽君が帰ってくるまで数日ある≫
「そうだよ。静雄に一杯美味しいものを作っておやり。食材ならいくらでもたっぷりある」
≪あ、小さい発泡スチロールも見つけた。これに飛騨牛、静雄の分を小分けして持っていくといい≫

大きな箱の蓋を開ければ、マトリョーシカのように、帝人が持ち運べるぐらいの大きさの綺麗な箱が入っていた。
「なら、もう直ぐ幽さん帰ってくるし。弟さんが好きだって言う美味しいカレーを大量に作りましょう。……あ、でもお肉が勿体無いかな?」
「いいんじゃない。どんな食べ方だって喜ばれれば。どうせ親父が送ってきたものだし、惜しくない惜しくない」
≪うんうん。冷凍しても長く持つし野菜も沢山取れる。そういえば、ベランダの帝人が栽培してるトマト、いくつか完熟してたぞ≫
「わーい、嬉しいです。トマト今高いし、買わずに済みます!!」

ここに引越してきてから、ベランダで作らせて貰っているトマトときゅうりを、うきうきと3つづ収穫する。
微笑ましい。

側にいられる最後まで、静雄に尽くしまくろうと決意する帝人に、新羅もセルティも温かく見守る。

だが、3人は知らなかった。
幽が帰国を早め、すでに帰ってきており――――
静雄が激怒している事に。