二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

FATE×Dies Irae3話―6

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
「くっ……!」
 もう幾度、吹き荒ぶ突進の余波に煽られ、無様に地を転がったことだろう。
 天翔ける白馬の猛攻の前に、セイバーは為す術も無く一方的な防戦を強いられる。
「あなたもいい加減しぶといですね、セイバー」
 すかさず起き上り剣を構えるセイバーの頭上から、ライダーの冷えきった声がふりそそぐ。
「この子を相手にここまで逃げおおせたのは大したものですが、その先はどうするつもりです? いかにあなたのステータスが飛び抜けていようとも、私にこの子を出させた時点で剣士であるあなたに勝ち目はない。それはもう、十分に痛感したのではありませんか、セイバー?」
「さて、それはどうかな? 勝ち誇るのはまだ早いぞ、ライダー」
 上空のライダーを、凛然と睨み上げるセイバー。
 空を舞う天馬の背に跨るのは、黒衣のサーバントただ一人。
 そこにマスターの姿はない。
 おそらく最初に校舎から離脱した際に、どこか目立たぬところに降ろしてきたのだろう。
「減らず口もそこまでです。次で決着をつけましょう、セイバー。アーチャーとて、いつまでも手をこまねいてはいないでしょう。横槍を入れられる前に、あなたにはここで消えてもらいます」
 天馬がはばたき、空高く翔けのぼる。
 高度を上げての急降下。
 宣言どおり、ライダーは次で勝負を決する気だ。
「望むところだ、ライダー」
 セイバーは下段に剣を構え直し、真っ向から迎え撃たんと、戦意を研ぎ澄ます。
 セイバーとて、ただ無策に逃げ回っていたわけではない。
 どれだけ速かろうと、こう何度もその速度を体感させられれば、目も身体も慣れるというものだ。
 直線的な動きしかできないとなればなおさらである。
 セイバーの狙いはただ一つ。
 天馬の突撃を紙一重で掻い潜り、すれ違いざまにライダーの首を斬り飛ばす。
 無論セイバーとて無事では済むまいが、ライダーを斃すにはそれしかない。
「はぁあああああああああ!」
 ほとばしる裂帛の気合いが、天馬とともに空高くから駆けおりる。
 迫る天馬の疾走は過去最速。だが、想定の域を越えるものではない。
 どれだけ速かろうが所詮はストレート。
 これだけ条件が揃ってなおタイミングを合わせられないようでは、セイバーのクラスは務まらない。
(もらった!)
 セイバーが勝利を確信したその瞬間、


「ベルレ――」
「!?」

 
 耳朶に届く魔性を帯びた言霊に、セイバーは愕然と目を剥いた。
 真名開放。
 セイバーは事ここにいたってようやく、己の思い違いに気がつく。
 セイバーは今この瞬間まで、天馬こそがライダーの宝具だと思い込んでいた。
 だが、ライダーが天馬を召喚したあの時、黒衣のサーバントは真名を口にはしていなかった。
 すなわち彼女の宝具は天馬とは別にあるということであり――


「フォーン!」
 そしてこの土壇場において解き放たれたライダーの切札は、一体いかなる効用によるものか、天馬の飛翔速度を一息のうちに倍化させた。
「……侮りましたね、セイバー。言ったはずです。次で決めると」
「――っ!?」
 やられた。
 ここにきての突然の急加速。
 完全にタイミングを外された。
 紙一重で掻い潜る?
 すれ違いざまに斬り捨てる?
 馬鹿な。もうそれどころの話ではない。
 避けられない。直撃する。
 セイバーは為す術も無く身を凍りつかせ――
 

『――<無限の剣製(アンリミテッド・ブレードワークス)>』




      ◆◆◆


「なっ……!」
 今まさにセイバーを跳ね飛ばそうとしていたその瞬間、いずこともなく噴き上がった一面の炎がライダーを呑み込んだ。
 炎につつまれたのは、わずか一瞬。
 だが、炎を突き抜けた先でライダーを待ち構えていたのは、さらなる驚愕の光景だった。
「これは……!?」
 燃えるような紅蓮の空。果てなく広がる乾いた荒野。
 空では大小様々な歯車が軋んだ音を立てながら回転し、地にはおびただしい数の剣が、さながら墓標のごとく突き立っている。
 幻覚? ――違う。
「固有結界……!」
 心象世界を具現化する大魔術。
「あなたの仕業ですか、アーチャー」
 眼下の荒野に赤衣のサーバントの姿を見咎め、ライダーはそう確信した。
「いかにも」
 頷くアーチャーは、徒手空拳でライダーを見上げている。
「本来はこんな緒戦で使う気はなかったが、貴様の天馬と宝具に対抗し得る武器は生憎これしか無くてね。君の宝具は察するにその手綱か。なるほど、騎乗対象のポテンシャルを引き出す宝具か。効果そのものは地味だが、その天馬と組み合わせれば、威力は絶大だ。攻撃面は言うにおよばず、不利になれば足にものを言わせて逃げればいい。ふむ、なかなかどうして侮れんな。だがここは私の世界だ。今さら逃げだすことはできないぞ、ライダー」
「その必要はありません、アーチャー」
 応じるライダーの声色からは、すでに動揺の気配は失せていた。
 固有結界。
 魔術工房など比較にならない、アーチャー(敵)のテリトリー(領域)。
 アーチャーの法が支配する最悪の死地。
 だがライダーは己が勝利を疑わない。
 この世界がどのような法則に支配されていようと関係ない。要は、それに絡め取られる前に駆け抜ければいいだけだ。
「その意気や良し。ならば――」
 さながら指揮者のごとく、おもむろに片腕を上げるアーチャー。
 その動きに呼応するように、荒野につきささっていた無数の剣が、ふわりと宙に浮かび上がった。
 その数ゆうに一○○以上。浮かび上がった剣のすべてが、その切っ先をライダーへと向ける。
「これは……」
 だが、ライダーの驚愕は、剣の数ばかりが理由ではない。
「そんな……なぜ宝具がこんなにも……!?」
 信じられない。
 宙に浮いているものだけではない。
 荒野に突き立つ数多の剣。
 そのすべてが名だたる聖剣魔剣の数々だった。
「あなたは一体……」
 呆然と呟くライダーに、アーチャーを失笑をもって応える。
「愚問だな。サーバントに向かって、その問いは無粋というものだろ、ライダー。さて――」
 口の端から笑みを消し、
「では始めようか、ライダー。何、事は一瞬だ。セイバーと違って、私にはその天馬の突貫を躱すだけの速さはないのでね。私の剣製を躱しきれれば君の勝ち。できなければ私の勝ち。実にシンプルで分かりやすいだろう」
「ええ、望むところです、アーチャー」
 アーチャーが己の世界に絶対の自信を持っているように、ライダーもまた己が愛馬に全幅の信頼を寄せていた。
「行くぞ!」
「――行きます」
 ライダーは手綱をきつく握りしめ、アーチャーは指揮者のごとく掲げた右手を鋭く振り下ろす。
 それが合図だった。
 ほとばしる純白の彗星を、天を目掛けさかしまに降りそそぐ流星群が迎え撃つ。
 そして――


      ◆◆◆


「――そして今ここに、第一のスワスチカが解放された」
 謳うように。讃えるように。影が嗤う。
作品名:FATE×Dies Irae3話―6 作家名:真砂