とある2人の無能力者5話
死角…というものがある。
人間的意味合いではなく機械によるセキュリティ的意味合いでだ。
人が引き起こす犯罪を監視、または証拠としてそれを記録するカメラがあちこちの店内や住まいに設置されだしたのは既に何十年も前の話だ。機械によって保たれる秩序。
学園都市もまたこれらの恩恵のもとに鎮座している。完璧なセキュリティに守られた絶対の要塞…と言っても過言ではない。
だがあくまでもそれはほとんどがという意味で学園都市もそれなりに広い都市だ。
こうも広いと必然的に死角は存在してくる。
言い換えればそこはほとんど誰の目にも触れない場所というわけで、まさに奴等が行動するには最適の場とも言えよう。
奴らが地裏を近道として利用している学生を対象に、もっと言ってしまえば能力者を集団で襲撃するということはよくある話でジャッジメントでもこの手の事件は日常茶飯事のように対処している。
「………」
そんな学園都市の死角のひとつ。
一般人なら普段近づかないような路地裏に彼女は立っていた。
今はちょうど昼前。
街にも一番活気が湧く時間帯。
ただ何もせず立っているわけではない。
その目は路地裏の奥、はたまた今まで自分が歩いてきた通路に向けられ何度も耳をすませながら彼女は探していた。
「……、いない」
ぼつりと。
彼女はそう呟いた。
そう。
いないのだ。
いつもなら奴らの一人や二人くらい見かけてもいいくらいなのに。
確かにこういう場所は普段から暗くてジメジメしていて良い印象など無かったが、
ここまで静かだと流石に不気味というものだ。
彼らは文字通り消えてしまった。
「スキルアウトが…1人もいないなんて」
どうして?という疑問は胸中にとどめた。
だいたいの予想がついていたからだ。
今回の事件にはいずれも共通点があった。
事件の被害者がレベル0、細かく言えばスキルアウトのみだということだ。
どうして彼の標的の的となるのがスキルアウトなのか。
ただここまでの被害者が出ているのだ、流石のスキルアウトも外出を控えざるをえないだろう…というのが普通の考えなのだろうが彼らに常識は当てはまらない。
自分たちを襲ってまわっている奴がいる、なんてことを知ったら必ずその報復に出るような奴らだ。
正直な話。
スキルアウトが姿を消し始めて彼らについての捜査をしているのはアンチスキルくらいのもので他の人たちにとってはどうでもいい事柄だ。
もっと言うならむしろいなくなってくれて好都合な人の方が多いだろう。
そう、何も違和感を感じないごく普通の考えだ。
しかし。
彼女自身が一度学園都市の『闇』とじかに対峙したことがあるからこそ…。
スキルアウトの失踪には何か裏があるようにしか思えない。
いや、これは確信だ。
裏で確実に『闇』が関わっている。
だからこそ彼女はこれ以上深入りしないようあの場で話を終わらせたのだ。
数少ない友人たちを巻き込むわけにはいかない、そう…あの『闇』の恐ろしさを知って欲しくない。
本当ならアンチスキルにはこれ以上捜索しても無意味だと言ってしまいたい気持ちもある。
学園都市の『闇』が関わっている以上上層部の意図的な情報操作によってどうやっても真実にたどり着けなくするからだ。
結局のところ奴らについて模索するにはアンチスキルやジャッジメントのような表立った組織ではなく個人として静かに行動しなければいけない。
前回がそうだったように…。
手のひらでゲームセンターのコインを回しながら、
常盤台のお嬢様はしばらくその場に立ちすくしていた。
「いや~午前中授業なんて久しぶりやな」
「そのかわりに小萌先生の童顔や吹寄の乳を拝む時間が減るけどな」
「お前は何のために学校来てんだよ…」
午前中授業の案が取り入れられてからわずか数日。
この日を夢見て暑い中登校してきた学生達のテンションはMAXに到達していると言っても過言ではなかった。たった1日程度の午前中授業ではここまでにはならなかっただろう。では何があったのかというと…何を隠そうアンチスキル側から再要請があるまでの間午前中授業が続くという報告があったのだからこれが喜ばないでいられようか。吹寄曰く、「学生たるもの、本業は勉学だというのに皆揃って非常識よ」とご立腹だっだわけだが、そんな怒った吹寄もいいとか言い始める始末に終わった午前中だった。ちなみにその恩恵を今現在上条も受けているわけだが。
「カミやんは補修の毎日に明け暮れてたからこれから遊びたい放題やな」
「確かにこんなに早くかえれるのは久しぶりかもな」
「同情するにゃー」
補修が終われば家で待っている銀髪シスターの夕食作りの為に急ぎ足でかえらなければいけないし、運がわるいと何故かいつも不機嫌な御坂に遭遇したりととにかくスパルタな毎日をすごしている上条に同情をなげかけた土御門は大きなあくびをすると、
「とは言ってもモテ期到来中のカミやんにはアメとムチでいいんじゃないかにゃー?」
?と不思議そうに首を傾げる上条に土御門はやれやれと語り始める。
「家に帰ればイギリス聖教に仕える銀髪シスターがいるし、マンツーマンの相手は幼女の中の幼女である小萌先生だし、全人類のツンデレを代表する常磐台のお嬢様とは何故か妙に仲がいいし、事件のたんびにカミやんは美少女を連れてくる」
そうだーそうだーと、傍らで絶賛ブーイング中の青髪ピアスをよそに、土御門は極めつけと言わんばかりに、
「それにこの間公園で黒い長髪の可愛い中学生と同じアイスを2人して幸せそうに食べてたじゃねぇかにゃー!」
黒い長髪、中学生、公園でアイス、で頭の中に検索をかけること10秒。
「…何故それを?」
10秒かけてやっと脳内でそのシーンを具現することに成功した上条は額に汗を浮かべながらおそるおそる彼に聞いてみる。
「昨日舞花と一緒に買い出しに行ってその帰りに目撃したのだよ、んで本当は今日の朝から言いたくて仕方無かったんだけどにゃー。どのタイミングで言おうかそれで迷ってた結果が今、という訳なんだぜよ」
「別に言い訳とかするわけじゃないんだけど、あの時一緒にアイスを食べてたのは仕方が無かったからというかまぁ確かに女の子とアイスを一緒に食べて嬉しく無かったと言えば嘘になるけど」
「カミやん、人はそれをノロケと言うんやで!」
「違う意味でカミやんはレベル5だにゃー!」
「ちょっ!?お前ら!!危ねーじゃねぇかよ!?」
幸福に見えてやはり不幸な上条なのだった。
それでもって一難去ってまた一難。
「で、あの可愛い女の子は誰なんだにゃー」
「カミやんに年下のお相手は小萌先生という人がすでにおるのに…」
「俺より年上だからな」
「家で幼女を監禁してるって噂も」
「あいつは居候」
「え?幼女のことは否定しないんか!?」
「カミやんあの時の可愛い女の子は誰なんだにゃー」
結局自由を許されない上条なのであった。
「そうですか…ではやはり」
同学園都市内。
人間的意味合いではなく機械によるセキュリティ的意味合いでだ。
人が引き起こす犯罪を監視、または証拠としてそれを記録するカメラがあちこちの店内や住まいに設置されだしたのは既に何十年も前の話だ。機械によって保たれる秩序。
学園都市もまたこれらの恩恵のもとに鎮座している。完璧なセキュリティに守られた絶対の要塞…と言っても過言ではない。
だがあくまでもそれはほとんどがという意味で学園都市もそれなりに広い都市だ。
こうも広いと必然的に死角は存在してくる。
言い換えればそこはほとんど誰の目にも触れない場所というわけで、まさに奴等が行動するには最適の場とも言えよう。
奴らが地裏を近道として利用している学生を対象に、もっと言ってしまえば能力者を集団で襲撃するということはよくある話でジャッジメントでもこの手の事件は日常茶飯事のように対処している。
「………」
そんな学園都市の死角のひとつ。
一般人なら普段近づかないような路地裏に彼女は立っていた。
今はちょうど昼前。
街にも一番活気が湧く時間帯。
ただ何もせず立っているわけではない。
その目は路地裏の奥、はたまた今まで自分が歩いてきた通路に向けられ何度も耳をすませながら彼女は探していた。
「……、いない」
ぼつりと。
彼女はそう呟いた。
そう。
いないのだ。
いつもなら奴らの一人や二人くらい見かけてもいいくらいなのに。
確かにこういう場所は普段から暗くてジメジメしていて良い印象など無かったが、
ここまで静かだと流石に不気味というものだ。
彼らは文字通り消えてしまった。
「スキルアウトが…1人もいないなんて」
どうして?という疑問は胸中にとどめた。
だいたいの予想がついていたからだ。
今回の事件にはいずれも共通点があった。
事件の被害者がレベル0、細かく言えばスキルアウトのみだということだ。
どうして彼の標的の的となるのがスキルアウトなのか。
ただここまでの被害者が出ているのだ、流石のスキルアウトも外出を控えざるをえないだろう…というのが普通の考えなのだろうが彼らに常識は当てはまらない。
自分たちを襲ってまわっている奴がいる、なんてことを知ったら必ずその報復に出るような奴らだ。
正直な話。
スキルアウトが姿を消し始めて彼らについての捜査をしているのはアンチスキルくらいのもので他の人たちにとってはどうでもいい事柄だ。
もっと言うならむしろいなくなってくれて好都合な人の方が多いだろう。
そう、何も違和感を感じないごく普通の考えだ。
しかし。
彼女自身が一度学園都市の『闇』とじかに対峙したことがあるからこそ…。
スキルアウトの失踪には何か裏があるようにしか思えない。
いや、これは確信だ。
裏で確実に『闇』が関わっている。
だからこそ彼女はこれ以上深入りしないようあの場で話を終わらせたのだ。
数少ない友人たちを巻き込むわけにはいかない、そう…あの『闇』の恐ろしさを知って欲しくない。
本当ならアンチスキルにはこれ以上捜索しても無意味だと言ってしまいたい気持ちもある。
学園都市の『闇』が関わっている以上上層部の意図的な情報操作によってどうやっても真実にたどり着けなくするからだ。
結局のところ奴らについて模索するにはアンチスキルやジャッジメントのような表立った組織ではなく個人として静かに行動しなければいけない。
前回がそうだったように…。
手のひらでゲームセンターのコインを回しながら、
常盤台のお嬢様はしばらくその場に立ちすくしていた。
「いや~午前中授業なんて久しぶりやな」
「そのかわりに小萌先生の童顔や吹寄の乳を拝む時間が減るけどな」
「お前は何のために学校来てんだよ…」
午前中授業の案が取り入れられてからわずか数日。
この日を夢見て暑い中登校してきた学生達のテンションはMAXに到達していると言っても過言ではなかった。たった1日程度の午前中授業ではここまでにはならなかっただろう。では何があったのかというと…何を隠そうアンチスキル側から再要請があるまでの間午前中授業が続くという報告があったのだからこれが喜ばないでいられようか。吹寄曰く、「学生たるもの、本業は勉学だというのに皆揃って非常識よ」とご立腹だっだわけだが、そんな怒った吹寄もいいとか言い始める始末に終わった午前中だった。ちなみにその恩恵を今現在上条も受けているわけだが。
「カミやんは補修の毎日に明け暮れてたからこれから遊びたい放題やな」
「確かにこんなに早くかえれるのは久しぶりかもな」
「同情するにゃー」
補修が終われば家で待っている銀髪シスターの夕食作りの為に急ぎ足でかえらなければいけないし、運がわるいと何故かいつも不機嫌な御坂に遭遇したりととにかくスパルタな毎日をすごしている上条に同情をなげかけた土御門は大きなあくびをすると、
「とは言ってもモテ期到来中のカミやんにはアメとムチでいいんじゃないかにゃー?」
?と不思議そうに首を傾げる上条に土御門はやれやれと語り始める。
「家に帰ればイギリス聖教に仕える銀髪シスターがいるし、マンツーマンの相手は幼女の中の幼女である小萌先生だし、全人類のツンデレを代表する常磐台のお嬢様とは何故か妙に仲がいいし、事件のたんびにカミやんは美少女を連れてくる」
そうだーそうだーと、傍らで絶賛ブーイング中の青髪ピアスをよそに、土御門は極めつけと言わんばかりに、
「それにこの間公園で黒い長髪の可愛い中学生と同じアイスを2人して幸せそうに食べてたじゃねぇかにゃー!」
黒い長髪、中学生、公園でアイス、で頭の中に検索をかけること10秒。
「…何故それを?」
10秒かけてやっと脳内でそのシーンを具現することに成功した上条は額に汗を浮かべながらおそるおそる彼に聞いてみる。
「昨日舞花と一緒に買い出しに行ってその帰りに目撃したのだよ、んで本当は今日の朝から言いたくて仕方無かったんだけどにゃー。どのタイミングで言おうかそれで迷ってた結果が今、という訳なんだぜよ」
「別に言い訳とかするわけじゃないんだけど、あの時一緒にアイスを食べてたのは仕方が無かったからというかまぁ確かに女の子とアイスを一緒に食べて嬉しく無かったと言えば嘘になるけど」
「カミやん、人はそれをノロケと言うんやで!」
「違う意味でカミやんはレベル5だにゃー!」
「ちょっ!?お前ら!!危ねーじゃねぇかよ!?」
幸福に見えてやはり不幸な上条なのだった。
それでもって一難去ってまた一難。
「で、あの可愛い女の子は誰なんだにゃー」
「カミやんに年下のお相手は小萌先生という人がすでにおるのに…」
「俺より年上だからな」
「家で幼女を監禁してるって噂も」
「あいつは居候」
「え?幼女のことは否定しないんか!?」
「カミやんあの時の可愛い女の子は誰なんだにゃー」
結局自由を許されない上条なのであった。
「そうですか…ではやはり」
同学園都市内。
作品名:とある2人の無能力者5話 作家名:ユウト