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あなたの惚気が世界を救う

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鏡の前で、くるりとマリクは回転した。それにつられて、中身の無い片方の
袖がふわりと揺れる。
椅子に座ってそれを見ていたアルタイルは、これで何十回目かのため息をついた。

「マリク、本当に行くのか?・・・俺を置いて」
「しつこいぞアルタイル。仕方が無いだろう、大学の友人の結婚式なんだから。
・・・大丈夫だ、俺だってしつこい奴のあしらい方くらいわかってる。お前で経験を
積んだからな」
「マリクー・・・・・・・」

ブラックスーツにシルバーのアスコットタイとグレーのベストを身につけたマリクは、
いつものスーツ姿よりも数倍はかっこいいよな、とアルタイルは情けない顔をしながら
思った。普段マリクの様々な姿を見ているアルタイルさえそう思うくらいなのだ、
結婚式の二次会で彼に言いよる人間の一人や二人いてもおかしくはない。

「遅くなるかもしれないから、夕飯は先に食べててくれ」
「・・・ああ」
「どうしたアルタイル、そんな顔をして。いつもの冷静な経営者の顔は
どこにやったんだ?」
「お前の前でそんな顔はしたくない。・・・ありのままの俺だけを見ていてくれ」

アルタイルが真面目な顔でさらりと言うと、マリクは頬を染めてうつむいた。

「・・・アルタイル、この埋め合わせは必ずする。・・・せっかくの休みなのに
悪いな、一緒にいてやれなくて」
「新郎には、俺からおめでとうと伝えておいてくれ・・・タイが曲がっているぞ」
「え?」

片腕しか無いマリクにとって、ネクタイを締めるのは大変時間がかかって面倒な
ので、いつもはクリップタイプのものを使っている。クリップタイプの白ネクタイ
も持っているが、アルタイルに散々大騒ぎされた挙げ句に、無理矢理一式
着せられたのだ。仕立てのいいそれは、マリクに着せようとアルタイルが前々から
用意しておいたモノらしい。
・・・しかし、友人の結婚式で着るというシチュエーションではなく、フォーマルな
デート____食事とか観劇とか____のために用意しておいた事をマリクは知らない。
アルタイルにしてみれば、マリクが誰かの結婚式のためにそれを着ていくのは
気に食わないが、ダサい(彼にしてみれば)ダークスーツと白ネクタイで行くのは
もっと気に食わなかった。

「ほら、直してやるからこっちに来い」
「ああ、すまないな・・・・・・ッ」

アルタイルはゆっくりとマリクの唇に自分のを押し付けた。
目の前の男の顔が、驚愕から興奮へと染まって行く様をじっくりと眺める。
アルタイルが唇を離すと、マリクは手で口を押さえて真っ赤になった。

「・・・あ、アルタイル・・・ッ!」
「おまじないだ。今日一日、俺の存在を忘れられないように。」
「・・・そろそろ時間だ。もう行く。・・・アルタイル」
「なんだ?」
「・・・おまじないなど無くても、俺はお前の存在を忘れた事など片時も無い。
・・・愛している、アルタイル」

ぱたんと扉が閉じたその次の瞬間、アルタイルはソファの上でのたうち回った。