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蒼氷(そうひ)@ついった
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novelistID. 2916
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共同戦線

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街中では、それこそ静雄の武器は無限にある。
人工物を手当たり次第に掴み取っては己の武器に変えるのなら、それが無い場所へと誘い込み姿をくらますことは簡単なことだった。
静雄の手に取るものは大抵が大きさも 重さも並大抵でないものだ。
例えば自販機、標識、バイク。それらを振り回せないほど狭い場所に逃げ込めば、彼の頼れるものは自身の肉体のみだ。
彼の手に捕まりさえしなければ、逃げる方法はいくらだってある。

今はもう使われていないビルの地下駐車場。
随分前に会社が倒産し廃墟となっていたビルだが、その地下駐車場は閉鎖されておらず数箇所ある出口は全て開いたままだった。
この中で適当に撒いて逃げおおせればいい、それくらいの気持ちで踏み込んだそこは、今日に限って先客に占められていた。

「折原臨也、だったか?」

カラカラと金属が地面に擦れる音がして、反射的に臨也は足を止めた。
数瞬遅れてそこに飛び込んだ静雄も、異変を感じて同様に動きを止める。

「平和島静雄ってのはテメェか」
「あァ?」
「誰だっけ?君たち」

ストライプのスーツにオールバック、分かりやすいヤクザな身なりをした男達と、手に手にパイプを持ち、目に痛いほどの派手な身なりをした若者の集団。
それぞれの集団に囲まれながら、静雄と臨也は面倒くさげに息を吐いた。

「ちょっと静ちゃんのせいで囲まれちゃったんですけどー」
「テメェのせいでうぜぇのが群がってきたじゃねえか」

360度完璧に囲まれている。残念ながら隙間はないようだった。
青筋を立てて指の関節を鳴らす静雄に、臆することなく立ち向かっていく威勢だけは評価しよう、と臨也は思った。だがその分知能の方がいただけない。
仮にも“池袋最強の男”にそう真っ向から喧嘩を売ったところで勝ち目はない。
もっと良い方法がある筈だ。俺ならもっと上手くやれる。そう、俺なら。
パン、とスタートの合図がなったかのように一斉に走り出した男達は、我武者羅に 二人へと掴みかかった。
しゃがむ。切り込み隊長宜しく入れられた蹴りは頭上を通過し、お返しとばかりに軸足へ回し蹴りを叩き込んだ。
無様 に転倒する姿をろくに眺める事もできず、右からの拳をかわす。
伸ばされた腕を掴み、引き寄せた。突然距離を詰めたことに怯んだのか、はたまた至近距離で見る臨也の秀麗な容貌に見惚れたのかは知らない。
ただ思い切り打ち込まれた筈の男の腕から、一瞬だけ力が抜けたのだけは確かだった。

「残念」

ニコリと笑ってソイツの鳩尾に右膝を埋める。
隙を狙い済ましたかのような蹴りを、今度は重心を後ろに傾けることで避けた。
バランスを取り戻そうと片足を後ろに突き出すと、背中が別の背と合わさる。声を掛けなくとも分かるその気配に、確かめることなく臨也は声を上げた。

「これじゃあキリがないよ静ちゃーん。どうしてくれるのさ」

巣から這い出る蟻の様に際限なく湧く男共に、臨也は早くも辟易していた。

「臨也、伏せろ!」

投げられた怒声に振り返る間もなく、しゃがんだ頭上を“止まれ”の文字が通り過ぎる。
空気を裂く様な音を立て、遠心力に導かれるまま標識は周りの敵をなぎ倒した。
静雄を中心に死屍累々の輪が出来る。まさに死のコンパス。

「わお、ご愁傷様ー」

目の前に転がった死体を覗き込みながら、臨也は感情もなくそう言った。
静雄の持つ標識の滑らかな表面を血が滑り落ち、ポタポタとコンクリートに染みを作る。
彼の溺愛する弟に貰ったらしい白いシャツにも点々と、誰のものとも分からない血痕が飛び散っていた。
全滅するまで帰るつもりはな いらしい、数が少なくなっても男共の勢いが止む事はない。
臨也はあくまでも静かに、静雄は轟音を響かせながら応戦をしていたが、不意に張り詰めて いた空気が緩んだ。
突然メキメキと音が鳴り、古びたコンクリートにひびが入り始める。
どうやら暴れた振動で、この何年も使われていない脆いビルは限界に達したらしい。
崩れかけた古ビルが砂埃を立て始めるまでに、そう時間はかからなかった。
まともに立っていられないような揺 れがその場にいた全員を襲い、臨也はその場に倒れこんだ。
逃げる間もないまま崩れたコンクリートが上から降り注ぎ、錆びた鉄筋がガラガラと音を立 てる。
無限にも思える時間の中、耳を劈くような轟音だけが周りを支配していた。
再び静寂が戻ってきた頃、臨也はそろりと身体を動かした。
音 のわりに痛みも、それどころか小石が当たったような感触さえなかった。
これが死ぬという感覚なのか、目をあけたらそこは池袋ではなくてどこなんだろう、そんな事を考えながら薄っすらと目を開くと、そこには静雄の顔があった。
その表情はいつになく苦痛に歪み、額から零れ落ちた汗が臨也の頬を伝った。
顔の横に突かれた両腕は、全ての力が込められているように小刻みに震えている。

「何してんの静ちゃん」
「見りゃ分かるだろうが!良いからちょっと黙ってろ」
「さすがの静ちゃんでもビル一個は支えられないよ」
「うるせぇ黙ってろ」
「もう諦めなよ、静ちゃん」
「俺が諦めたらてめぇも死ぬぞ」
「うん、いいよ。それでいいからさ、もう無理しないでよ」
「ぜってー助けるつってんだろうが!」


続かない^q^


メモ
・pixivのイラスト(illust/9261433様)があまりにもツボで、そのイメージで書かせていただきました。なんだか勝手にスミマセン;
・「臨也、伏せろ!」咄嗟に“ノミ蟲”じゃなくて“臨也”と呼んでしまう静ちゃん萌える^q^
・攻めが受けを庇って…のシチュは物語の王道ですよね^q^