繋いだ手、握りかえす手
安心した平古場は体の力を抜いて、繋いだ手の温もりを感じながら、木手の後ろ姿を静かに見つめた。そして、木手も平古場の手の温もりと、静かなプールに響く自分以外の足音を黙って聞いていた。
二人は、この時間が少しでも長く続けばいいと思った。
幸せで、少しだけ切ないこの時間が、とても特別に感じた。
きっと手を離せば何時もの関係に戻ってしまう。だから、お互いの繋ぐ手の温もりが愛しくて、二人は無言のまま、手に少しだけ力を込めて握り返した。
本当の想いを隠したまま、この嘘だらけの友情は、一体何時まで続くのだろうか。
そんな二人の想いを現すかのように、プールの水面は揺れ続けていた。
作品名:繋いだ手、握りかえす手 作家名:s.h