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たとえばこんな未来の話

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おまけの別ver.



遙のすぐそばに座った凛はなんだか決まり悪そうな顔をして、なにかを取りだした。
小さい箱である。
凛はうつむき、遙を見ないようにして、その箱を開けて差しだした。
それから、凛はうつむいたまま告げる。
「結婚してくれ、ハル」
遙は凛をじっと見て、差しだされた箱の中身も見た。
箱の中に鎮座しているのは指輪である。
しばらくして、遙は口を開く。
「その指輪は受け取らない」
「えっ」
凛が顔をあげた。
ショックを受けている表情だ。
そんな凛に遙はいつもの無表情を向け、冷静な声で言う。
「いや、デザイン的な意味でだ」
指輪は立て爪にダイヤモンドがきらめいている。
「………………えっと、その、お袋が親父からもらったって嬉しそうに見せてくれたのが、こんな感じだったんだ」
「相手が男であることを考えろ」
「わかった、別のを買ってくる」
凛はガックリと肩を落とし、箱の蓋を閉じた。
しかし。
遙は凛の手から小箱を奪った。
「冗談だ」
いつもと変わらない声で続ける。
「ロマンチストのおまえのことだから、ずいぶん高いのを買ったんだろう。それを受け取らないわけにはいかない」
「ハル……!」
「だが、はめない」
嬉しそうな凛に対し、遙はきっぱりと宣言した。
ふたたび凛は肩を落とした。
けれども。
ふいに、その凛の手が近づいてきた。
小箱を持っていないほうの手、遙の左手をつかまえ、自分のほうへ引き寄せる。
「じゃあ、指輪の代わりに」
そう告げると、凛は遙の手の甲にキスをした。
左手の薬指のあたりだ。
遙は眼を見張った。
「……おまえ、なに、気障なことを……!」
さすがに、うっかり動揺してしまった。
凛が顔をあげる。
「オレは海外暮らしが長いからな」
ニヤッと笑った。
遙は眼をそらし、顔をそむける。
自分の顔が赤くなっているような気がする。
凛の腕が伸びてきて、今度は遙の身体ごと自分のほうへと引き寄せる。
「オレの勝ちだ」
そう告げた凛の顔は見えない。
だが、きっと子供のころのように笑っているのだろう。











作品名:たとえばこんな未来の話 作家名:hujio