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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

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第43章 ジュピターへの鍵


 大ウェスト海を進むレムリアの船。
 その船上で背中に炎の翼を作り出し、ジャスミンが空を舞っていた。西ゴンドワナ大陸にあるマグマロックにて得た新たなエナジー『プロミネンス』の練習をしていたのだ。
 炎を自由自在に操ることによってあらゆる事ができるこのエナジーで新たな事ができないか、さらに高みを飛翔するようにできるか日々鍛錬に励んでいた。
「ふう…」
 ジャスミンは翼をたたんで船上に降り立った。
「結構高いところまで飛べるようになったんじゃない?」
 降り立った先にはシバが微笑んでいた。
「うん、前は地面すれすれじゃなきゃ飛んでいられなかったけど、今は高いところも平気ね」
 ジャスミンも笑い返した。
 それからジャスミンは、こんなこともできるよ、と言うと燃え盛る炎を赤く輝く刃に変えた。炎の高熱を持つ剣を作り出したのだ。
 柄と鍔は一体となって炎の揺らめきを模しており、刀身は真っ赤に輝いていた。
「すごいじゃない、これで斬りつければ敵もイチコロね!」
「でも、私剣の使い方はあまり分からないから上手く使えるかしらね」
 ジャスミンは剣を再び炎へと姿を戻した。
「そうねえ、見たところ軽そうだし、ジャスミンでもその剣なら扱えるんじゃないかしら?」
「私が!?」
「そう、例えばあそこで暇そうにしてるやつから聞くとか。あいつも相当の剣の使い手でしょ」
 シバが指していたのはシンの事だった。
 シンは船の縁に肘を付き、物思いに耽ったように遠い目で海原を見つめていた。
 存外、彼は物事を引きずってしまう心の持ち主であった。西ゴンドワナ大陸のボルケイ村での事である。フォレアに好意を持たれ、その気持ちに応えることはせず、さらに、皆で別れを告げるときも彼らだけ一言も言葉を交わす事がなかった。ただ、二人とも互いに目を逸らすだけだった。
 もうボルケイ村を出発してから二週間ほどの時が過ぎていた。それでも時にフォレアの事を思い出してはこうして物思いに耽っていた。
 彼女はどことなく妹にそっくりだった。ぶっきらぼうな性格はフォレアとは正反対であるが、かなりの頑固者な所は幼い頃のリョウカによく似ていた。
 今でこそ騒ぎ立てるような事はしないが、かつてはシンが何らかの方法、手段でリョウカをからかうと、何が何でもシンにやり返してやろう、決して彼には勝てないと分かっていても一泡吹かせてやる、と様々な方法を画策するほどリョウカは頑固で負けず嫌いな少女だった。
 フォレアもまたそんな少女だった。彼女との出会いによって、今リョウカが何をしているのか、気がかりとなっていたのだった。彼女の好意を汲み取らなかったのもフォレアが妹のような気がしてしまったからだった。
 不意にシンは背中を叩かれた。
「何らしくない顔してんのよ!」
 笑みを浮かべながら背を叩いてきたのはシバだった。
「何だよ、シバかよ…。驚かすんじゃねえよ…」
 尚もシンは浮かない顔をしていた。
「本当にどうしたのよ?ここ何日かずっとそうじゃない」
「オレにも考え事する時があるんだよ」
「珍しいわねぇ、今日辺り嵐が来るんじゃないかしら?怖い怖い」
 シバはわざとらしく自分の肩を抱いて震える素振りを見せた。
「まあいいわ、どうせあんた暇でしょ?ちょっと付き合ってくれない?」
 シンの都合など全く考えていなかった。しかし、シン自身もこれ以上考えていても何にもならないと思い、シバに付き合う事にした。
「…で、オレに何の用だい?」
「ジャスミンに剣の使い方を教えてあげてほしいのよ」
 ジャスミンはお願い、と軽く頭を下げた。
「剣の使い方って、お前そもそも剣なんか持ってないし、そんな細腕じゃろくに振れねえだろ」
 シンがため息をつく中、ジャスミンは『プロミネンス』を発動し、炎を右手に集め、さっきシバに見せたときのように炎で剣を作り出した。
「これでどうかしら?」
 ジャスミンは馴れない手つきながらも炎の剣を軽々と上下に振り回した。
「はあ、そいつはすげえな!見たところそいつは小刀って感じだな。ちょっと貸してもらえるか?」
 ジャスミンが手渡したその時だった。
「っ!?熱、熱、あつつつ!」
 シンは慌てて剣を手放し、手を冷まそうと滅茶苦茶に振り回した。
 一方下に落ちた剣は元の炎へと戻り、危機を感じたジャスミンによってエナジーを解かれると火は燃え広がる前に消えた。
 『プロミネンス』で作り出した剣は剣の形をしているのだが、元は燃え盛る炎である。このエナジーは術者であるジャスミンの意思によって様々に利用できるというものである。いくら剣の姿をしていてもジャスミン以外の人間には触れることは適わず、触れれば大火傷を負うところであった。
「あっつつ…!…ジャスミン!てめえはめやがったな!」
 シンはまだ手を振り回している。
「ち、違うわよ!私だってこんな事になるなんて思わなかったのよ」
「じゃあ、またシバの差し金か!?」
 シンの怒りの矛先はシバへと向いた。
「何でよ!?こればっかりは私にも分からなかったわよ!」
「嘘つくんじゃねえ!」
「本当よ!」
 シンとシバの間で言い争いが始まってしまった。最早これは日常茶飯の事だった。
 ジャスミンはいがみ合う二人を見つつ、教えてもらえそうになさそうね…とため息をついていた。
 その頃、船室の中ではガルシア、ピカード、スクレータの三人がいた。皆、卓に付き、海図を開いて次の目的地をどこにするか話し合っていた。
 西ゴンドワナ大陸を出発して数日経つのだが、未だジュピター灯台のある大陸までは遠く、どれほど少なく見積もってもまだ数週間はかかりそうだった。
「ジュピター灯台があるのはアテカ大陸じゃが…」
 スクレータが言った。
「その前にあるヘスペリアという大陸も気になるのう」
 現在船はゴンドワナ大陸に沿うようにして進んでいる。その進路には二つの大陸が待ちかまえている。
 一つは山と川に覆われた険しい大陸、ヘスペリア。もう一つがガルシア達の旅の最大の目的であるジュピター灯台のあるアテカ大陸である。
 このまま進んでいけばヘスペリア大陸へと到達するところである。アテカ大陸はまた更に奥に位置していた。
「そうですね、僕もスクレータに賛成しますよ」
 ピカードは賛同を示した。
――ヘスペリア…?――
 ガルシアは思い出した事があった。
 あれは数ヶ月も前の事、彼らがサテュロスとメナーディとともに旅していた時の事だった。
 ある夜、皆が寝静まった所、ふと抑え気味の声で会話するサテュロス達の話でガルシアは目を覚ました。
 その時は間もなくヴィーナス灯台に灯を灯そうかと言うところであり、目的はほぼ達成していた。そうした事もあり、計画はもう次のジュピター灯台へと進んでいたのだった。
 その灯台へ登る鍵となるものがヘスペリア大陸にあるのだと言っていた。それを得るにはある杖が必要だった。当時なんの事か訳が分からなかったガルシアだったが、その杖は紛れもなくイワンの持っていたシャーマンの杖だったのだ。
 ヘスペリアと聞いて全てガルシアは全て合点がいった。ジュピター灯台を灯す鍵はヘスペリアとシャーマンの杖にこそあるのだ、と。