二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

INDEX|11ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

 決まった、そう思っていたモアパだったが、次の瞬間杖を持つ手に激痛が走ると同時に地面に腹ばいに引き倒されていた。
「甘いわね、刃がないからって相手の武器に無闇に触ると痛い目みるわよ!」
 これもシバの杖術の一つだった。万が一杖を相手に掴まれ攻撃不能になった時に使う技がある。
 それは手首極めである。杖を瞬時に回すことにより、杖先を相手の手首に掛ける事できまる関節技である。これで手首を極められると抗しがたい激痛が手首だけでなく全身にも伝い、倒れる他ない状態となってしまう。
 しかも、手首を引っ掛けられているせいで手を離した所で杖は離れず、手首を極められ続けることになるのだ。
 最早勝負は決まったようなものだった。
「ぐおおお!私は負けん、負けんぞぉ!」
 手首の関節を極められ、動くこともできないのにモアパは降参しようとしなかった。
「男のプライドってやつかしらね?そういうの、嫌いじゃないわ…」
 けど、シバは手をかざした。
「この勝負、私の勝ちよ。少し眠ってなさい!」
 エナジーを発動した。
『レイデストラクト!』
 『レイストーム』よりもさらに激しい磁気嵐が発生した。激しく渦巻く電流のなかで、モアパは叫びを上げ、電流が収まる頃には気を失っていた。
 シバはモアパの手首から杖を引き抜き、後ろのガルシア達を向いた。
「大丈夫よ、エナジーは手加減しておいたから…」
 ナバホとイエグロスの伝説の戦いの再現とも言われよう激闘は、シバの勝利をもって幕を閉じた。
     ※※※
 トライアルロードでの戦いが終わり、ガルシア達はシバの傷を治した後、モアパ達が気が付くのを待った。彼らが目覚めたのは間もなくだった。
 それから一行は共に村へと戻り、シバの実力と勝利を讃え、モアパは祝宴を開いてくれた。
 このモアパという男、まさに武人と呼ぶに相応しい。自分を負かした相手を際限なく褒め称えるのだ。例え相手が女子供であったとしても、真の戦士として、勇者としてシバの実力を認め褒めるのだった。
 祝宴はお互いが疲れていた事から夜遅くまでは続かなかった。夜が更けると皆眠りについた。
 そして夜明け、ガルシア達はモアパ達よる見送りを受けていた。
「私を破ったシバよ、私は君を真の勇者と認め、ナバホ達の約束通り、シャーマンの杖を受け取り、グラビティの翡翠を授けよう」
 モアパは首から下げていたグラビティの翡翠を外し、シバへ手渡した。
「ありがとう、モアパ」
 シバもこれまで持ち続けてきたシャーマンの杖をモアパに渡した。
「シバ、君の杖術はまこと見事なものだった。故にこれも渡そう」
 モアパはそばにいたヴィンに何やら命じると、モアパの家の中から縦長の布にくるまれたものを持ってきた。それをヴィンから受け取ると、布を剥いだ。
 出てきたのは杖であった。シャーマンの杖よりも若干長く、先は風を表すかのように渦巻いた形をしていた。
「これは先代、つまり私の父の代にギアナから受け取ったもの。名を悟りの杖という」
 モアパはシバに受け取るよう促した。
「その杖には魔力が込められているらしい、と言い伝えられているのだが、実際誰が使ってもそれを解き放つ事はできなかった。そこでシバ、君は昨日の戦いの中で不思議な技を使っていたな。君にならその杖をも使いこなすことができよう」
 シバは悟りの杖を受け取った。持ってみるとシャーマンの杖よりも長い割には重さはさほど変わらず、何よりモアパの言うとおり杖からは不思議な感覚が伝わってきた。
 エナジーともまた違った、何やら神秘的な力である。
「悪いわね、モアパ。ありがたく受け取っておくわ」
 シバは笑みを見せた。
「うむ、君にこそ、その杖は相応しい。君のその強さ、モアパは決して忘れはしない…」
 モアパは手を差し出した。握手を求めていたのだ。
 シバはその手を受け取った。双方の手は、細く、しなやかなシバの手に対し、武骨で色黒なモアパの手と非常に対照的であった。
「さらばだシバ、そしてガルシア達よ。またいつでもシャーマン村にやってくるといい」
「ああ、きっとまた訪れる」
「それまでさよなら、モアパ!」
 ガルシア達はモアパに別れを告げ、村を後にした。
 船を碇泊させている湖までの道中、戦いには参加しなかったシン達はガルシアとジャスミンにシバとモアパの戦いぶりはどうであったか、質問責めした。
「うーむ、是非ともシバの勇姿を見てみたかったのう…」
 スクレータは惜しそうな様子で言った。
「僕なんか信じられませんよ、あんなに強そうな人にシバがたったひとりで戦ったなんて」
「ピカードの言うとおりだぜ、こんなちんちくりんがあの大男相手にひとり戦っただけじゃなく勝っちまったんだからな。いやぁ、一体どんな手を使ったのやら…」
「失礼ね、二人とも!まるで私が何かずるい事したみたいな言い草じゃない」
 ピカードはすぐさま弁解する。
「いやいや、僕はそんなつもりじゃ…」
 対してシンは全く悪びれる様子はない。
「モアパの奴素晴らしい杖術とか言ってたけど、妙な話だなぁ。オレはお遊び程度にしか教えた覚えがないんだけどな!」
「あら、確かにあなたから杖術は教わってたけど、モアパあなたの技を誉めてたんじゃなくて私の実力を誉めてたようだけど?」
「ああ、そうだったな。本当に小ずるい奴だぜ、師匠の名をモアパの前じゃ一切出さねえんだもんなー」
 シンはニヤリとしながらそっぽを向いた。
「何ですって!?ふんだ!今回ばっかりはあんたに感謝してたんだけど取り消すわね」
「あ?感謝してたの?いやそりゃどうも!」
「だから取り消したって言ってるでしょ!」
「一度でも感謝した時点でお前の負けだぜ!」
「何ですって〜!?」
 最早全く訳の分からない理由で言い争いを始めてしまった。ムキになるのはシバの方でシンの方はあしらうようにしてからかっている。
「本当に仲がいいわねあの二人…」
 ジャスミンは軽く呆れた様子で苦笑いしながら言った。
「ああ、そうだな」
 あんな調子でよく練習できていたものだ、ガルシアは思うのだった。
 それよりも、である。
 ジュピター灯台の鍵となりうるグラビティの翡翠を手に入れ、目指す先はジュピター灯台のある北のアテカ大陸に位置するギアナ村である。
 ギアナの名はモアパの口から告げられ知ったのだが、どういう訳かシバの口からもその名が出た。
 その場しのぎにしてはよく知っている風であり、ギアナはジュピター灯台のある地でもある。
 シバとギアナ、そしてジュピター灯台。何か浅からぬ縁があるのでは、と思いながらガルシアは未だ言い争いをするシバを見るのだった。