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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

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 モアパはとっさに体勢を戻し、シバの杖を剣で受け止めた。そして両者一旦距離を置き、モアパは剣を構え直し、シバも杖を立てるようにして左手に持ち、右手は腰に置く。これが彼女の杖の構えである。
「ふ、まだ私は君をなめていたらしい…、こんな女子供が、とな。しかし、その杖さばき、なかなか杖術に長けているようだな」
「武器として杖を持つのに、使い方を知らないなんてのは嫌だったの。だから仲間からちょっとばかし杖術の手解きを受けたのよ」
 そうだったの、とジャスミンはガルシアに訊ねる。仲間の中でも限られた人間しか知り得ない事だった。しかし、ガルシアは知っていた。シバを扇動して杖術の手解きをした者、それはシンである。
 一ヶ月ほど前にガルシアは夜も明け切らぬ早朝に目覚めてしまった日があった。その日は船旅の途中であり、ひとまず風に当たるか、とガルシアは甲板へ出た。すると誰もいないだろうと思っていた甲板には人の気配があった。そっと物陰から覗いてみると、そこには杖術の練習をするシバとシンがいたのだった。登り来る朝日に、頬を伝う汗を輝かせながら。
「ならば、こちらもギアナ族の宝を使わせてもらおう…」
 モアパは言うと、グラビティの翡翠を取り出した。それを首から下げ、翡翠を握り念ずると翡翠が輝きを放った。
 翡翠から手を離したかと思うとモアパの姿が目の前から消えた。
――消えた!?いえ、こっちね――
 シバはとっさに杖の頭を押し、先端部を自らのこめかみに当て、側面からの攻撃を防いだ。
「…ずいぶんと急に、足が速くなったものね」
 杖越しから右側を横目で見ながらシバは言った。そこにはモアパがいた。
「よくぞモアパの動きを見切った」
 モアパは先程消えたのではなかったのだ。目にも止まらぬほどの素早い動きで消えたかのように見せたのである。
「その石のおかげかしら」
「お察しの通り、これは私の体をかなり軽くしてくれているのだ。そのおかげで縦横無尽に飛び回ることが可能になった」
「本気の本気になった、って所かしらね…」
 シバはモアパの剣を弾いた。
「なら、こっちも全力で行かないとね。見せてあげるわ…」
 シバは念じエナジーの波動を放った。辺りを強風が吹き荒れる。
「エナジストの本気を!」
 杖を地面に突き刺すように立て、詠唱する。
『インパクト!』
 シバの体が輝きを放った。それと同時に攻撃力が格段に増した。
「はあ!」
「ぐう!?」
 シバは杖を振り上げ、モアパの頭を狙って剣のように振った。エナジーの効果でシバの攻撃には素早さも付加されており、ぎりぎりの所で、モアパは防いだ。
 攻撃力がとにかく半端ではなかった。これが本当に女子供の力なのかと疑ってしまうほどその一撃は重かった。
「どうしたの、さっきまでの威勢がないじゃない?」
「…小賢しいッ!」
 挑発してくるシバの杖を弾き返してモアパは距離を取った。しかし、この行動は彼には仇となった。
『シャイン・プラズマ!』
 輝く落雷が閃光を放ち、モアパを襲った。
「ぐぬおおお!」
 落雷はモアパに直撃した。しかし、シバは間髪入れることなくエナジーを発動しようとする。
「何度も喰らわんぞ!」
 モアパは駆け出した。シバに近付くことでエナジーを食い止めようという手筈だった。
 しかし、思惑通りにはいかなかった。
『レイストーム!』
 電流渦巻く磁気嵐を発生させ、その中にモアパを巻き込み拘束した。その隙にシバは杖で突きを繰り出す。
「はっ!」
 しかし、その突きはモアパの剣に阻まれた。受け止めるに止まらず、杖を弾き、磁気嵐の中から外へと飛び出した。前に受け身を取り、しゃがんだ姿勢のまま視線はシバへと向く。その眼は血走っていた。
「大したものね、『レイストーム』の中から自力で出るなんて」
 シバの挑発的な言葉にモアパはもう応じる事はなかった。それだけに消耗して来ているのだった。
 モアパは叫びを上げながらシバへしゃにむに攻撃を仕掛けた。最早剣に型などありはしない、怒った子供が棒を滅茶苦茶に振り回しているそれと同じだった。
 そんな冷静さを欠いた剣などシバには通用するはずもなかった。一振り大きな一撃が来た。それにタイミングを合わせてシバは杖を振り回した。
「車払い…」
 モアパの剣を弾くだでなく、勢いそのままに杖を下に大きく弧を描いて顔の横で垂直に持つ。
「直突き!」
 剣を大きく弾かれ、体に大きな隙を作ったモアパはなす術なく突きをまともにくらった。腹部を突かれ、口から少量の血が吹き出た。
 ダメージは大きい、しかし、モアパは膝を付かない。普通の人間ならばいくらシバが抑えても『シャイン・プラズマ』を受けた時点で倒れているはずである。そのはずなのに、モアパは消耗こそ見せるものの、倒れるどころか戦意を一切消失していない。
――タフな奴ね…――
 シバは目を細めた。その瞬間、モアパの姿が消えた。またあの素早い動きを使ったのだ。
――まさかまだ動けるなんて…!――
 シバは四方八方どこから攻め入られてもいいよう身構えた。しかし、全く見切れない。
「きゃあ!」
 シバの悲鳴が響いた。後方から肩口を斬られたのだ。服に血が滲む。
 モアパの姿は未だ捉えられない。最初に見せた一撃はどうやら力を抑えていたものらしい、今は全力で全く姿が見えない、気配は、殺気は辺り一体から感じられる。逆にこれが攻勢に転じるのを難しくしていた。
――ならこれで…!――
『イリュージョン!』
 シバの周囲を霧が立ちこめた。普段なら相手にぶつける所なのだが、今は霧で自分の身を隠し、モアパから攻め入られないようにしようと考えたのだ。
 しかし、この策は失敗した。
「きゃああ!」
 今度は背中を真一文に斬られた。なんとモアパの目には霧など全く関係なしにシバの姿が見えるらしかった。霧で自らの周囲を囲んでしまったため、事態は余計に不利なものになってしまった。
 今度はどこから来るか、見えない敵にシバは翻弄されていた。
『トルネードスピン!』
 シバはひとまず竜巻で周囲の霧を振り払った。霧が通用しない以上、いつもやっている『イマジン』を使う戦法は使えないと分かったからだ。今自分がこの戦法を受けている様な状況で、どれほど強力な戦法だったのか、シバは身を持って知った。
 しかし、モアパはシバの様に真実の領域を見ているのではない。シバの気配を感じ取って攻撃しているのだ。
 ならば、とシバは『イマジン』を発動した。気配を読み取るなどとは足元にも及ばない、全ての真実を見る事のできる領域を、シバは自分に開く。
 青く輝く瞳で、シバは辺りを見渡す。いた、少し離れた所をモアパが駆け抜けている。
 あのように走り回る事で気配をあちこちにまき散らしていたらしい。
 モアパは進路を変え、シバへと向かってきた。シバには全てが見える、真実を映す瞳に間違いはなかった。
 モアパが剣を振り上げた瞬間を狙い、シバは杖を鳩尾目掛け突き出した。すると、信じられないことが起きた。
「見切ったぞ!」
「何ですって!?」
 がしっ、と杖の先はモアパに掴まれた。
「これで終わりだ!」
 振り上げた剣を、モアパがシバ目掛けて下ろした。