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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

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 ならばエナジーで一気に攻め立ててはどうか、一瞬シンの脳裏を過ぎったが、それはすぐに自らの中で却下した。
 素早い動きを誇る彼らである。どれほど強力なエナジーを撃った所でろくな隙がなければ致命傷になるはずもなかったからだ。
 シンの中に思い浮かんだ策は、こうなればかなり危険なものとなった。
『爆浸の術!』
 シンはスレイヤー達の間に大きな爆発を起こした。再びスレイヤー達は左右にそれぞれ避ける。先ほどと同じように二体を離す事ができた。
 その隙にシンは一体のスレイヤーに迫った。スレイヤーは反応し、反撃の刃を向ける。その瞬間、シンの姿が残像を残しスレイヤーの背後へ回った。
「転影刃!」
 後ろに回り込まれ、すっかり無防備となったスレイヤーの背に、シンは刃を突き刺した。刃は背中からスレイヤーの心臓を貫く。
「ぐわあああ!」
 スレイヤーは叫びを上げ、事切れた。その間にもう一体のスレイヤーが寸前までシンに迫り来ていた。
 針が触れるか否かの所で、シンの姿が再び残像を残し、今度は上空に残像が伸びていった。
 転影刃を使い、一体の相手をしつつ自らの隙を突いて来るであろうもう一体の敵の攻撃を転影によってかわす、これがシンの立てた策であった。
 転影を行うタイミングを誤れば、一体を倒したところで串刺しとなってしまう。一瞬の判断が生死を分ける危険な策であった。
 シンは空中で体をひねり、スレイヤーの後方に着地した。完全にスレイヤーの攻撃を避けたかと思われたが、右肩に掠り傷があった。
「ち、かわしきれなかったか。だがこれで勝負は決まったぜ」
「…果たしてそうかな?」
 スレイヤーは言った。
「へっ、負け惜しみ言って…」
 突如として、シンの視界が物凄く歪み始めた。それと同時に身体全体が痺れ始め、全く身動きができなくなった。
「が…く…、一体何が、どうなって…?」
 シンは膝を付きそのまま地面に横たわった。
「俺の針には毒がある。一瞬で獲物をあの世に送れるほどのな、例え掠り傷でもしばらく身体の自由は利くまい…」
 スレイヤーはゆっくりとシンに迫り来る。シンは動かぬ手を必死に伸ばし、転がった短刀を拾おうとする。しかし、指も満足に曲がらず、剣を握ることができない。
「死ね…」
 スレイヤーは遂にシンの前まで歩み寄り、針の先をシンへと向けた。
――ちきしょう、これまでか…――
 シンは全てを諦めかけた。蘇るはこれまでの記憶である。走馬灯のように駆け巡る。
 罪人として村を抜け、そして散ったはずだったこの命。やはり散る運命だったか。
 もとより、オロチ亡き者となった今最早シンの目的は果たされた。ここで死ぬのは当然の定めなのかもしれない。
 ガルシア達旅の仲間の顔が浮かび来る。そしてヒナ、姉であり、母親である唯一の肉親の姿が目蓋の裏に映る。
 それから、最後に映ったのはリョウカである。義理の妹ながら討滅者として自らの命を狙い続けていた彼女の姿が見えたのだった。
 いや、実際には十数年間共に暮らしていたあのリョウカではない。先の戦いの中にいた白頭巾の彼女が見えたのである。それはどうしてか、理由など分からない。しかし、何故か、あの姿がシンを生へと引き止めた。
 本来ならばおかしな事、自分でもそう思う。だがしかし、再び合間見えたい。もう一度会って話がしたいという思いが、シンに未練というものを持たせた。
「ま…だ…だ…」
 スレイヤーは眉をひそめた。
「まだ、オレは…」
 凄まじいまでの痺れに本来ならもう指一本動かすどころか、意識まで既に飛んでいてもおかしくはないのに、シンは短刀を握った。
「死なねえぞ…!」
 なんとシンは首をもたげ、痙攣する体を持ち上げた。
 震えながら肩で息をし、何度も崩れ落ちそうになっても決して膝を突くことはなかった。
「…まさか立ち上がるとはな、だが、所詮虫の息…」
 スレイヤーは針をシンへ向けて突き出した。
「リョウカに会うまで、オレは…!」
 針がシンの眉間に迫った時だった。
『スパイア!』
 土の槍がスレイヤーを貫き通した。
「うおおお…」
 スレイヤーは口から血を出し、息絶えた。
 霞むシンの視界に見えたのは、流れような長髪、そして煌めく剣。
「リョウ…カ…」
 シンは意識を失った。
「シン!」
 ガルシアは急ぎ助け起こすのだった。