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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

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 あの太刀筋は真紅の髪と同等かそれ以上に、シンに確信を得させる要素となった。あの白頭巾は間違いない、シンが今まで思案に当たっていた人物。
――やっぱりあの白頭巾、リョウカ…!――
 戦闘はまだ終わらない。二匹目のワーウルフが攻めかかってきた。今度は、魔物の手首付近を掴み、捻って関節を極め肘を折り畳み、更に肩を極め後ろに引き倒した。
 魔物はくるりと宙を舞い、背中から強かに地面に落ちた。その瞬間、リョウカは切っ先で魔物の喉を貫いた。
 体術までもがかなりの水準に達している。相当腕を上げたらしい。
 一瞬にして仲間を殺され、さすがのワーウルフも恐れおののき始めていた。しかし、リョウカは容赦しない。逃がすつもりは全くなかった。
 ワーウルフはリョウカに背を向けて逃げだそうとした。
 逃がすまい、とリョウカは一瞬にしてワーウルフの前に回り込んだ。
 突如、リョウカの姿が三つに分かれた。気配をあちこちに飛ばし、相手を惑わす気の錯乱である。
 これはヒナが得意とする技であるが、威力は明らかにヒナを超えていた。シンにも全く正体が掴めない。
 一人だったはずの敵が突然三人になり、かなり狼狽えたワーウルフに最期の時がやってくる。
 三体のリョウカが一度にワーウルフを襲った。柄先でワーウルフの顎を打ち、横にした刃でその体を空中へ打ち上げた。
 再び刀を鞘に戻すと、リョウカはエナジーを刀に込め始めた。エナジーに呼応するように刀が赤い光を放つ。
 瞬間、空中のワーウルフへと放った。
「炎龍刃!」
 刃の軌跡に発生した炎が龍の形となり、ワーウルフの身を食い尽くすように燃やした。
 ワーウルフは断末魔のみを残し、消し炭すら残さず焼き尽くされた。
 最後に会ったときとは桁違いの強さを得ていた。シンでも若干手こずりそうな敵を、リョウカはものの数秒で倒してしまった。今の彼女にはとてもかなう気がしなかった。
 リョウカは刀の血を振り払うと、鞘に納めその場を後にしていった。自ら身を隠していたというのに、シンは何故か追いかけようとしてしまっていた。
 しかし、木の上から降りた途端、その足は魔物の群に阻まれてしまった。
 前三方を新たなワーウルフが、後方を殺人鬼、スレイヤーに囲まれてしまった。
 どうやら彼らは地面にまだ転がっている魔物の死体の匂いを嗅ぎつけてきたらしい。仲間の仇を討つべく、その眼は殺気に満ちていた。
「オレタチノナカマ、コロシタ」
「ユルサン…」
 濁声でワーウルフ達は言う。もとより話し合いのできる相手ではない。違うと言ったところで通じるはずがなかった。
「ちっ、オジャマムシどもが…!」
 もう、リョウカを追うことはできない。ならばすべき事は一つ。
「いいぜ、そんなに死にたきゃ、今すぐ仲間の所まで送ってやるぜ!」
 シンは短刀を抜き、構えた。
 ワーウルフ達が一斉にシンへと襲いかかる。シンはその爪を捌き、絶命の一撃を加える。
 一匹のワーウルフの背中に刃を突き立てると、別のワーウルフが更に攻撃を加える。しかし、シンはその一撃を捌くと自分の肩に相手の手をピタリとくっつけ、腰の捻りを加えた自らの肘で相手の肘を砕いた。
 骨折による激しい痛みによって無抵抗となったワーウルフの後ろ首を、シンは短刀で貫いた。
 三匹目のワーウルフの攻撃が加えられた。ただの狼とは違い、彼らは二足で歩いている。だが、知能は総じて低く、素早い動きができた所で、攻撃は単発である。見切るのは非常に楽な事だった。
 シンは攻撃をものともせず懐に潜り、ワーウルフの胴体を掴むと一気に宙へ跳び上がった。空中で自らの行ける最高点まで到達すると、身を翻し、ワーウルフの頭蓋を地に向け一気に落ちる。
「イヅナ落とし!」
 落下とともにワーウルフの頭骨が砕け、血と脳漿が周囲に飛び散った。
 獣三匹は撃破した。残るは殺人鬼、スレイヤー達である。
 シンは後方に宙返りして体勢を立て直し、その殺人鬼達を向いた。
 先の獣ほどの知能しかないワーウルフ達は労せず倒すことができた。しかし、この殺人鬼達は勝手が違った。
 手には太く、先端の鋭い針を持ち、構えからしてワーウルフとは違い、隙がない。
「ハッ!ちっとは骨のありそうなのがいるじゃねえか!」
 シンは魔物に挑発する。単純な思考しかしない魔物はこれで頭に血を上げ、しゃにむに攻撃してくるようになるため、見切りやすくなる。そうした事からこれは彼がよく使う戦法であった。
 しかし、やはりこの殺人鬼達は勝手が違う。挑発には全く乗らず、落ち着き払っている。ただ目の前の敵を消さんとする落ち着きである。
「来ねえのか、ならこっちから行くぜ!」
 シンは最初に攻撃を仕掛けた。
 ただ単に攻撃するだけでは魔物と大して変わらない。一撃で相手を亡き者にするほどの攻撃力があるならば、それでも十分である。
 しかし、当のシンにはそれだけの攻撃力はない。特にも手にした武器は短刀一本のみ、的確に急所を突かねばせいぜい掠り傷を与えるのが関の山である。
 そこで相手に隙を作る手段、仮当てという攻撃法を使うのである。
 敢えて攻撃を防がせる、もしくは倒れない程度の攻撃をする。こうした手段で相手の攻めの手を止め、隙をつくるのだ。
 シンはわざと大振りの一撃を繰り出し、スレイヤーに防がせようとした。しかし、その一撃は虚空を切り裂いた。
 見切られ、素早い動きで後ろに回られてしまっていたのだ。しかし、シンも一瞬の判断で体を捌き、後ろに切っ先を突き出した。
 ギン、という音と共に刃と針がぶつかり合った。
「なかなかやる…」
 スレイヤーは呟いた。
 彼の動きにはまるで無駄がない。習練を積んだ忍も顔負けの体捌きである。
「ふん、お前もな…」
 次の瞬間、シンは背後から殺気を感じ、自らの側面に飛び込んだ。もう一体のスレイヤーがシンの背中を突き刺そうとしていた。
「相当な手練れ、それも二人か。こりゃだいぶキツいな…」
 シンは短刀をスレイヤー達に向けた。
「だが、そうやすやすとやられるわけにもいかねえ。行くぜ!」
 シンはスレイヤー達に攻めかかった。急接近すると同時にエナジーを発動した。
『雷神の術!』
 スレイヤー達に落雷が襲いかかった。だが、スレイヤー達はそれぞれ別方向に動き、難なく落雷を避けた。しかし、これがシンの狙いだった。
 二体一緒にいられては攻めの手が出しにくい。そこで一体ずつ相手できるようスレイヤー達を引き離したのだ。
「くらえ!」
 シンは短刀を振るう、その一振りはスレイヤーに防がれる。
「足下がお留守だぜ!」
「ぬっ!?」
 シンはスレイヤーの膝裏を右手刀で打ち、体勢の崩れたスレイヤーを引き倒した。
 倒れた瞬間を逃さず、シンは切っ先をスレイヤーの喉元に突き刺そうとした。
「…ちっ!」
 またしても背後から殺気を感じ、シンは前方に飛び込んだ。もう一体のスレイヤーが針をシンへと向け、寸での所まで攻め寄せていた。
 切り離してもすぐに二体一緒になる。連携もなかなかのものだった。
 これで不利になったのはシンである。スレイヤーが二体いる以上どちらか一方に攻撃を絞っていては、彼らの思うつぼだった。