黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12
ガルシアにはこのような経験はない。故に多少なりとも羨ましく思っていた。
「な、何を言っているんだ!俺は…」
「図星ね、兄さんも不潔よ!」
弁解しようとすればするほどガルシアはシバとジャスミンから蔑みの目で見られるはめになってしまった。
それからしばらくしてからシンは少女と共に戻ってきた。少女の顔はまだ微かに赤い。
「いやぁ、お待たせ!この娘なかなかタフでさぁ、時間かかっちゃったよ」
シンはニコニコしながら言った。よっぽど楽しんできたらしい。
「…で、村長の居場所は分かったのか?」
ガルシアはぶっきらぼうに訊ねた。
「ああ、この娘が村長の家の前まで連れてってくれるってよ」
「なら、早く行くぞ!」
ガルシアはさっさと歩き出してしまった。
「何怒ってんだあいつ?」
シンは誰にともなく訊ねた。しかし、誰も答えるどころか彼に目を合わせようともしなかった。
少女の案内のもと、ガルシア達はシャーマン村村長の家にたどり着いた。
少女との別れ際にもシンは抱き合い、少女の方が別れを惜しんだ。
--っと、こっちの術は必要だな…--
シンは少女を抱きながら少女の背中に右手を擦らせ、指先を少女の首筋、延髄付近に付けた。そして、そこを中指で思いっきり押した。
少女はうっ、と小さく声を洩らしたかと思うと、すぐさま目を見開いた。
「私は…、一体何を…?」
少女は自分の状況を把握し、すぐさまシンから飛び退いた。すると、これまでの村人同様にガルシア達を警戒して走り去ってしまった。
「シン、お前一体何をしたんだ!?」
ガルシアは驚き訊ねた。
「ああ、一時的な記憶を飛ばすツボを突いたのさ。あのままだと面倒だろう?この類の諜報にはよく使うのさ」
シンは説明した。ただ強引に少女を口説き落とした訳ではなかったらしい。あくまで諜報として行った事だったようである。
皆が忘れてしまっているが、彼はやはり忍者なのである。忍の技は数多あるとガルシア達は教えられたのであった。しかし、
「最低、最低よシン!」
「全くよ、この女泣かせ!」
女性陣からはものすごく非難を浴びる羽目になった。
「落ち着けよ、だからオレはあくまで諜報のために…」
いくら弁解しようとしても非難の声は止む事はなかった。
そんな言い争いをしている中、突然家の扉が開き、一人の男が姿を現した。
縮れた長髪で、目の下にはフェイスペインティングを施している。露出の多い服装から覗く手足は色黒で筋骨隆々としており、いかにも屈強な雰囲気を醸し出していた。
「よそ者が村にやって来たとの知らせをうけたうえ、なにやら外が騒がしいので来てみたが…」
男は口を開いた。そしてガルシア達を順繰りに見る。
「どうやらお前達のようだな」
「あなたが村長か?」
ガルシアが訊ねた。
「いかにも、私がこのシャーマン村の村長。名はモアパだ」
モアパは答えた。
「お前達、モアパに何か用があるのか?」
「ああ、その通り、あなたに見せるものがある」
「ならば早くするのだ。私は、モアパは忙しいのだ。その用とやら、さっさとするのだ」
このモアパという男、いかにも武人という風格が漂っている。やたらと自らの名を誇張するかのように口にし、何とも堂々としている。
「その用と言うのは…」
ガルシアが指示を出した。するとシバが杖を取り出した。そう、元はイワンのもとにあり、サテュロスの策謀によって奪われ、そしてガルシアに預けられたあの杖である。
「この杖に見覚えはないかしら?」
「それは…!?」
モアパは驚きおののいた。
「シャーマンの杖!?」
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12 作家名:綾田宗