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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 12

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 そんな中、この状況に決着を付けんと立ち上がった男達がいた。
 シャーマン族のナバホ、ギアナ族のイエグロスだった。
 イエグロスは単身海を越え、ヘスペリア大陸の川、湖をも越え、険しい道のりを行き、シャーマン族の村へと向かった。
 この闘いにてけりを付けよう、イエグロスが言うとナバホは単身でシャーマン村までやってきた彼を称え、その闘いに受けて立った。
 シャーマン村には北に険しい山があり、ナバホとイエグロスの二人は話し合いそこを決着の地とした。後にそこはトライアルロードと呼ばれる事となる。
 闘いはまずはトライアルロードを越える競争をし、山頂にたどり着いた後、勝負する、という取り決めをした。
 そして闘いは始まった。
 トライアルロードの険しい道のりを先に制したのはギアナのイエグロスであった。そして激しい闘いの末勝利を治めたのはシャーマンのナバホであった。
 二人の闘いは両者全く譲ることなく、どちらが勝ってもおかしくない素晴らしい闘いだった。
 ナバホとイエグロスの二人は互いの実力を認め合い、ある種の友情を育んだ。その時、これからはギアナもシャーマンも争いを止める事を約束した。そしてシャーマン族のナバホはシャーマンの杖を、ギアナのイエグロスはグラビティの翡翠を、とそれぞれの村の宝を交換し、友好の証とした。
 それ以来二つの民族は争うことなく、これまで友好を保って来たのだった。
 それからギアナではシャーマンの杖は大切な宝として所有することとなった。しかしすぐに当時親交のあったアネモス族にて預けられた。
 時は流れ、シャーマンの杖は巡り巡って今はガルシアの手にあるのだった。
 そんな歴史あるシャーマン村に、ガルシア達はやって来た。ヘスペリアにてシャーマンの杖を持ち寄る事がジュピター灯台を灯す鍵となる、今は亡きサテュロスの言葉通り彼らはこの地を訪れたのだ。
 何はともあれ、村長に会うことが賢明であると思い、ガルシアは村人に声をかけようとした。
 しかし、村人達は彼らの姿を見るなりそそくさと去っていき、住居の近い者は家に入り、入り口を閉ざしてしまった。
「すまな…」
 ガルシアは再び声をかけるも村の男はそそくさとどこかへ行ってしまった。
「ちょっと、無視するなんてどういうつもりよ!」
 シバは去りゆく男を怒鳴りつけた。
「まあまあ、そんな大声を出しては余計に避けられるだけじゃぞ」
 スクレータはなだめすかした。そこへ、スクレータと同年代と思われる老婆が通りかかった。
 老婆ならばきっと話を聞いてくれよう、そう思い今度はスクレータが声掛けた。
「すまんが、お話をさせてはもらえんかのう?」
 老婆はスクレータの顔を覗き込んだ。にこやかに笑顔を見せるスクレータに対し、老婆は皺だらけの顔の表情を全く変えない。それから一緒にいるガルシア達も順繰りに見ていく。
「…」
 老婆はやはりこれまでの村人同様何も言うことなく立ち去ってしまった。
「やっぱり話を聞いてくれませんね」
 ピカードは無視され落ち込むスクレータを慰めながら、言った。そうとう自信のある笑顔だったらしい。
「うし、ここはこのオレに任せな!」
 この状況下で胸を張って立ち上がったのはシンだった。
「あなたが?」
 ジャスミンが言った。何やら不安げな様子である。
「アンタに任せるとろくな事がないのよね…」
 シバも同様である。
「何だよ二人して、このオレ様の力を疑ってんのか?」
 シバとジャスミンは頷いた。
 それもそのはずである。この中の誰が誰に話しかけても一切返答がなかったのだ、この男が行った所で同じ事だろう。
「シン、本当に大丈夫なのか?」
「お前、ガルシアまでオレを疑ってんのかよ!?忘れたのか、オレが何者なのか」
 一同は顔を見合わせ、代表してガルシアが頷いた。シンはその場で足を滑らせた。
「全くもう、なら今一度耳の穴かっぽじって聞きやがれ!オレは忍者だ!忍んで事を成す、いわば諜報のプロだぜ!」
 そう言えば、と一同は思い出した。彼は忍者である。身体能力が人一倍優れており、体術は皆が認めている。戦いにおいてもその身体能力は秀でており、彼に助けられる事は何度もあった。
 しかし、彼の体術は認めるところだが、その彼の言う所の忍んで事を成す、という事には疑問符の浮かぶ所だった。
「具体的に何か策でもあるのか?」
 ガルシアが訊ねた。
「ああ、ある忍術を使ってな…」
 そこへ、この村の若い娘が通りかかった。その娘はジャスミン位の年頃の少女であり、容姿端麗であった。
 シンはその少女を見るとニヤリとした。
「よし、オレのとっておきの忍術、あの娘に使うか…」
 ガルシア達は彼が何をするつもりなのか全く分からないままただ見続けていた。
「よう、そこのカワイコちゃん」
 シンは話しかける。しかし、やはりこれまでの村人同様無言で立ち去ろうとする。
「おいおい、冷たいなあ。何か返してくれてもいいじゃねえか」
 シンは少女の進路を塞いだ。
 少女は無視し続け、またシンを避けようとした。しかし、次の瞬間シンの姿が残像を残し、少女を再び回り込んだ。
「へへ…、どうだい?転影っていう技なんだぜ」
 シンは少女の顎先を掴んだ。そして目を見つめる。
 元来通りかかる者は男女問わず振り返るほどの美貌を持っているシンである。そんな中性的美男子に見つめられては少女も顔を紅潮させずにはいられない。
――こりゃあ、こっちの術を使う必要なさそうだな…――
 シンの忍術の中には人を自在に操るものがあった。例を挙げれば、以前ガルシアに使った眠らせる技、金縛りにして敵を麻痺させる技、等々とそして女をその気にさせてしまう技である。
 術を使う前に、この少女は男の経験が無いのか、シンの姿にすっかり魅了されてしまったようだった。
「なあ、カワイコちゃん。そんなに口を閉ざしてると唇が乾いちまうぜ…」
「…っ!?」
 シンはガルシア達に背を向けるようにして少女を抱き寄せた。ジャスミンやシバへのせめてもの配慮であった。
 しばらく少女に顔を寄せた後、そっとシンは顔を放した。
「…なんだ、案外柔らかいじゃねえか」
 ガルシア達はシンが何をしたのか察していた。
「さあ、村長さんの所に案内してくれるかい?」
「分かりました…、でもその前に…」
 初めて口を開いた少女は完全に顔を真っ赤にして、目を虚ろにしていた。
「体が熱いの…何とか…してください…」
 シンはしょうがないといった様子ながらも満更でもないように言った。
「仕方がねえなぁ、おい、ガルシア。お前らはどっかその辺で時間潰しといてくれ。オレは宿でこの娘と遊…もとい、介抱してくるからよ」
 完全にシンの腕に抱き付く少女を連れて、彼は宿屋へと向かっていった。村長の計らいでよそ者にも宿ぐらいは泊めてやれ、とのことで宿屋だけは開いていた。
「あれって、本当に忍術なんでしょうか…」
 ピカードは言った。
「んなわけないでしょ!完全にナンパよナンパ!しかもかなり強引な!」
 シバはああ最低、と言いながらシンを蔑んだ。
「不埒な…」
 ガルシアは頬を赤らめながら言い放った。
「とかなんとか言って兄さんも赤くなってるじゃない。羨ましいとか思ってんじゃないの?」