君と過ごす何気ない日常
落ち葉と土産
庭の木々が色付きはじめてやがて枯れ、ハラハラと降っては積もる。
秋だなぁ、と情緒に浸り眺めているのもいいけれど、流石にそろそろ重い腰上げて掃除に取り掛からねば土が見えなくなると、庭の隅にある物置小屋へと足を運ぶ。
トタンの壁に立て掛けてある箒を手に取り庭をぐるりと見渡す。一番ひどい所に集めてしまえば手間が省けると、木々の無い所より密集している所へと掃き出し始めた。
ザッ、ザッ、ザッ
庭が広い事が仇となった。普段は眺めのいい場所だがこうして掃除に精を出そうとなると真逆の思いに襲われる。どうしてこの庭はこんなに広いんだ。
箒が重い。腕が疲れた。げんなりしながらも落ち葉をかき集めているとハタ、と思い出すもう一人の存在。
そういえばアイツ、何処に行ったんだ。
肝心な時に役に立たない。
イライラしながら箒を動かしていると数分でかなりの量が集まった。となると落ちてる全ての落ち葉を集めようと思ったら一体どれほどの時間が掛かりるのやら。早々に匙を投げかけた僕だったが、するとそこへパタパタと掛けてくる足音が届き反射のように片眉を上げる。
探していた相手が向こうからやって来た。
疲労も相まって、いつもより沸点低く何をしていたのかと声を荒げようとしたとき、彼の腕の中に何かが収まっていることに気づき口を噤む。まさかまたどこぞから捨て猫やら捨て犬やら捨て兎やらを拾ってきたわけじゃあるまいな。思わず顔を顰め、彼が辿り着くのをじっと待っていると一歩分の間隔を開け足を止めた彼がその腕の中の物をハイ、と僕へ向け差し出した。
目の前過ぎて思わず身を引く。相手に見せたいならもう少し距離を計算しろと言いたいのをぐっと堪え彼の手の中の物を見てみるとなるほど、これは。
「焼こうよ!」
嬉々とした声で提案する彼。
受ける僕も納得に頬を緩め、しょうがないなぁ、とぼやくように返すと足元の落ち葉を見下ろし、ちょうどよかった、と笑った。
まとめた落ち葉に間接的に火を落とし、その中にアルミにくるんだ彼のお土産を埋める。焼けるのには時間がかかるから、それまでの間たっぷりと、彼がこの土産を手にした経緯を聞き出そうかな、とニコリと微笑み彼の名を呼べば何かを察したらしい彼が頬を引き攣らせ一歩、足を引いたから僕は逃がすかと言うように思いっきり、箒をぶんなげた。
それは見事、彼の足元に突き刺さり逃げかけていた彼は盛大にこける。伸びた彼の背中の上に腰を下ろし、観念しなよ、とからりと笑えば撫すくれた彼が、それでもやっぱり最後に笑い、あのね、と語りだす。
それは、秋の、穏やかな午後の、話。
2013/10
作品名:君と過ごす何気ない日常 作家名:とまる