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シノ@ようやく新入社員
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お悩み解決戦線

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 珍しく真剣な顔でふるふると首を振った後、完全に押し黙ってしまったティーダに、フリオニールも、バッツもジタンも、いつものノリで問い詰めるのを躊躇ってしまう。
「まあ、いいじゃねえか。この話題はひとまず置いとこうぜ。フリオニールの好みは、レディたちが話してるの聞いただけ、なんだよな?」
「そう、そうっす」
 見かねたジタンが場をうまくはからってくれたので、ティーダは胸を撫で下ろした。
「話を戻すぜ。問題は、フリオが振ってそのあと」
「ああ……」
 フリオニールは溜息混じりに頷いた。
 はじめは誰かにずっと見られているような、そんな違和感。それが少し続いた後、体育の授業後に机の上に畳んで置いていた服の配置が変わっていて、嫌な予感が胸を騒がせた。予感というのは大抵当たるもので、数日後には無言電話がしきりにかかってくるようになった。
「それって……。じゃあ、のばらはストーカー被害で悩んでたのか。ぜんっぜん気が付かなかった……」
「最初の頃は、周りに気付かれないようにしてたからな。さすがに三週間近く続くと精神的に参ってきて、そうも言ってられなくなったんだが」
「なんで」
「ん?」
「なんでおれに黙ってたんだよ――! 部活んとき以外、学校で殆ど一緒にいるじゃん。おれらダチだろ」
 そんなに頼りないのか。それとも信用できないのか、と。
 唇を引き結んで、ティーダが上目遣いで見上げてくる。
 どこまでも純粋な深い海色の双眸には、自身の驚いた顔が映っていた。そんな顔をしないでくれ、と口の端に乗せながら、フリオニールは緩やかに微笑む。胸中が、もどかしい気持ちでいっぱいになっていた。
 いつからだろうか。
 可憐で清楚で愛くるしい女の子よりも、はじめは弟みたいに思っていたこの男が。底なしに明るい太陽を視界に入るだけで、幸せな気分に浸れるようになったのは。
「友だち、か。今はまだ、それで構わないと思えるけど」
 そう思えなくなったとき、自分はどうするのだろう?
 ここぞという勝負事は平気なのに、どうして恋愛事に関しては、こんなに臆病になってしまうのか。
「……フリオニール?」
「ティーダ。男がストーカーの被害に遭ってるって公言するの、結構情けないもんなんだ」
「情けねえとか、そんなの気にすんなよ。へたれがフリオの代名詞だろ。女子が絡んだ場合のみの限定付きだけど」
「心配かけたくなかったんだよ。問題を大きくしたくなかったんだ。ティーダを頼りないとは、一度も思ったことはない」
 ごめんな。
 フリオニールはティーダの頭を撫でるが、不満げに膨らむ頬がなおる気配はない。
「それくらいで許してやれよ、ティーダ。問題を大きくしなかったフリオニールは良い判断だったと俺は思うぜ」
「そうそう。マネージャーといえど剣道部員に変わりはないからなあ。大会前にストーカー問題はひっじょ〜っにマズイっしょ」
 緊張感のない声だが、バッツの言はもっともだ。
 フリオニールが誰にも相談しなかった一番の理由も、それだった。
「そこで、学校一の問題解決屋のオレたちが登場したってわけ。マネージャーがストーカーしてる現場を偶然目撃しちゃった剣道部員が困ってんのよ」
「レディを悲しませるのは気が引けるけど、ストーカーは人道に反してるからな。男なら道を正してあげないとね」
「へぇぇぇええ。バッツとジタンが学校一の問題解決屋だったなんて、はじめて知ったっす」
「ティーダ……。それきっと、本人たちが勝手に言ってるだけだから」
 もしかしたら、知らないところで多くの問題を解決しているのかもしれないが。問題を起こした回数も半端ないはずだ。問題解決屋より、トラブルメーカーの方で名が通っているのだから。
「失敬だなー。ちゃあんと今回も、解決策考えてきたってのに」
「解決策?」
 にやり。
 バッツとジタンが顔を見合わせて、こっそり悪戯っ子の笑みで微笑んだのを、フリオニールは見逃さなかった。
「おれらがなんで、この話をするために社会科研究室を選んだと思う?」
「とある人にぃ、協力してもらうためデース!」
 今度こそ面白がっている態度を隠そうともせず、バッツとジタンが人差し指を楽しげに振った。
 そんなときだ。
 学校一のアンラッキーボーイ、薄幸の金髪美少年が社会科研究室の扉を開けたのは。
「――ここはセフィロス……先生の研究室のはずだが。なんで生徒が自由に使ってるんだ」
 現れたクラウドの両脇を押さえて、トラブルメーカー2人は怪しく笑った。