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お悩み解決戦線

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「なあ、フリオが本気でクラウド好きになっちまったら、どうする?」
 ティーダの顔を覗き込みながら、バッツが揶揄混じりに尋ねた。
「どうって……。ありえねーだろ? 男同士なのに」
「そいつはどうかなぁ〜」
 両手を頭の後ろで組んで、座席に深く身を沈めながら、バッツは少しだけ遠くを見るようにして言う。
「男同士でも。好きになるときゃ、なるのさ」
 珍しく真面目な調子で言われた意外な言葉に、ティーダは面食らった。
「まさか。フリオとクラウドに限って、そんな、」
「――シッ! 始まるぜ」
 ホールの照明が落ち、スクリーンを遮っていた幕が上がる。
 長閑な田園風景から都会に移り住む、主人公の女の子の期待に満ちた笑顔が映る。穏やかな曲が流れ始めた。
「…………」
 ――フリオが、クラウドを? 男同士なのに?
 ティーダの胸中は、長閑な映像に反して穏やかではなかった。
 スクリーンに映る映画よりも、フリオニールとクラウドの背を無意識に凝視してしまう。
 ――ありえねえ、って分かってるのに。なんでこんなに、ムカムカするんだろ。
 今まで何度も、フリオニールの恋を応援してきた。フリオニールを好きになった女の子も応援してきた。
 でも、もしも相手が男だったら?
 胸が途端に締め付けられる。ドロドロとしたものが渦巻いて、腹の底からせり上がってきた。
 吐き気と痛みで、苦しくて泣きそうになる。
 ――おれ、嫉妬してんの? だとしたらこれ、独占欲か何か?
 友だちを奪われたとでも、感じているのだろうか。
「……格好悪りぃ」
 ぼそりと呟いたティーダの言葉に、バッツとジタンは顔を見合わせて、首を傾げた。
 二人に不審がられて問い詰められても返答に困るので、ティーダは気を取り直そうと深く息を吐いた。雨に打たれた大型犬が身体の水をはね除けるように、ふるふると首を振る。
 ――今は、考えるのはよそう。
 映画は、主人公の女の子が親友の恋人を好きになってしまい、相手の男も主人公に惹かれていく――という始終ベタな展開で話が進んでいった。
 まるでストーカーの子が自身の境遇を投影しそうな内容だったが、最後は略奪愛に成功するも、幸せになったかに見えた二人が不慮の事故や病気で別々に死んでしまうという、とんでもない展開。後味の悪さだけが残る映画だった。
 ただ、一つだけ印象的なシーンがあった。
 映画の最後で、恋人を取られた主人公の親友が、最後に二人を想って墓の前で泣いている場面。
 ――あ、そっか。
 エンディングのスタッフロールが流れている間も、ずっと最後のシーンについて考えて。やがてティーダは、ハッと目を見開いた。
 グダグダと悩んでいたときの胸の痛みが嘘のように、身体も思考もクリアになる。
 気を紛らわせようと観た映画のワンシーンに、求めていた答えを提示された気がした。
 ――大切だったんだ。親友も、恋人も。
 それなら、自分の出す答えは一つだ。
「さて、映画も終わったし。最後の仕上げと行きますか」
 気合いの入るジタンの言葉に、ティーダは不敵に笑ってみせた。
「試合も大会も人の恋路も、通りすがりのエースの出番ってね!」