Wizard//Magica Infinity −7−
………
「…なんで今頃、昔の事を思い出してたのかしら…」
強烈な風、響き渡る地響き。
奴はもうすぐそこまできている。
決戦の時だ。
私は目を開け、前だけを進む。
−「3」−
−「本日午後七時、突発的異常気象に伴う避難指示が発令されました。付近にお住まいの皆様は速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。こちらは−−−」−
街のあちこちから避難指示警報が流される。
おそらくこの付近には住人はいないだろう。私だけだ。
巴マミも、美樹さやかも、佐倉杏子も既にいない。
戦えるのは、私一人だけだ。
大丈夫…もう誰にも頼っていないから。
−「2」−
「来る」
奴から放たれた使い魔が私の横を通りすがる。
準備は大丈夫、抜かりはない。
両腕にミサイルランチャーを担ぎ、奴の到着を待つ。
次第に向こう側がどす黒くなる。
来た…今日こそ、決戦の時だ。
−「1」−
『アハハハハハっ!!アアハハハハ!!』
(今度こそ、決着をつける!)
奴…ワルプルギスの夜の出現と同時に、私は時間を停止させ、奴に向かって大量のロケットランチャーを放った。
全てを放ち終え、そこで停止を解除させた。
『アハハっ…っ!!』
ものすごい轟音をたて、ワルプルギスは大量のミサイルの雨に直撃した。
しかしこれで終わるわけがない。
『アハハハハっ!アハハハハッ!!』
…何がおかしい。
私は手を休めることなくタンクローリーを魔法で操り奴めがけて突っ込んでいく。
真正面まで近づいたと同時にタンクローリーから飛び降り、奴の腹へと突っ込まさせた。
まだだ。
時間を再び停止させ、ワルプルギスの周りに大量の爆薬の雨を降らせる。
最後にグレネードを先程のタンクローリーに向かって投げ…ここで時間停止を解除!!
その瞬間、大地が大きく揺れた。
爆煙は空高くまで登り奴の声が聞こえなくなった。
「…やった?」
私は息を切らしながら奴の姿を確認する。
私は一瞬…そう一瞬だけ気を抜いてしまった。
これが……最大のミスだった。
「……ッ!!!?」
『キャハハハハッ!!』
「美樹さやかっいや違う!!」
爆煙の中から私目掛けて飛んでくる黒い物体、美樹さやかの姿に酷く似ていた。それだけではない…さらに佐倉杏子が…巴マミが…奴から生まれた魔法少女の影!!?
「ぐっ!!あぁぁっ!!」
こんなこと、今まで無かった!
巴マミの銃弾をガードしても左右から美樹さやか と佐倉杏子の無限の斬撃が私に降り注がれる。全てをガードしきれなかった私は数分で既に満身創痍へと近づいていた。
『キャハハハハっ!アッハハハハハ!!』
「うっ!あぁァァァァァァァっ!!!!」
最後に、追い打ちかのようにワルプルギスから伸ばされた黒い腕が私の身体に直撃した。
私はビルに叩きつけられる…。
次第に意識が遠のく……。
また、駄目なのか…
私は…負けるのか?
『アハハハハ!アハハハハハ!!』
「…うぐ…くっ…」
拳に力を入れようとするが、既に満身創痍のその体に戦える程の力は残されていない。
それを笑うかのように彼女の目の前でたか笑う魔女…ワルプルギスの夜は世界を終わらせようと破壊活動を繰り返す。
「はぁっ…はぁっ…」
−どうして…なんどやってもあいつに勝てない…−
「ひっ…うぐっ…」
−繰り返せば、それだけ『まどか』の因果が増える−
「うっ…ううっ…」
−私がやってきた事は結局……!−
私の…私の希望は?
「もういいんだよ…ほむらちゃん」
「っ!」
ふと、私の耳に聞きなれた少女の声が聞こえた。
それと同時に腕のソウルジェムの穢れが一気に引いていく…。
何故?
何故彼女がこの場にいるのだろうか…。
ここに来てはいけない…今すぐ安全なところへ…へ……あ…。
「まどか…まさか…」
目に映った彼女の笑顔。
それと同時に映った自分から全てを奪っていく一匹の生物。
「ごめんね、ほむらちゃん」
−わたし、魔法少女になる−
作品名:Wizard//Magica Infinity −7− 作家名:a-o-w