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シノ@ようやく新入社員
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オリーブと酒

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「いっそそのまま笑い死んじゃえよ!」
 いつまでも笑い転げるジタンに、もういい加減にしてくれないかな、と膨れっ面になる。
 涙目を擦りながら、ジタンがようやく身を起こした。
「ようやく取れたな、敬語」
「え? あ、ほんとだ……」
 思わず驚いた表情を浮かべると、コツン、と額を小突かれた。
 少し大人びた表情で、ジタンが笑う。 
「おまえ子どものくせに、察しがいいからな。頭がいい分、世渡りも上手い。そのせいか、相手が身構えてたら無意識のうちに“大人に好かれる、物分かりのいい子ども”を演じようとする。バッツやティーダやおれみたいに、初めっから壁作らない人間には、まだ本音言えるだけマシみたいだけどな」
「…………」
「皆が皆、おれみたいにはいかねえけど。キッカケさえあれば、なんとかなるもんだぜ。グダグダ悩んでる馬鹿な年上連中に、おまえの方から教えてやれよ。自分から心を拓かなきゃ、相手の心は拓けないってことをさ」
 そういって、くしゃりと髪を撫でる頭上に置かれたジタンの手を見て、オニオンは少し悔しく思う。
 自分にはない――相手の誇りを傷つけずに諭す、懐の深さ。
 諭されてしまった悔しさと、それ以上の憧憬が胸中を満たした。
「……悔しいから、絶対言わないけど。いつか追いついてみせる」
「なにか言ったか?」
「なんでもない」
 オニオンがそっぽを向いてごまかしたときだ。
 今の今まで焚き火を囲って酒盛りをしていた他の仲間たちの方から、突然悲鳴と爆発音が響き渡った。
「――超究武神覇斬ッ!!」
 持ち前の大剣を担いだクラウドが、ろれつの回っていない舌で高らかに宣言する。
「もう迷うのはやめだ! カオス軍団全員、問答無用でバスターソードの錆にしてくれるわぁぁああああ!!」
「ちょ、誰だクラウドに酒飲ませたのはぁぁあああ! 物語が終わるーっ!!」
「ティーダ。少し静かにしないか」
「ライト! アンタは……駄目そうっすね……」
 顔色は変わっていないが、緩みきった顔をしたライトの胸に、甘えん坊状態のスコールが切なげに抱きついている。
 異様な光景に、ティーダは一瞬硬直した。
「可愛いだろう、仔ライオンだ。ライオンはネコ科のほ乳類だったな。たまに気まぐれのように懐いてくる。まさしくネコじゃないか……」
「いやそれ人間だから! 酔ったスコールだから!」
「珍しい光景だなあ」
 のんきにセシルが呟いた横では、酔ったフリオニールがバッツの身体に抱きついていた。
「ぎゃぁぁああ!! 離せフリオ!! のばらやるから目ぇ覚ませー!!」
「キスさせろ……」
「冗談じゃねぇぇええ! てか積極的なフリオってマジありえないから! 誰かこのキス魔を止めろー!!」
 ――まさにカオスだねえ。
 にこにこと混沌とした光景を眺めながら、ちゃっかり一人だけ安全地帯に避難しているセシルに、ティナがそっと声をかけた。
「あの、どうにかしなくていいのかな。バッツくんとティーダくん頑張ってるし」
「二人とも普段から周りを振り回しっぱなしだから。灸を据えるいい機会じゃないかな」
「うーん、そうなのかなぁ。でも、このままだと仲間同士で戦闘になりそうな勢いだよ」
 ティナの不安は見事に的中した。
「あーもう、面倒くさいからまとめて沈めるっす! アルテマウェポンそうちゃーく!!」
「任せろティーダ! ホーリー! フレアーッ!」
「いいだろう、俺の現実を邪魔するやつらは先に始末してくれる!!」
「潔いクラウドなんてクラウドじゃないっつーの! ソニックバスター!!」
 ちゅどーん。
 ばっこーん。
 爆発音が止まない宴の席に、ジタンとオニオンは頭を抱えた。
 最早、馬鹿騒ぎのレベルではない。
「なにやってんだ、アイツら」
「みんな、馬鹿?」
 呆れて呟いたオニオンに、ジタンは愉しげに笑った。
「よし、おれらも参加するか」
「えぇええええ」
「先に行くぜ!」
 一目散に駆けだしたジタンを呆然と見送った後、オニオンは疲れきった顔で溜息を吐いた。 
 こっちは先刻の酒が抜けなくて頭が痛いってのに。
 こんなメンバーで、この先大丈夫なんだろうか。些か不安に感じずにはいられない。
 ――まったく、ボクがしっかりしなくちゃいけないじゃないか。
 不安とは裏腹に、気分は高揚していた。胸の奥からワクワクしてきて、なんだか落ち着かないのに、心が軽くなっていく。
 『馬鹿な年上連中に、おまえの方から教えてやれよ』
 ジタンの言葉を反芻しながら、地面を蹴っ飛ばして、勢いよく駆け出した。
「みんな、いい加減に大人しくしろー! サンダガーッ!!」
「ぎゃあぁぁあああああ」
 全力で放ったオニオンの魔法が、酔っぱらいも、わだかまりも、全部まとめて吹き飛ばしていく。
 後に残ったのは、死屍累々の惨状と。ろくでもない年上相手に説教する、幼い戦士の姿だった。