二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
シノ@ようやく新入社員
シノ@ようやく新入社員
novelistID. 4938
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

断崖の幸福

INDEX|12ページ/34ページ|

次のページ前のページ
 

 だが、絶対に気付いていない、分かるはずもない――と思っていたバッツに、人に対する恐怖と葛藤を言い当てられて、動揺すると同時に、自分の変化に気付いてしまったのだ。
 バッツは、スコールが作った壁をものともせずに飛び越える。まるで、人見知りをしない子どもが無邪気に近付いてくるように。
 バッツが構ってくることで、スコールのなかに何らかの変化が訪れたわけではなかった。
 スコールが心地良いと感じているのは、バッツが驚くほど簡単に、するりと離れていくからだ。風を捕らえることができないのと同じ。容易に壁を越えるくせ、相手に一切の執着を見せない。
 それが、スコールには心地良かった。バッツといるときは、心安らぐことの方が多かった。
 バランスの取れた関係だと思っていたのに。
「……なんなんだよ……」
 そう呟いたのは、スコールだけではなかった。
 リビングのソファに腰掛けて、バッツは天を仰ぐ。染み一つない天井を見上げながら、落ち着かない様子で嘆息する。腕で両目を覆い視界が暗転すると、少しずつ平静を取り戻していったようで、自然と空笑いが洩れる。
「ハハ……オレが本気になっちまったら、ダメだろ……」
 自嘲交じりに呟かれた言葉は、誰に届くでもなく。暗鬱とした部屋の空気に溶けていった。