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ふくすけーる
ふくすけーる
novelistID. 48904
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あの花その後 完結

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誰もいない待合室。長椅子に二人して座る。が、微妙な距離を開けていた。
「体調は…もういいのか?」
「うん…少し寝たから…」
「なんで、俺がいるってわかったんだよ」
「おかあさんのメモにじんたんが居るって、それと着替え取りにいきますって」

濡れた髪を掻き上げながら「そっか…」とだけ呟いた。
「なんで…なんで、秘密基地のこと言ってくれなかったの?」
涙交じりの声で呟くあなるに「もう…あそこは卒業したんだ… 今は誰も行ってない」
あなるを見ずにじんたんは言った。
「誰もあそこを必要としていないんだ…」
「たまにめんまのお母さんが献花に行ってるぐらいで…」
「超平和バスターズは解散だ」自嘲気味に嘯く。

「めんまは!? めんまの気持ちも置いてきたの!?」
「あの子はずっとあそこが続くと思って最後にみんなに会いに来たんだよ!」
「…」唇を噛みしめたまま何もいわないじんたんを強引に向かせる。

「おまえは…都会に出て何か変ると思ったか?」
「…」その言葉に俯く。
「俺は変わらなかった…あの夏から何も変えられなかった…馬鹿だろ…俺…」
「じんたん…」
「成長したつもりで何一つおれは変わらなかった…」
「でも…じんたんは助けてくれたじゃない!」
「あれは必死で…無我夢中だったから…」
「わたし…うれしかった…じんたんはまだリーダーだって思えて…」
「それにね…川で溺れたときめんまが来てもうすぐお別れだって言ってた…」
じんたんを伺うように続ける。
「めんま必ず生まれ変わるっていってた…。だからじんたんがこれ以上待ち続けてもめんまは…」

何かに気付いた顔であなるを見つめるじんたん。
「なによ…」
「そう…だよ…な… ちゃんとお別れしたのに… 俺はまだどっかでめんまがいると勝手に…」
頬を伝う涙も拭わずに「いつも俺はあいつに振り回されているのを楽しみしていんだ」
とあなるを見つめながら泣いていた。
「あいつが生まれ変わっても戻ってくるかもしれない…心のどこかで思っているから…」
「俺はあいつを理由にして成長するのを拒んでいたんだ…」
「だけど…それはやっぱり…不自然なんだ…」
あなるは黙ってそれを聞いてた。
「めんまはね…」あなるはじんたんの左手に手を重ね「今日…私にお別れを言いにきてたよ…」
「めんまはどこに行ってもめんまだよ… でも…」

「めんまはどこにでもいるし… どこにもいないんだよ…」
「じんたん…めんまを忘れてって言わないから… 私のほうを振り向いて…」
10年近く秘めた思いをじんたんに打ち明ける。
「あなる…だって…俺は…」
「高校の時に好きだっていったの覚えてる?」
「ああ…」
「あの時から気持ちは変わってないよ、都会にいっても…結局は…」
大きく息を吸い込んで「結局はじんたんが好きだったんだから!!」
「!!…」

「う…やっぱ恥ずかしいね… 改めて告白すると…」

「いや…いいんじゃないか結構…」
スッキリした顔でじんたんが答えた。
重ねていた手をどちらかともなく指を絡める。


今度会いにいくよ、夏が来たら… みんなで報告するよ…
好きな人が出来たって、めんまへの好きはお嫁さんにしたい好きだったけど、
その好きと同じだけの大きさであなるを好きになったんだ。





「安城さん! 部屋で安静にしてないとダメじゃないですか!!」
看護師からのお叱りを受けてしまった。





じんたんの足元で和仁が靴を履くのもまどろっこしく外に駆け出す。
「かず! 靴はちゃんと履いてからお外でなさい! 仁美〜? 準備できたぁ?」
結婚して安城から宿見に姓を変えたあなるが玄関先で忙しく動き回り2階の仁美に尋ねる。
「じんたん。これ変じゃないかなぁ?」
「いや…大丈夫だよ」
「じんたんの意見は当てにならないけど」
なら最初っから聞くな、とじんたんは内心思いながら
「俺2階見てくるわ」と、仁美の様子を見に行く。
子供部屋を覘くと鏡の前で仁美が一生懸命自分の髪を梳かすのに苦労していた。
「どうした? まだ終わらないのか?」仁美はこっちを見ずに
「私のっ…髪の毛は…ママ譲りだから…癖っ毛だから…もう」といってブラシと悪戦苦闘する。
「どれ、梳かしてあげるよ」そういって仁美を抱きかかえると鏡の正面に座って梳かし始める。
うっとりと仁美は気持ちよさそうに目を瞑りされるがままにしていた。
仁美の髪を梳かしているとき鏡台脇の写真立てが目に入り、今までのことを思い出した。



あなるが川に落ちた後、病院に収容され命に別条はなかったものの、1週間ほど入院をした。
入院している間にじんたんとあなるが昔のことを切っ掛けに付き合い始め、次の年に入籍。
市内にアパートを借り二人だけの生活を始めた。
翌年に双子の子供を授かった。男と女の子で男の子はじんたんそっくりのしかっめつら、
女の子はあなるそっくりの癖っ毛を受け継いだ。
これを見たつるこの感想は「親子そっくり」といって笑っていた。

さー君は弟だったのが、一昨年の春から見事に兄となった。
本間家の新しい家族は長女そっくりの綺麗な髪と目を持った女の子で、家族から愛情をたっぷりと
注いでもらっている。


そして…そして俺は…


「じんたん! 準備出来た?」
「おおう…びっくりした!」
「仁美も準備出来たわね」そういって頭をくしゃっとかき回した。
「せっかくパパに頭直してもらったのにー」
「パパもママも早く行こうよー」階下から和仁の呼ぶ声。
「ほら、いくよ」そういって仁美を抱え、あなるの手を引いて部屋を出ていく。
写真立てにはあの日みんなで撮った写真が飾られ、その横には一人だけ欠けているものの
まったく同じ笑顔が輝いていた。



めんま、会いに行くよ。



「じんたん! おっそーい!」
ぽっぽが山の中腹にある広場で待っていた。
その奥にはゆきあつ、つるこの姿も見えた。
3人はそれぞれ自分の子供と共に秘密基地を前で準備を進めていた。

冬の日に焼けてしまった秘密基地はぽっぽの提案で作り直すことにした。
場所は同じ超平和バスターズがあった場所にそのままにし、中身もそのままにした。
が、1点変えたのは柱に掘られた名前を「超平和バスターズ?」と掘りなおした。

ゆきあつとつるこの間には女の子を設けつぼみと名付けた。
つぼみは見事につるこの外見とゆきあつの性格を受け継いだ。
じんたんなどは幼稚園に上がったつぼみを見て「げっ! つるこ」と驚いた程だ。

ぽっぽは台湾に旅行に行ったかと思うと、現地の台湾人女性を連れてきた。
そのまま、ぽっぽの部屋に同棲を始め、籍を入れた。
こどもも男の子が生まれ、体格はぽっぽ譲りの大きな子だった。
命名もぽっぽは鉄道にちなんだ名前を付けたがっていたが、
奥さんに反対されて結局は「軌道」で落ち着いた。

今はこの4人で超平和バスターズをやっている。
リーダーは和仁、仁美、つぼみ、軌道で出歩いては色々なことをしでかしている。



「じんたんは今日は非番?」ぽっぽが奥さんと共にバーベキューの準備をしながら聞いてきた。
「まあな、せっかくだから有給も消化しないとな」
「あ、あと、さー君とめんまの妹さん来るから」