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ラブ・ミー・テンダー 2

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 恥じらう帝人を恭しくエスコートして、小一時間ほど中座していたリビングに再び戻った時には、既にテーブルの上はすっかり片付けられており、いつでもパーティーを切り上げられる状態になっていた。

「どうやら、遅くならない内に帰宅できるよう、気を利かせてくれたみてぇだな」
「僕、セルティさん達にお世話になったお礼と、おやすみなさいの挨拶を言ってきますね」

 家族同然の仲だった事を覚えてなくても、首から上が存在しないセルティを“母”と慕って、これまでと変わらぬ懐っこい態度で、帝人は手招きする彼女の元へと駆け寄っていく。
 向けられる純真な好意が、どんなに嬉しくて心地好いか――帝人と出逢っていなければ、仲間達と団欒する楽しさを知らないままだったろう“化け物”同士、静雄には彼女の気持ちが痛い程よく分かった。

『立て続けのハプニングに翻弄されて、心身ともに疲れる一日だったろうからな。今夜はこれでお開きにするから、早くうちに連れて帰って、ゆっくり帝人を休ませてやると良い』

 付き添いは任せたぞ…と、泣く泣く“愛し子”を静雄に託して、セルティはルームウェア姿の帝人の肩に、ふわりと外衣を羽織らせる。
 静雄が現在借りてるマンションまでは、ここから1Kmと離れてないので、普段はのんびり歩いて帰るのだが、今日は帝人がしばらく《眠り姫》状態だった事もあり、大事を取って渡草がワゴン車で送ってくれる事になっていた。

 帝人の制服を入れた紙袋と通学カバンを片手にぶら下げ、セルティに切切と別れを惜しまれつつ、皆で連れ立って岸谷宅を辞去する。

「そんじゃまあ、先にひとっ走り、みーたんと旦那を、うちまで送り届けに行ってくらぁ」

 エントランス正面に横付けして後部座席に乗るよう勧め、門田ら常連メンバーをその場に残して、渡草は緩やかに車を発進させる。

 仲間達の生あたたかい見送りを受けて出発したワゴン車は、物の5分と掛からず入居先へと到着し、睦まやかに寄り添う二人を降ろして、見る間に彼方へ走り去った。

  * * *
作品名:ラブ・ミー・テンダー 2 作家名:KON