yamatoへ… ユキバージョン 7
訓練
「水、飲むか?」
ユキは初めて操縦した本物の艦載機に眼を白黒させていた。顔面蒼白で今にも戻しそうな顔を必死でこらえて首を横に振った。
「そうか?無理するな。みんな最初は吐く。」
ユキの背中をさすりながら真田が水の入ったペットボトルのキャップを外し手渡した…が、ユキはそれを手に取る事なく足元から崩れてた。
「真田さん…」
シュミレーション担当者が慌てて真田に駆け寄る。
「大丈夫だ、貧血だろう。Gで血液が偏ったせいだと思う。少し奥で休ませる。」
ユキの軽い体を真田がヒョイと抱き上げた。
「先生呼ばないでいいか?」
シュミレーションの担当者はユキの顔を覗きこむ。
「大丈夫だ。」
真田が断言すると担当者は少し難しい顔をした。
「ちゃんと乗れていた。あとは身体が付いてくればいいんだ。Gは慣れるしか
ない…。数多く飛べばいいんだ。」
真田がそう言い切ると担当者は何も言えずじっとユキの顔を見た。
「それにしてもキレイな子ですね。」
真田は頭をなでるように髪をそっと撫でた。
「あぁ…でもキレイなのは顔だけじゃない。この子は心もきれいだよ。」
そう言いながら脈を取る。
「脈も落ち着いているし…起きるまでこのままでいいか?」
真田が担当者に聞くと担当者は静かに頷いた。
「いやぁ…この細い体でよくあのGに耐えましたね。確かにちゃんと乗れてま
した。その辺の訓練生よりしっかり操縦していましたよ。でも彼女は艦載機乗り
じゃないんですよね?」
担当者はユキの訓練計画書を見ていた。
「そうだ、あくまでも乗れる程度でいい。一番軽いライセンスでいいんだ。」
真田がユキから視線を外す事なく言う。
「すぐに修得できそうですね。いや、これだけ飲みこみのいい生徒は久しぶり
ですよ。…あ、少し前にいた訓練生もすごかったですが。最近そう言った子
が多くてね…訓練のし甲斐があります。」
担当者はニコニコ笑いながら言った。
「私もこの子を見ていて鼻が高いよ。どこへ行ってもそれだ。」
真田が笑う。
「まぁ数日頑張れば体が慣れてもっと楽に飛べるでしょう。」
担当者の太鼓判に近い言葉に真田は満足した。
ユキはシュミレーション機を軽く乗りこなしたのですぐに空いている時間を見計らって実際操縦する訓練に切り替えた。見た目は軽々乗りこなしているように見えるが本人は真っ暗闇に突然放り出されたような気分になった事…天と地がまるで分らなかった事などが重なり艦載機に“乗らされている”状態だった。それでもしばらく乗っていればしっかり操縦は出来ていた。
「…ぅ…ん…」
しばらくしてユキが眼を開けた。
「大丈夫か?」
真田が心配そうにのぞきこむ。
「気持ち…悪い…。」
ユキが起き上がろうとしたのを真田が制する。
「いい、無理するな。落ち着くまで横になっていなさい。」(真田)
「すみません。」(ユキ)
「最初からしっかり飛べるヤツなんていない。大丈夫だ…しっかり操縦出来てた。
Gは飛んでるうちに慣れる。」(真田)
「…そうですか?」(ユキ)
「あぁ、だから大丈夫だ。安心しなさい。」
ユキは不思議だった。真田にそう言われると本当にそんな気がしてくるから…。真田の声を聞きながらユキはもう一度眼を閉じた。
「すみません。」
結局ユキは1時間ほど仮眠をとってしまった。次の訓練が始まるので、とふたりは別の訓練室へ向かった。
「いや、ちゃんと予定に入っているから大丈夫だ。」
真田はちゃんと先を見据えていた。
「森くんには艦載機から小型艇程度の操縦のライセンスを習得させると言って
いたのを覚えているか?」
真田の問いにユキが頷く。
「今から小型艇のシュミレーションルームへ行く。まぁ艦載機程厳しくないから
安心しなさい。あんなGがかかる事ないから。そうだな、救命艇とかを操縦
するなら必要なライセンスだ。」
真田は救命艇と言ったが別の事を考えていた。
(この子達は新しい地球を目指し永遠の旅に出る…その捜索の時に使う小型の艦を
操縦できるように、と言うのもある…)
行くも地獄残るも地獄…真田は送り出す方だが何とも言えない気持ちでユキを見つめていた。
「水、飲むか?」
ユキは初めて操縦した本物の艦載機に眼を白黒させていた。顔面蒼白で今にも戻しそうな顔を必死でこらえて首を横に振った。
「そうか?無理するな。みんな最初は吐く。」
ユキの背中をさすりながら真田が水の入ったペットボトルのキャップを外し手渡した…が、ユキはそれを手に取る事なく足元から崩れてた。
「真田さん…」
シュミレーション担当者が慌てて真田に駆け寄る。
「大丈夫だ、貧血だろう。Gで血液が偏ったせいだと思う。少し奥で休ませる。」
ユキの軽い体を真田がヒョイと抱き上げた。
「先生呼ばないでいいか?」
シュミレーションの担当者はユキの顔を覗きこむ。
「大丈夫だ。」
真田が断言すると担当者は少し難しい顔をした。
「ちゃんと乗れていた。あとは身体が付いてくればいいんだ。Gは慣れるしか
ない…。数多く飛べばいいんだ。」
真田がそう言い切ると担当者は何も言えずじっとユキの顔を見た。
「それにしてもキレイな子ですね。」
真田は頭をなでるように髪をそっと撫でた。
「あぁ…でもキレイなのは顔だけじゃない。この子は心もきれいだよ。」
そう言いながら脈を取る。
「脈も落ち着いているし…起きるまでこのままでいいか?」
真田が担当者に聞くと担当者は静かに頷いた。
「いやぁ…この細い体でよくあのGに耐えましたね。確かにちゃんと乗れてま
した。その辺の訓練生よりしっかり操縦していましたよ。でも彼女は艦載機乗り
じゃないんですよね?」
担当者はユキの訓練計画書を見ていた。
「そうだ、あくまでも乗れる程度でいい。一番軽いライセンスでいいんだ。」
真田がユキから視線を外す事なく言う。
「すぐに修得できそうですね。いや、これだけ飲みこみのいい生徒は久しぶり
ですよ。…あ、少し前にいた訓練生もすごかったですが。最近そう言った子
が多くてね…訓練のし甲斐があります。」
担当者はニコニコ笑いながら言った。
「私もこの子を見ていて鼻が高いよ。どこへ行ってもそれだ。」
真田が笑う。
「まぁ数日頑張れば体が慣れてもっと楽に飛べるでしょう。」
担当者の太鼓判に近い言葉に真田は満足した。
ユキはシュミレーション機を軽く乗りこなしたのですぐに空いている時間を見計らって実際操縦する訓練に切り替えた。見た目は軽々乗りこなしているように見えるが本人は真っ暗闇に突然放り出されたような気分になった事…天と地がまるで分らなかった事などが重なり艦載機に“乗らされている”状態だった。それでもしばらく乗っていればしっかり操縦は出来ていた。
「…ぅ…ん…」
しばらくしてユキが眼を開けた。
「大丈夫か?」
真田が心配そうにのぞきこむ。
「気持ち…悪い…。」
ユキが起き上がろうとしたのを真田が制する。
「いい、無理するな。落ち着くまで横になっていなさい。」(真田)
「すみません。」(ユキ)
「最初からしっかり飛べるヤツなんていない。大丈夫だ…しっかり操縦出来てた。
Gは飛んでるうちに慣れる。」(真田)
「…そうですか?」(ユキ)
「あぁ、だから大丈夫だ。安心しなさい。」
ユキは不思議だった。真田にそう言われると本当にそんな気がしてくるから…。真田の声を聞きながらユキはもう一度眼を閉じた。
「すみません。」
結局ユキは1時間ほど仮眠をとってしまった。次の訓練が始まるので、とふたりは別の訓練室へ向かった。
「いや、ちゃんと予定に入っているから大丈夫だ。」
真田はちゃんと先を見据えていた。
「森くんには艦載機から小型艇程度の操縦のライセンスを習得させると言って
いたのを覚えているか?」
真田の問いにユキが頷く。
「今から小型艇のシュミレーションルームへ行く。まぁ艦載機程厳しくないから
安心しなさい。あんなGがかかる事ないから。そうだな、救命艇とかを操縦
するなら必要なライセンスだ。」
真田は救命艇と言ったが別の事を考えていた。
(この子達は新しい地球を目指し永遠の旅に出る…その捜索の時に使う小型の艦を
操縦できるように、と言うのもある…)
行くも地獄残るも地獄…真田は送り出す方だが何とも言えない気持ちでユキを見つめていた。
作品名:yamatoへ… ユキバージョン 7 作家名:kei