yamato… 古代とユキ 3
発表
「ママ、昨日の今日で悪いんだけど…記事になるかどうかもわからないけど
古代君と私の事、発表することになったの。」
ユキが昼食の休憩の間に母親と連絡をとっていた
<どうして?>
「軍が…私たちマスコミにいいように書かれてしまうからいっその事公表して
しまえばいい、って事になって…私自身長官秘書だからスキャンダル的な
事書かれてしまうと長官のイメージダウンにもつながって国民の信用も
落ちちゃうって事で…電話で申し訳ないけどパパにも伝えて。古代君も
今別の対応に追われてて軍に監禁状態なの。古代くんは直接パパと
ママに伝えたい、って言ってたんだけど…」
ユキの母は小さなため息をつくと
<古代さんの事だからきっときちんとしたいって言いそうね。わかったわ、パパ
には私から伝えるから…まぁそんなに大きな記事にならないわよ。一般市民
なんだから>
「私もそう願っているわ。じゃぁ悪いけどよろしくお願いします。」
ユキは携帯を切った時後ろから背中を叩かれた
「はい?」
降りかえると大崎が立っていた
「森さん、もうお食事すみましたか?」(大崎)
「(携帯しまいながら)はい、済みましたが?」
ユキがテーブルに置いてあったコーヒーをとり秘書室に戻ろうとしたが
「私もコーヒー飲もうと思ってたんです(コーヒーを見せながら)ご一緒しませんか
あ、ご迷惑でなければ、ですが。」
そう先に言われると“ダメです”と言いにくい。ユキは苦笑いでじゃぁ、といいながら
そのテーブルに座った。
「いつかご一緒にお食事でも、と思いつつなかなかお声が掛けられなくて…
いやぁ今日はラッキーでした!ご存じだと思いますが大崎と申します。
ヤマトでのご活躍拝見しました。遠路お疲れ様でした…と言ってももう随分
前、なんですよね。高根の花でなかなかお声をかけられず…今になってし
まいましたよ。森さんの周りはいつも誰かしらヤマトクルーがいて…まるで
森さんを守ってるかのようで…圧巻ですよ。特に真田さんが…あの方は
森さんの特別な方なんですか?」
エリートコースならではの直球勝負だった
「はい…真田さんは私の保護者のような方です。それに大崎さんは私を随分
買い被っております。私はただの看護師あがりのつたない秘書です。」
「森さん、そんなに謙遜しないでくださいよ。ただの看護師が長官直々にスカ
ウトしませんって。それより今晩、空いていませんか?お食事でも?」
大崎という男は少し強引らしくコーヒーに添えられていたユキの手を握った
「!」
ユキは手を振り払おうとしたがやはり男性の力に叶わず振り払うことができない
「はい、と言うまではなしませんよ」
大崎の目が男の目になった。ユキは以前その目をみたことがある
(岡本さんと同じ目…)
ユキは立ち上がろうとしたが手をしっかり握られていて立ち上がることもできない
「こう見ても軍の訓練はみんなと同じ分こなしてきてる。力づくで奪うこと
だってできる。」
低い声だった。自分の体の方に引き寄せるしぐさが岡本との事を否応なしに
思い出させる。間にテーブルを挟んでいるのでこれ以上の事はないだろうが
ユキに恐怖を感じさせるに充分だった
(イヤ…古代くん、助けて…誰か…)
ユキの顔が恐怖に変わる
「はい、だろう?」
脅迫されているかのような低い声にユキは負けずに
「いいえ、それにはお答えできません。」
そういってキッパリ断った
「森さん!」
「ユキさ~ん!」
大崎の声が大きくなったとき食堂の厨房からユキを呼ぶひときわ大きな声が
響いた。声の主は幕の内だった。
作品名:yamato… 古代とユキ 3 作家名:kei