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yamato… 古代とユキ 5

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過去Ⅰ


すっかり夕方になっていた。ユキは食事もとらずひたすらカルテを食い入るよう
に見ていた

  「…そんな…」

少年のカルテの最後は17歳だった。4年間の記録…中央病院月分院での
最後の一言は火星に半年行く、もう心配ないだろう。で締めくくられていた

進はヤマトが飛ぶ直前まで島と火星で特別任務を言い渡されていたと
ヤマトの中で聞いた



モリタは守の言葉ひとつひとつ、進の行動、言動、全てを残していた。
そして兄弟だけでなく島たちの名前も出てきた

ユキは進がどんな思いで三浦に戻ったのか、三浦に戻る歩いている間に
どれだけの死体を乗り越えてたどり着いたのか想像すると体が震え知ら
ない間に涙がとめどなく流れた

あの絶対的な責任感はその頃から変わらないのだ…

  (私は古代くんの支えになれるのかしら…)

ユキは進の体験したことが余りにも大きすぎて、悲しすぎて自分だけでは
救うことなんてできないような気がしてきた

  (…真田さんは何か知ってるかしら?守さんと親友って言ってたわ)

ユキは流れる涙を一気に拭くと真田の携帯を呼び出した



  〈ユキ、どうした?暇すぎてどうしようもなくなったか?〉

よそ見をしながら電話を受けた真田はユキの表情を見て

  〈どうした?古代とケンカでもしたのか?…あれ?さっき会ったけど
   何も言ってなかったぞ?〉
  「真田さんは守さんと親友でしたよね?」
  〈あぁ…そうだが?〉

真田はなにか引っかかるものを感じた

  〈古代の事で聞きたいことがあるんだろう?〉

ユキは無言でうなずいた

  〈俺が知ってることで話しても大丈夫な事なら何でも話すが…〉
  「…今日、会えませんか?」

思い詰めたユキの顔を見てると放っておけない真田は

  〈…15分待ってろ。そこに行くから。〉

真田はそう言うと携帯と通信機を持ってラボを出た





  〈ユキ?〉

真田と話した後すぐ進から連絡が入った

  「今日、ちょっと遅くなりそうなんだ。こっち出るとき連絡するからさ、
   食事済ませてくれな。待たせると悪いと思って…じゃぁ。」

ユキは画面に向かいにっこり笑うと通信機の画面から進は消えた

  「ちょっと元気なかったな…大丈夫かな?後でメール入れておくか」

進はちょっと気になったが10日後に迫った出航の事務処理に追われて
いたのですぐ仕事に戻ってしまった


しばらくするとノックしながら真田が入ってきた

  「真田さん…」

ユキの真っ赤な眼を見て真田は驚いたがあえて普通に

  「何が…知りたい?」

そう言ってソファーに座りながらユキに聞いた。ユキは一瞬ためらったが
意を決して真田に聞いた

  「…古代くんのカルテをみました…13歳の時の被爆した最初からの
   カルテを…まさか古代くんが被爆治療の実験体だったなんて知らな
   くて…」

真田は黙って聞いていた

  「こないだ、隣の部屋からうなされるような声が聞こえて…古代くんが
   必死にお父さんとお母さんを探していました。汗だくで…気になって
   島くんに聞いたんです。島くんは詳しく教えてくれませんでしたが
   当時のニュースを教えてくれて…で、自分で調べました
   当時の古代くんに何があって今何に苦しんでいるのか…それを
   知りたいんです。私じゃ力になれないかもしれない…でも、少し
   でも私と一緒にいるときはその苦しみを軽くしてあげたいって…そう
   思うんです。目の前で苦しんでいる古代くんに何もしてあげられない
   なんて辛くって…

   真田さんが守さんから聞いたこと…少しでもいい、話してほしいんです」

真田は大きなため息をついた。進の事は守からずっと聞かされていた。
本人に会ったことがなかったのにヤマトに乗った時初対面の感じがしなかった
のは守からずっと聞いてたからだろう、と思っている。

  「古代は…まだ苦しんでいるのか…守もずっと苦しんでいたが古代はきっと
   守以上にくるしんだだろうな…今まで誰にも何もいえずずっと苦しかった
   はずだ。13歳にして背負ってしまった心の傷と地獄絵図は封印したと
   言っても脳裏に焼き付いているはずだ。」

  「…真田さん…」

  「いいか?ユキ。少年が爆心地に向かってずっと歩いて行ったら
   どんな風景を見てしまうと思うかい?」

真田が諭すように言った

  「…」

ユキは想像するだけで恐ろしかった

  「…そうだ、最初は建物の間や乗りものの間から這い出てくる人がいるだ
   ろう。そのうち崩れた建物から手や足が出てたり助けを求める声が聞こえ
   てくる…」




 










作品名:yamato… 古代とユキ 5 作家名:kei