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yamato… 古代とユキ 5

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  「やがて声ではなくうめき声だけになり動く人はほとんど居ず黒い塊が
   目につくようになる…」

ユキはボロボロ涙を流していた

  「想像だが古代はその姿を目に焼きつけながら、両親を叫びながら
   探したはずだ。普通の精神状態じゃ無理だ。きっと途中から心に
   目に蓋をするように何も感じないふりをして三浦まで歩いたんだと
   思う。たまたま軍が爆心地の視察に向かっていたので古代は
   助かった。守が言っていたが古代の被ばく量は致死量を超えて
   いる、ってな。ある意味古代が助かったのは奇跡だった、って。」

真田はユキを見て

  「…ユキ、今のユキと似ていないか?」
  「…私と?」

ユキはすぐに岡本の顔と大崎の眼が浮かんだ

  「あの眼…」

真田は意を決したように深呼吸して話し始めた

  「俺も姉の事故が常にあった。忘れようにも忘れられないことが誰にも
   ある。でも心を許せる友人やユキがそばにいることでいつか癒される
   ことだと俺は思っている。」

真田は一呼吸置いて

  「俺の姉の事を昇華させてくれたのはユキ、なんだよ。」

真田の告白にユキは驚いた

  「研究にも、防衛軍のやり方にも行き詰まりを感じていて尚、常に姉が
   脳裏をよぎる…。すべてがマイナス思考に働き始めていた頃に今の
   長官からユキを預かったんだ。長官は俺の過去を知っていた。俺が
   話したわけではないが知っていて亡くなった姉と年頃の近いユキを
   世話させる事で忘れさせようとしたんだろうな。
   最初はなぜ…って思ったよ。小さなしぐさも姉を思い出してしまうから
   でもユキは賢かった。俺が何を伝えようとしているのかその後何が
   必要なのかを全て理解していた。ユキと一緒にいると片時も離れな
   かったあの事故がいつの間にか遠のいていたんだ。
   
   ユキには感謝している。ユキのお陰で姉を乗り越えられた。

   古代のそばにはいつも父と母がいた。でも突然両方奪われて独り
   になった。兄がいたって一緒に住むわけにいかないし体が治れば
   施設にいかなくてはいけない。」

  「だから…」

  「そう、志願したんだ。そこで島たちに出会った…」

  「ユキ、いつか古代が話してくれると思う。それまで待っててほしい
   古代の両親の事を昇華させられるのはユキだけだと思う。でも
   それは難しい事じゃない。いつも通り普通にしてればいいんだ。
   ユキはいつまでそれが続くのか不安かもしれないが古代のために
   耐えてほしい。ユキが辛くなったら俺に話せ。古代に話せない事
   だってなんだって聞いてやる。俺はユキの保護者だし古代にして
   みたら兄貴だからな。二人揃って面倒みるから安心しろ。」

真田はそう言ってユキの頭をくしゃくしゃっとした

  「はい…待ちます…」

ユキは真っ赤な目で真田を見てそう言った




作品名:yamato… 古代とユキ 5 作家名:kei