yamato… 古代とユキ 6
エミリーはユキと他愛もない話をしていたが突然
「ユキさん、実はね、今日弟を連れてきてるの。」
そう耳打ちされてユキはキョロキョロあたりを見渡した
「え?だってここは誰も立ち入れないはずですが…」
ユキがそう言うと
「私の職権乱用で…SPとしてあなたの後ろにいるわ。でもキチン
とした軍人で宇宙戦士の訓練もちゃんと受けてるわ。今回だけ
SPとして連れてきたの。どうしてもあなたに逢いたいって…
ねぇここが終わったら紹介していいかしら?」(エミリー)
「エミリーさん、でも私…」
ユキが困った顔をしたが
「婚約しただけでしょう?結婚したわけじゃないじゃない。ただ
会うだけでいいのよ。」(エミリー)
「確かにそうですが…でも私にはお会いする理由がありません」
少し強い拒否にもエミリーはめげず
「主人の言ってた通りの方ね…主人もケリーが気になってあなたに
何度か声をかけようとしたみたいだけど藤堂さんが間をもって
くれないって、嘆いていたのよ。だから私直接あなたと話せる
機会を待ってたの。ホテル、私達と一緒でしょ?フロアーの
ロビーで少しお話させていただけないかしら?」(エミリー)
「エミリーさん、お気持ちは嬉しいのですが私はすでに婚約中の
身です。会った後何もない、のに場を設定していただく事時点
で大変失礼だと思いますのでやはり辞退させて頂きます」
ケリーと相原は並んで立っていて二人の会話を聞いていた
(ユキさん、頑張れ~)
相原は立場的にSPと同じなので口をそろえて“ダメなんです”とは
言えない。それはケリーも同じ事。
「ユキさん、ダメよ、あなたは今親善大使のようなもの。いつもの
秘書とは違うのよ?ちゃんと終わるまで接待していただかないと」
エミリーは少し強い口調になった。そこへそばにいたミラがやってきて
「エミリーさん、ダメよ?そんなこと言ってたら私だってねぇ…
このけがの責任取らせて、って言いたいのをこらえてるのよ?」
ミラはそう言ってユキの右腕を見たが
「かすり傷ですから…」
ユキはそう言って右腕を後ろに隠した
「残念ねぇ…もう少し早く逢えてたらよかったわ。」
エミリーは諦めたのか大きなため息をついた。その後ろで相原はホッと
した表情をしていた。その相原の横に島が来て小さな声で言った
(そろそろパーティーもお開きだろう?気をつけろ。)
(了解。)
ふとユキが島を見たときちょっとうなずくしぐさがあったので
「さて、名残惜しいですがそろそろお開きの様子なので元の席に
もどりましょう。」
ユキがそう言うと誰もが残念ねぇ、と言いながら元の席に戻った。
全員が席に着くのを確認すると藤堂が立ち上がった
「本日はお疲れのところ最後までお付き合い頂いてありがとう
ございました。間もなく地上へ生活圏が移る事を想定しての
今回の会議はとても実りあるものだったと思います。
来週も地球を出る艦があり今後の復興への礎となる地上では
すでに枯渇してしまった資源を積んでくる予定となっていま
す。今後われらの地球の人々が幸せに暮らせるよう世界の
脅威から地球を守りたい、と思います。まだ発足して間もな
い地球防衛軍ですが皆様の力を借りて一致団結していきたい
と思っていますのでどうぞご協力お願いいたします」
藤堂の流暢な英語のあいさつで全員が立ち上がると一斉に拍手が起きてその場はお開きとなった
なかなか会場を後にしないパーティーの参加者は別れを惜しむように
フロアーで話をしているものがいた。
(早く終わらせてくれよ…この会場を閉めてしまえば俺の仕事は
すべて終わる。後は明日の会議に出れば終わりなんだ。)
大崎はフロアーの扉付近でユキを眺めていた
(キレイだなぁ…森さんが彼女だったらどれだけ幸せだろう)
フロアーの真ん中でユキはエミリーと話していた
「ユキさん、残念だわ…ねぇお願い、息子と一枚だけ写真、ダメ
かしら?」
エミリーの後ろには息子のケリーが控えている
「すみません、仕事に私情は挟めないので…ケリーさんも困り
ますよね?」
ユキがケリーに声をかけると
「いえ、私はあなたに逢いに来ました。できれば是非、と思って
います。あなたが私の事などなんとも思っていないとわかって
いますが私はあなたを愛しています。」
作品名:yamato… 古代とユキ 6 作家名:kei