yamato… 古代とユキ 6
大崎は一瞬“え?”という顔をしたが自分が指示を出さなくても動いてもらった
方がラクだと思ったのでうん、うん、とうなずいた
「ユキ、お疲れ。」
進の視線が少し柔らかくなる。しかし進も何かを感じてるようで厳しい表情を
崩したのは一瞬だった
「大崎君、改めて自己紹介は必要…ではないかな?」
誰でも知ってるヤマトの乗組員が揃い機嫌の悪い大崎をみて藤堂が言ったが
「はい、全員存じ上げていますので自己紹介は結構です。」
そう言ってつっぱねた
食事会は終始仕事の話で大崎はつまらなさそうに食事をしていた。目の前で
ユキは真田の話を熱心に聞いていて大事なことをしっかりメモっている。
「大崎、ヤマトの乗組員のチームワークの良さ、分かるか?」
藤堂が声をかけてきた
「死線を潜り抜けてきた彼らだ。相通じるものは私にもわからない。でも
何かを感じてるようだ。」
藤堂は全員をゆっくり見渡しながらそう言った
「キミは何も感じないかね?」
そう言われ大崎は困ってしまった
「…特別なにも…」
そう言いながらパンをちぎった
「おそらく…何かが起きる…軍内部の人間だからと言って全ての人間を
信用するな、というのは酷かもしれないが疑う事も必要だ。」
藤堂はコーヒーを飲みきるとさっとユキが立ち上がりカップを藤堂から受け取る
とお代りをサーバーにもらいに行ってそっと置いた。
「全てが未然に防げればいいんだが…テロの手口もどんどん手荒になって
きている。キミも少し覚悟しておいた方がいい。」
ユキにもしっかり聞こえた。
「長官…」
「私もまだまだ老いぼれちゃいないさ。」
そう言うと藤堂はユキの置いたカップを持ち上げてお代りのコーヒーを飲んだ
「お疲れ」
二人は揃って南部のホテルへ戻ってきた。ユキが見つけた穴場を通って
帰ってきた。
「しっかし大崎ってやつはずっと不機嫌だったな」
鈍感な進もそればかりはしっかり感じてたらしく部屋に戻るとそう呟いた
「えぇ…まっすぐな方なんでしょうけどね。でも私は随分ラクだったわ。
相原君がずっと一緒にいてくれたし…。明日からずっと大崎さんも
詰めてくるけど相原君も一緒だから心強いわ」(ユキ)
「俺も相原がいてくれるからちょっとは安心できるかな。」(進)
「あら、心配してくれてるの?ありがとう」
ユキはにっこり笑うと
「大丈夫よ、みんながいてくれるからもっと安心できる。それより来週の
出発の準備は大丈夫なの?」
ユキは進の出航が近いことを思い出した
「あぁ、そっちの準備は大丈夫。大統領会談が終って落ち着いたら出発
だから段取り的にはちょうどいいでしょ。そのころにはきっと俺らの事も
世間から忘れられてるはずさ。」
と、そこへ南部から電話が入った
<古代、今ユキさんと一緒か?>
「あぁ、さっき部屋に戻ってきたばっかりだけど?」
<今フロントから俺の携帯に連絡があってどうもそこに大崎が来てるらしい。>
ユキにも会話は聞こえていた
<うちのフロントは教育がしっかりされてるから大丈夫だけど…どうもうちの
ホテルをしらみつぶしに歩きまわってるらしい。アイツ、今日見てても
ちょっとおかしいぜ?注意した方がいいぞ。>
南部らしからぬ忠告の仕方だった
<なぁ、ちょっと行ってもいいか?何気にここにそろい踏み、なんだけど>
南部がぐるっと携帯を回すといつものメンツがぞろぞろ映った
「あぁ、こいよ。もとを正せば南部が借りてる部屋だし。」
進がそういうと
<了解。じゃぁついでい夕食も頼んじゃうな。30分くらいしたら向うから…>
そう言って南部の電話は切れた
「みんな来るって?」
ユキの顔は笑ってなかった
「あそこじゃ話せないことよね?」
進は難しい顔をしてうなずいた
作品名:yamato… 古代とユキ 6 作家名:kei